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今回は『ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました』についてレビューと要約の記事となります。
著者
吉田直樹(よしだ・なおき)
パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH) 代表取締役社長CEO
1964年大阪市生れ。88年国際基督教大学卒業。95年フランスINSEADでMBA取得後、マッキンゼー入社。2007年PPIHに入社。海外事業本部長兼米国子会社社長。12年取締役、13年専務取締役、15年専務取締役兼CCO(最高コンプライアンス責任者)。18年に代表取締役専務兼CAO(最高管理責任者)となり、19年から代表取締役社長CEO。
森谷健史(もりたに・たけし)
PPIH 上席執行役員 PB事業統括責任者 マーケティング戦略 管掌
2005年4月、株式会社ドン・キホーテ入社。入社後は、第1事業部(家電部門)店舗担当者新宿店に配属。その後、エリア担当を経て生活家電部門責任者を担当。生活家電部門において商品開発を経験したことをきっかけに、PB推進部の家電責任者として多くのPB商品の開発を手掛ける。17年からはデジタル戦略責任者としてアプリ開発に携わる。19年にPB事業戦略本部本部長に就任、「情熱価格」のリニューアルを行う。誰よりも楽しむことをモットーに、仕事が労働にならないよう率先して楽しむことを心掛けている。
宮永充晃(みやなが・みつあき)
博報堂クリエイティブディレクター / クリエイティブ局 部長 / YOKI リーダー
2012年博報堂入社。博報堂DYメディアパートナーズに出向し通販クライアントを担当。その後、マーケティング部門に異動し、コミュニケーション戦略・商品開発・事業戦略・中期経営計画策定を担当。現在はクリエイティブ部門に属し、複数領域を統合的にプラニング。
1. 本書の概要
『ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました』は、売上高2兆円超え、35期連続増収という驚異的な成長を続けるドン・キホーテの成功の秘密を解き明かした一冊です。著者たちは、ドン・キホーテのCEOをはじめ、ヒット商品を生み出した関係者たちが、そのユニークな企業文化、商品開発、マーケティング戦略を赤裸々に語ります。
この本では、ドン・キホーテの成功の鍵となる以下の点が特に深く掘り下げられています。
- 権限委譲: 上司から部下へ、そして現場の社員一人ひとりにまで、大きな裁量を与え、各自が主体的に仕事に取り組むことを奨励する。
- 顧客最優先主義: お客様の声を常に聞き、その声に真摯に向き合い、商品開発やサービスに反映させる。
- 「情熱価格」ブランドの再生: PB(プライベートブランド)「情熱価格」のリニューアルを通して、ドンキホーテのブランドイメージを向上させ、顧客の心を捉えた。
- 人材育成: 従業員一人ひとりの個性を尊重し、それぞれの強みを活かせるような環境を整備する。
2. 本書の要約
本書は、ドンキホーテがいかにして「好き勝手」に働くことを許容しながら、巨大企業へと成長したのかを、具体的なエピソードを交えながら解説しています。
例えば、「情熱価格」のリニューアルプロジェクトでは、社内の若手社員たちが、従来の価格訴求型のイメージから脱却し、「驚き」と「正直」をキーワードに、顧客の心を掴む商品開発を行いました。また、社内の様々な部署が連携し、マーケティング戦略を立案することで、見事なブランド再生を実現しました。
著者たちは、ドンキホーテの成功は、単なる価格競争力だけでなく、従業員一人ひとりの「情熱」と「創造性」が大きな役割を果たしていることを強調しています。
3. ポイント
- なぜ「格好いい店」がドンキではダメか
「格好いい店」というのは、えてして主語が自分(自社)になりがちです。つまり、会長が言った「格好いい店はつくるなよ」とは、主語が自分になっていることへの戒めでもあるのですね。つまり、ぼくたちを主語にして格好いいというのは、お客さまにとってみれば、「関係ない」ということです。 - ドンキと「情熱価格」の距離が離れている
大切なのは、お客さまが求める期待値に適合しているか否かだと思っています。
会社とPBの距離が離れていると、お客さまが「このPB商品が欲しい」と名指しで来店するようなことはありません。そうなると、生活圏内にあるほかのGMSやスーパー、ドラックストアと価格勝負にならざるを得ません。 - 「HOW3ヵ条」で顧客への刺さり具合をチェック
商品のセールスポイントをどう顧客に伝えるかについてまとめたのが「HOW3ヵ条」。- 顧客のメリットを表現できているか
- アイキャッチ力があるか
- ストーリーに納得感があるか
- 商品化の大きな関門「What3ヵ条」
「What3ヵ条」は商品自体の売りを明確化するためのもの。- しっかりターゲットを見定められているか
- 顧客のメリットに還元されているか
- 『世の中の当たり前』ではなく独自性があるか
- 市場を再定義し、細分化し、トップを獲る!
偏愛めしの「みんなの75点より誰かの120点」もこれと同じ考えです。高カロリー市場が存在するといっても最大公約数ではないから、最大公約数を狙った商品よりも市場規模は劣りますが、一定の規模はあります。また、プレーヤー数も少ない。健康市場でトッププレーヤーになるのは容易ではありませんが、より絞った高カロリー市場なら、ナンバーワンになれるということです。 - 経済理論に忠実だけでは、お客さまのココロは離れてしまう
消費者からすれば、ダイナミックプライシングって、アタマでは理解できても、ココロが納得しないとでもいうんでしょうか。ハッキリ言えば、オモシロくない・・・・・っていうのか。
僕自身も、経済理論に忠実なプライシングは、瞬間瞬間では利益は最大化するけれど、長期的に見た場合、こういうスキのないプライシング戦略に対して、お客さまは疲れちゃうんじゃないかと考えています。お客さまからすると、おそらく自分たちのほうを見てくれていない、企業側の利益しか見ていない、って感じられるのではと思います。 - ドンキではエラい人の言葉でもみんな「仮説」
安田会長は、しょっちゅう「俺の言っていることも含めて全部仮説だから」と言います。うまくいくという確信があっても仮説だと。お客さまがどう思うかは、やってみなければわかりません。売れると思った商品が本当に売れるかどうかなんて、売ってみなければわかりません。ドンキでは、どんなにエラいポジションの人の言葉であっても、それはみんな仮設なんです。 - 狭くて深いから機能する
実は任せ方に”コツ”があるのです。それは「狭く深く任せる」ということ。ドンキは丸投げしますが、すべてを任せるのではありません。「あなたは、こことお願いします」という「ここ」を極めて明確にします。 - 集合知の実践をドンキでは「競争」と呼ぶ
自分で考え、会社や上司と明確なゴールを決めて、最小限のルールに合意して、時間内にゴールを達成するため大幅な自由裁量権を得て、全力をつくすというゲーム。
プロセスコントロールしないのも、権限移譲をした以上、お互いに定めた時間の中では、好き勝手にさせなければならないからです。上司たるもの、部下の行動にハラハラドキドキしてはいけない。腹をくくって、部下を信じ、部下に好き勝手やらせ、その結果を、泰然とした気持ちで待たなければならない。
4. 感想とレビュー
この本を読んで、私はドンキホーテという企業に対するイメージが大きく変わりました。単なる「何でも売っている店」ではなく、従業員一人ひとりが主体的に働き、顧客のニーズを最優先に考えている、非常にユニークな企業文化を持っていることを知りました。
特に印象に残ったのは、権限委譲の徹底と、顧客の声を大切にする姿勢です。多くの企業が、トップダウン型の組織体制を取っている中で、ドンキホーテは、現場の社員に大きな裁量を与え、彼らが自由にアイデアを出せるような環境を創り出しています。これは、従業員のモチベーションを向上させ、イノベーションを促進させる上で非常に重要な要素と言えるでしょう。
また、「情熱価格」のリニューアルプロジェクトの成功は、ドンキホーテのマーケティング戦略の巧みさを物語っています。顧客の心を掴むためには、単に安い商品を提供するだけでなく、商品にストーリーを持たせ、共感を得られるような工夫が必要であることを、このプロジェクトは教えてくれます。
5. まとめ
『ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました』は、企業経営、マーケティング、そして人材育成に関わるすべての人にとって、非常に示唆に富む一冊です。ドンキホーテの成功事例から、私たちは、組織の活性化、顧客満足度の向上、そして持続的な成長を実現するためのヒントを得ることができます。
特に、以下の点に注目して読むことをおすすめします。
- 権限委譲の重要性: 上司は部下を信頼し、彼らが自ら考え、行動できるような環境を創出することが重要です。
- 顧客第一主義: 顧客の声に耳を傾け、その声に真摯に向き合うことが、顧客満足度向上につながります。
- 人材育成の重要性: 従業員一人ひとりの個性を尊重し、それぞれの強みを活かせるような環境を整備することが重要です。
- イノベーションを促す組織文化: 従業員が自由にアイデアを出せるような、風通しの良い組織文化を創出することが重要です。
この本は、単なるビジネス書にとどまらず、私たちが働く上でのヒントを与えてくれる一冊です。ぜひ、多くの方に読んでいただきたいと思っています。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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