「時間を無駄にせず、確実に良書と出会いたい」
日経BOOKプラスが、2025年7月18日に公開した「読んでおきたい日経の本を並べてみました」企画。
前・日経文庫編集長で、コミュニケーションの書籍を数多く担当してきた細谷和彦さんが、コミュニケーションを単なるテクニックととらえず、「自分と相手への洞察力を高める」ことをテーマに、ロングセラーからベストセラーまで11冊の良書を厳選していた記事を紹介します。
詳しくはこちら→コミュニケーションの良書 仕事や人生の人間関係が楽になる11冊
1. 『アンガーマネジメント』
戸田久実 著
本書は、仕事や人間関係で生じる「怒り」の感情と上手に付き合うための実践的なガイドブックです。アンガーマネジメントとは、怒りを完全に消し去ることではなく、その感情を建設的にコントロールし、より良いコミュニケーションや意思決定に繋げるための心理的スキルを指します。
著者の戸田久実氏は、長年の研修実績に基づき、怒りのメカニズムを分かりやすく解説し、怒りを感じたときに冷静になるための「6秒ルール」や、怒りを客観的に分析する「怒りの記録」といった具体的な手法を多数紹介しています。怒りの感情が人間関係の対立や、自身の健康に悪影響を及ぼす現代社会において、本書は感情の波に飲まれずに、自分と向き合うための羅針盤となります。
怒りをコントロールすることで、ストレスを軽減し、周囲との関係性を改善したいと願うすべての人にとって、自己成長のための必読書となるでしょう。
2. 『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』
今井むつみ 著
「何度話しても相手に伝わらない」というビジネスパーソンの悩みに、認知科学の視点から根本的な解決策を提示する一冊です。言語心理学の第一人者である著者は、コミュニケーションの本質が「相手の脳内に、自分と同じメンタルモデル(心のイメージ)を構築すること」にあると説きます。
本書は、なぜ私たちは「伝えたつもり」になってしまうのか、相手の理解の「ズレ」はどこから生じるのかを、脳の働きや言葉のメカニズムから詳細に解説。さらに、相手のメンタルモデルを推測し、効果的な言葉を選ぶための具体的なフレームワークや、相手の理解度を確認しながら対話を進めるための実践的な方法を多数紹介しています。
この本を読むことで、単なる話し方のテクニックではなく、コミュニケーションの根底にある思考プロセスを深く理解できるようになるでしょう。プレゼンや会議、部下への指示など、あらゆるビジネスシーンで「伝わる」力を高めたいすべての人にとって、知的刺激に満ちた必読書です。
3. 『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』
ケイト・マーフィー 著、篠田真貴子 監訳、松丸さとみ 訳
情報過多の現代社会において、多くの人が見過ごしている「聞く力(リスニング)」の重要性を改めて問い直す一冊です。ジャーナリストである著者のケイト・マーフィーは、様々な分野の専門家や著名人へのインタビューを通して、「聞く」ことがいかに知性や創造性、そして深い人間関係を築く上で不可欠であるかを明らかにします。
本書は、「聞く」という行為が、単なる受動的なものではなく、能動的で意図的なスキルであると定義。相手の話の裏側にある意図を汲み取ったり、沈黙に耳を傾けたりする「アクティブ・リスニング」の具体的な方法論や、デジタル社会で失われつつある対話の価値を再認識させてくれます。
他者の話を深く聞くことで、自分の視野を広げ、新たな視点を発見し、より豊かな人生を送るためのヒントが満載です。真のコミュニケーション力を身につけ、人間関係を深めたいと願うすべての人にとって、「聞くこと」の奥深さを教えてくれる必読書です。
4. 『アクティブ・リスニング』
戸田久実 著
コミュニケーションの基盤である「聞く力」を体系的に解説し、実践的なスキルとして身につけるためのガイドブックです。著者の戸田久実氏は、単に相手の話を黙って聞くのではなく、相手の言葉の背景にある感情や意図を汲み取り、対話を活性化させる「アクティブ・リスニング」の重要性を説きます。
本書では、相手に安心して話してもらうための態度や相槌の打ち方、効果的な質問の仕方、そして相手の感情を理解するための共感の表現方法など、具体的なテクニックを豊富に紹介しています。さらに、傾聴のスキルが、部下や後輩の育成、顧客との信頼関係構築、そしてチーム内の協調性を高める上でいかに重要であるかを、様々なケーススタディを交えながら分かりやすく解説。
人間関係をより円滑にし、対話を通じて生産性を高めたいと願うすべての人にとって、聞くことの本質と実践法を学ぶための必携書です。
5. 『エレガントな毒の吐き方』
中野信子 著
脳科学者である中野信子氏が、人間関係でストレスを感じたときに、自尊心を保ちながら、相手に不快感を与えずに「毒を吐く」ための技術を解説するユニークな一冊です。
本書は、心に溜まったネガティブな感情を「毒」と捉え、それを上手く表現することで、精神的な健康を保ち、人間関係のバランスをコントロールする方法を提案します。著者は、脳科学や心理学の知見に基づき、なぜ人は「毒」を抱え込んでしまうのか、そしてどのような言葉や態度で「毒」を放出すれば、自己防衛と円滑なコミュニケーションを両立できるのかを丁寧に解説。ただの悪口や不満の吐露ではなく、知性やユーモアを交え、「エレガントに」自分を守るための戦略が満載です。
人間関係のストレスに悩む人、自分の気持ちを上手く伝えられずにモヤモヤを抱えている人にとって、自己肯定感を高め、コミュニケーションの主導権を握るための新たな視点を与えてくれるでしょう。
6. 『「言葉にできる」は武器になる。』
梅田悟司 著
コピーライターである著者が、「言葉にできる力」が、いかに人生やビジネスを豊かにする「武器」となるかを説く一冊です。本書は、単なる文章術や話し方のテクニックではなく、自分自身の考えや感情を深く掘り下げ、それを的確な言葉に変換するまでの「内省と熟考のプロセス」に焦点を当てています。
著者は、「言葉にできない」状態から抜け出し、自分の想いを明確な言葉にすることで、自己理解が深まり、他者とのコミュニケーションが円滑になり、そして新しいアイデアが生まれるというサイクルを提示。具体的なワークや事例を交えながら、日々の生活の中で「言葉にできる力」を鍛えるための方法論を解説しています。
プレゼン、企画書作成、会議での発言など、あらゆる場面で自分の想いを伝え、周囲を動かしたいと願うすべての人にとって、言葉の本質的な力を引き出すための必携書となるでしょう。
7. 『不器用だった僕がたどり着いた「伝え方」の本質』
豊島晋作 著
テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」のメインキャスターを務める著者が、不器用で口下手だった自身の経験からたどり着いた、「伝わる話し方」の本質を語る一冊です。
本書は、派手なプレゼン術や流暢な話術ではなく、相手の心に響く言葉を紡ぐための、誠実で丁寧なコミュニケーションの重要性を説きます。著者は、取材相手や視聴者との信頼関係を築くために、いかに相手に寄り添い、真摯な姿勢で対話を重ねてきたかを詳細に解説。
特に、「伝える」ことの根底にある「相手への敬意」が、説得力や共感を生み出す上で不可欠であると強調しています。話し方や伝え方に自信がない人、不器用ながらも誠実に人と向き合いたいと願う人にとって、本書は、テクニックに頼らない、心と心を通わせるコミュニケーションの力を教えてくれるでしょう。
8. 『チーム・ビルディング 新版』
堀公俊 著
組織のパフォーマンスを最大化するために不可欠な「チーム・ビルディング」の理論と実践を体系的に解説した一冊です。著者の堀公俊氏は、単に仲の良いグループを作ることではなく、「共通の目標に向かって、互いの強みを活かし、協働できる組織」を築くことがチーム・ビルディングの真の目的であると説きます。
本書は、チームを形成するプロセス(形成期、混乱期、統一期、機能期)に合わせたリーダーの役割や、チーム内のコミュニケーションを活性化させるための具体的な手法、目標設定の仕方、そして対立を乗り越えるためのファシリテーション技術などを網羅的に解説。テレワークや多様な働き方が普及する現代において、どのようにチームの結束力を高め、イノベーションを生み出すかという問いに、実践的な答えを提供します。
リーダーやマネジャー、そしてチームで働くすべての人にとって、より良い組織を築くための必携書となるでしょう。
9. 『ファシリテーション入門 第2版』
堀公俊 著
会議やミーティングを円滑に進め、参加者全員の意見を引き出し、合意形成へと導くためのスキル「ファシリテーション」の基本を、分かりやすく解説した入門書です。
著者の堀公俊氏は、ファシリテーションを「対話のプロセスをデザインし、実行する力」と定義し、その具体的な手法を豊富な図解と事例で紹介しています。本書は、「ファシリテーター」という役割の重要性、会議の事前準備から当日の進行、そして議論をまとめ、行動へと繋げるまでのプロセスを丁寧に解説。意見が出ない沈黙をどう破るか、対立する意見をどうまとめるか、といった具体的な課題に対する解決策も提示されています。
組織の創造性や生産性を高める上で不可欠なスキルであるファシリテーションを、誰でもゼロから学べる構成となっています。会議の主催者や参加者、そしてより良い対話の場を創りたいと願うすべての人にとって、必携のガイドブックです。
10. 『話し方の心理学』
ジェシー・S・ニーレンバーグ 著、小川敏子 訳
伝説的な交渉術の専門家であるジェシー・S・ニーレンバーグ氏が、相手の心理を読み解き、自分の意図を効果的に伝えるためのコミュニケーション術を解説した古典的名著です。
本書は、言葉の選び方や声のトーン、身振り手振りといった非言語コミュニケーションが、相手にどのような心理的影響を与えるかを、心理学の知見に基づいて詳細に分析。交渉、プレゼン、面接など、様々な状況で相手の心を掴み、自分の主張を説得力を持って伝えるための具体的なテクニックを多数紹介しています。相手の感情や考えを察知するための観察眼の養い方や、相手の信頼を得るためのコミュニケーションの原則についても深く考察。
単なる「話し方」の表面的なテクニックに留まらず、人間心理を巧みに操り、有利な関係を築くための本質的な思考法を学ぶことができます。コミュニケーションを武器に、ビジネスや人間関係を成功させたいと願うすべての人にとって、示唆に富んだ必読書となるでしょう。
11. 『アサーティブ・コミュニケーション』
戸田久実 著
自分の意見や感情を、相手を尊重しながら、誠実に伝えるためのコミュニケーション手法である「アサーティブネス」を、分かりやすく解説した一冊です。著者の戸田久実氏は、「言いたいことを我慢してしまう」「相手に攻撃的に伝えてしまう」といったコミュニケーションの課題に対し、アサーティブな対話の重要性を説きます。
本書は、自分と相手の双方の権利を尊重する「アサーティブな自己表現」の具体的な方法論を、豊富な事例や練習問題を通じて紹介。相手の気持ちを汲み取りながらも、自分の要求や意見を明確に伝えるための話し方や、相手からの不当な要求を上手に断るためのテクニックなどを学ぶことができます。
職場、家庭、友人関係など、あらゆる人間関係で健全な自己主張を行い、ストレスを軽減したいと願うすべての人にとって、自己肯定感を高め、円滑な人間関係を築くための必携書です。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
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