『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』といった、時代を超えた大ヒット作の生みの親。
それが、『少年ジャンプ』伝説の編集長である鳥嶋和彦(とりしま かずひこ)さんです。
本書『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』は、彼の冷徹なまでの仕事の哲学を凝縮した一冊です。
「なぜ、あの名作は生まれたのか?」その裏側には、常識を覆す“嫌われる”仕事術がありました。
鳥嶋和彦さんのブレない信念と、ヒットを生み出すための本質的な考え方を、徹底的にご紹介します。
1. 著者の紹介
著者の鳥嶋和彦(とりしま かずひこ)さんは、元週刊少年ジャンプ編集長です。
集英社で『週刊少年ジャンプ』編集者としてキャリアをスタートさせ、後にジャンプ 編集長、白泉社の社長などを歴任されました。
漫画ファンには、鳥山明先生の『Dr.スランプ』に登場する悪役「Dr.マシリト」のモデルとしても有名ですね。
鳥嶋さんが担当または関わった作品のラインナップは、まさに「伝説」の一言です。
- 『Dr.スランプ』
- 『ドラゴンボール』
- 『電影少女』
- 『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』
さらに、編集長時代には『ONE PIECE』『NARUTO-ナルト-』の連載開始にも深く関わっています。
漫画だけでなく、『ドラゴンクエスト』や『クロノ・トリガー』といったゲームの創出にも関わり、関わるものをすべてヒットに変えてきた超ヒットメーカーなのです。
2. 本書の要約
本書は、鳥嶋さんがメガヒットを連発させるために実践した、容赦ない仕事ぶりとその真意に迫る一冊です。
伝説的なエピソードの裏側を、氏自身の言葉で赤裸々に語っています。
「ボツ」に込められた哲学
本書のタイトルにある「ボツ」は、氏の仕事術を象徴しています。
デビュー前の鳥山明先生に対して、なんと500枚もの原稿にダメ出し(ボツ)を出し続けたという驚きの事実が明かされます。
これは単なる意地悪ではなく、「面白い」ものを見極め、それを磨き上げるための編集者としての責任でした。
鳥嶋さんは「時間の無駄」を何よりも嫌い、少しでも芽が出ないと判断すれば、早い段階で見切りをつけるべきだと断言します。
自分じゃなきゃできない仕事をやらないと意味がない
『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』
いい編集はイエスかノーかがキッチリ言える
『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』
伝説のエピソードの真相
本書には、メディアの裏側で繰り広げられた修羅場の真相が詰まっています。
- 役員に土下座を要求したというエピソードの真意。
- アニメ『ドラゴンボール』の出来に激怒し、プロデューサーを解任した舞台裏。
これらは、すべて「作品を面白くする」「読者を楽しませる」というただ一つの目的のためだったことがわかります。
また、『ドラゴンボール』の人気が急降下した際に、軌道修正の秘策として「天下一武闘会」を生み出した経緯も詳細に語られています。
目の前の仕事だけ一生懸命にならない
『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』
話題になっている作品はちゃんと見る
トラブルが起きたら、なぜ起こったのかを失敗した段階で分析して、再発防止策を取るのが仕事
『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』
雑誌ではなく読者と作者が大事
『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』
やり方が悪いから大変なんであって、変えればいい
『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』
相手の会社の人事にちゃんと興味を持って反応する
『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』
会社があって自分たちがいるんじゃない
『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』
ジャンプ黄金期の創造
鳥嶋さんがジャンプ 編集長だった時期には、前編集長が進めていた企画をすべて中止するという大胆な行動に出ました。
作家に謝罪行脚までして生まれた空白の期間から、『NARUTO-ナルト-』『BLEACH』『遊☆戯☆王』など、後のジャンプ黄金期を支える作品群が誕生したのです。
「最初から売れたものはない」という視点に立ち、「見極め」と「分析と対策」によって作品をヒットへと導く、その過程が劇的に描かれています。
高く飛ぶためには。最初に深くかがまないといけない
『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』
下手な鉄砲
『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』
数打ちゃ、あたる!
3. ココだけは押さえたい一文
本書の中でも特に、失敗と成功に対する捉え方を示すこの言葉が、彼の哲学の深さを感じさせます。
成功には失敗の芽がある。そして、失敗には成功の芽がある
『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』
成功したからといって、そこで慢心すればすぐに失敗の種が芽を出します。
逆に、たとえ今が失敗の渦中にあっても、そこには必ず次への成功のヒントが隠されているということです。
この言葉は、ヒットの浮き沈みが激しいエンタメ業界で生き残ってきた鳥嶋和彦さんの、本質を見抜く力を示しています。
4. 感想とレビュー
この本は、単なる漫画の裏話集ではありません。
『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』というタイトルが示す通り、プロフェッショナルとしての覚悟を学ぶ「劇薬の仕事本」だと感じました。
成功の裏にある冷徹さ
鳥嶋さんの仕事術は、優等生的でもなければ、誰にでも真似できるものでもありません。
「芽が出ない漫画家には、残りの人生も加味して早い段階で見切りをつけるべき」という発言からは、ヒットメーカーとしての冷徹さが伝わってきます。
しかし、この冷徹さの裏側には、「少年向けの刹那的な娯楽」というジャンプ 編集長としての明確な「軸」と、作品を本気で面白くするという覚悟があります。
組織との戦い
本書を読んで、鳥嶋和彦さんが常に組織の圧力や既得権益と戦っていたことがわかります。
役員への土下座要求や、プロデューサーの解任といった伝説的なエピソードは、すべて「作品の質」と「読者の面白さ」を守るための行動でした。
社内では「焼き畑農業」と揶揄されながらも、「外(読者)」の空気を吸い続けていたからこそ、常識を打ち破るヒットを生み出せたのだと感じました。
ビジネスパーソンへの劇薬
マンガのファンはもちろん、特にビジネスパーソンにこそ読んでほしい一冊です。
「企画の見極め方」「失敗からどう立ち直るか」「組織の中でどう成果を出すか」という、仕事で生き残るための「目線」を学ぶことができます。
彼の仕事術は非常にバクチ的にも見えますが、それは「数撃ちゃ当たる」を徹底的に効率化した、勝つための戦略なのだと理解できました。
5. まとめ
『ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術』は、ヒットの裏側にあるプロの仕事哲学を知るための必読書です。
- ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術:鳥山明先生への500回のダメ出しなど、伝説的なエピソードの真意を公開しています。
- ジャンプ 編集長:鳥嶋和彦さんが貫いた「時間の無駄をなくす」仕事術は、ビジネスにも通用する劇薬です。
漫画ファンとしての好奇心を満たしつつ、仕事人としての意識を変えてくれる、二重に価値のある一冊です。
あなたの仕事の常識を覆したいなら、ぜひ手に取ってみてくださいね。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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