片野秀樹氏の著書『疲労学』は、「疲れを取る方法」ではなく「疲れをためない方法」に焦点を当てた画期的な健康指南書です。
「忙しくもないのに、なぜか毎日ぐったりしている」という現代人の悩みの根本原因を、科学的な知見から徹底的に解き明かします。
この本は、単なる休息法ではなく、「行動」「思考」「食事」の3つのアプローチで疲労を抑制する仕組みを提案しています。
この記事では、『疲労学』の深い要約と、疲れやすい習慣から抜け出すための具体的な方法をレビューします。
1. 著者の紹介
著者である片野 秀樹(かたの ひでき)氏は、長年にわたり「疲労」をテーマに研究を続けてきた専門家です。
彼は「休養学」の博士号を持ち、疲労回復や休養に関する分野の権威として知られています。
前著である『休養学』では効果的に疲れをとる方法を紹介されました。
しかし、本書『疲労学』では、さらに一歩踏み込み、疲労が溜まるのをいかに未然に防ぐかという「予防医学」的な視点を提唱しています。
20年以上にわたる研究に基づいた科学的なデータと、日常生活ですぐに実践できる具体的な方法論が、本書の大きな魅力となっています。
2. 本書の要約
『疲労学』の核となるのは、疲れは「ストレッサー」と呼ばれる様々な刺激が積み重なることで生まれる、という考え方です。
この本では、ストレッサーへの対処法を「行動」「思考」「食事」の3つの側面から総合的に解説し、疲れの連鎖から抜け出す方法を提案しています。
■負のサイクルから抜け出す「バターの法則」
私たちは、朝から疲れていたり、帰宅後も仕事が頭から離れないといった「疲れやすい習慣」に陥りがちです。
本書では、この負のサイクルから抜け出すための具体的な行動原則として、DRICS(ドリックス)理論が紹介されています。
この理論は、疲労の原因となるストレッサーを以下の5つの領域に分類し、自分の弱点を明確にする仕組みです。
- Diet(食事)
- Rest(休養)
- Imagination(思考・イメージ)
- Communication(人間関係)
- Schedule(時間管理)
疲れの原因を「仕事」とひとくくりにするのではなく、どのDRICSの要素が崩れているのかを突き止めることで、適切な対策が打てるようになります。
休むこと=寝ることではありません
『疲労学』
■疲れを抑制する「行動法」
行動面では、日常生活の「ちょっとした工夫」でストレスを抑える方法が多数提案されています。
例えば、満員電車で立つときに手すりをつかむことは、体の負担を減らすだけでなく、無意識の緊張を和らげます。
また、通勤ラッシュの改札口で周りの流れに合わせて猛スピードで歩かず、一旦端に寄ってから自分のペースで歩き直すという行動も、精神的な負荷を大きく減らすことに繋がります。
「会話泥棒」になるというユニークなアドバイスもあります。
これは、相手の話を聞くことに疲れたら、ときには積極的に自分の話題を出し、ストレスを打ち消すという対処法です。
自律神経の乱れはイコール疲労のシグナルです。
『疲労学』
「エアコンをつけない」は抑疲労的に0点
深呼吸するだけで気持ちがゆったりする
『疲労学』
■疲れを少なくする「思考法」
本書の要約で特に重要なのが、思考そのものが疲労の原因となるという指摘です。
「タイパ(タイムパフォーマンス)」を意識しすぎることは、脳に常に負荷をかけ続け、かえって脳によくないと警鐘を鳴らしています。
そこで勧められているのが、脳を休ませるための「デフォルトモードネットワーク(DMN)」のスイッチを入れることです。
DMNは、脳が「ぼーっとしている」ときに活発になる回路であり、記憶の整理やひらめきを生み出すために不可欠です。
移動中にスマホを見るのをやめ、意識的に「ぼーっとする」時間を確保することが、脳の回復と疲労抑制に繋がります。
ネガティブな思考に囚われると脳は余計に消耗するため、ストレスを「興味」に変換する思考法も紹介されています。
「あの人はマイペースだね」といわれるくらいで、ストレス対策としてはちょうどよいくらいなのです。
『疲労学』
自分で締切りを設定する
『疲労学』
「準備は成功の父であり、良質なストレス対策」
スマホの使い過ぎで、脳はオーバーフロー状態
『疲労学』
■疲れにくくなる「食事法」
食事のアプローチでは、カロリー制限や激しい運動だけではない、疲労予防の知恵が提供されています。
重要なのは、「体のコゲ」を作らないことです。
ここでいう「体のコゲ」とは、老化や疲労の原因となる糖化(AGEsの生成)を指します。
単なる糖質制限ではなく、「糖化抑制」に焦点を当てた食事法が推奨されています。
ビタミンB群や鉄分といったエネルギー代謝に必須の栄養素を意識的に摂取することも重要です。
さらに、サーチュイン遺伝子を活性化させるための食事法も紹介されており、疲労回復を超えたアンチエイジングの効果も期待できます。
カギはカロリー制限、運動、糖化抑制
『疲労学』
3. ココだけは押さえたい一文
「疲れは我慢するものではなく、仕組みで防げるもの。今日から『疲れやすい習慣』を見直せば、人生のパフォーマンスは劇的に変わります。」
『疲労学』
4. 感想とレビュー
『疲労学』は、私たちが抱える「なんとなくの疲れ」に、明確な答えと対処法を与えてくれた一冊です。
これまでの「休養」を重視する健康法とは異なり、「予防」に特化している点が画期的だと感じました。
本書のレビューで特に印象的なのは、「疲労の原因をDRICSで分類する」という理論です。
疲労の原因を可視化することで、「仕事のせいだ」と漠然と悩むのではなく、「これはスケジュールの問題だ」「これは食事の乱れだ」と具体的に捉え直すことが可能になります。
「タイパは脳によくない」という指摘も現代人に響くメッセージです。
常に何かしていないと落ち着かないという焦りが、脳のエネルギーを不必要に消耗させていたのだと気づかされました。
著者の片野秀樹氏が提案する「電車で手すりをつかむ」「あえてぼーっとする」といった小さな工夫は、大掛かりな努力なしにすぐに始められます。
これらの小さな行動を変えるだけで、日々のストレスが減り、充実感が増すことを実感できるでしょう。
慢性的な疲労に悩む人、仕事で成果を上げつつプライベートも充実させたいすべての人に、本書を強くおすすめします。
5. まとめ
片野秀樹氏の『疲労学』は、疲れを科学的に分析し、効率よく「疲れをためない体と脳」を作るための実践的な書籍です。
この本で提唱されている「行動」「思考」「食事」の3つのアプローチを習慣化することで、私たちは「疲れやすい習慣」から脱却することができます。
「疲労学」を学び、今日から日々のストレッサーに上手に対処しましょう。
疲れを減らし、人生のパフォーマンスを最大限に引き出してください。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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