毎日、会社の最前線で戦っているビジネスパーソンの皆さん。 今週も本当にお疲れ様です!
職場で新入社員や20代の若手メンバーと接する時、「何を考えているのかわからない」と戸惑うことはありませんか? あるいは、大学受験に向けて机に向かう高校生くらいの世代を見守る中で、「私たちの若い頃とは、なんだか決定的に感覚が違うな」と感じることもあるかもしれません。
熱意を持ってチームを引っ張ろうとすればするほど、暖簾に腕押しのような反応が返ってくる。 「もっとガツガツしてほしいのに」「なぜあんなに淡々としているんだろう」と、見えない壁を感じて悩むのは、決してあなただけではありません。
彼らは宇宙人になったわけでも、心が冷たくなったわけでもありません。 ただ、私たちが生きてきた時代とは全く違う「生存戦略」を身につけているだけなのです。
今回は、そんな若者たちのリアルな生態を鮮やかに描き出した一冊をご紹介します。 金間大介(かねま だいすけ)さんの著書『無敵化する若者たち』です。 この本を読めば、明日からの若手への眼差しが、少しだけ温かく、そして面白く変わるはずですよ!
『無敵化する若者たち』とはどんな本か?
金間大介さんは、金沢大学融合研究域融合科学系の教授であり、若者のモチベーションやイノベーション教育を専門とされています。 日夜、現代の学生たちと真正面から向き合っているからこそ書ける、非常にリアルで解像度の高い「若者論」が本書の魅力です。
この本は、決して「最近の若者はけしからん」と説教をするような内容ではありません。 むしろ、彼らがなぜ今の振る舞いに行き着いたのかを、ユーモアを交えながら冷静に分析しています。
著者は、現代の若者たちを「無敵」と表現しています。 それは、彼らが絶対的な力を持っているからではありません。 社会のあらゆる摩擦から守られ、傷つかないための完璧なアーマー(鎧)を着込んでいるからです。
彼らはどうやってその「無敵の鎧」を手に入れたのか。 そして、その鎧の隙間にある「本当の弱点」とは何なのか。 本書で紹介されている具体的なポイントを、一緒に読み解いていきましょう。
① 摩擦ゼロの世界を生きる「無敵の鎧」
まずは、彼らが身にまとっている「無敵の鎧」の特徴を見ていきます。 ビジネスの現場で、私たちが一番戸惑う部分かもしれませんね。
・安定志向が強く、仕事に対する熱意や欲求がない
彼らに「将来は社長になりたいか?」「バリバリ稼ぎたいか?」と聞いても、ピンときません。 彼らが一番求めているのは、波風の立たない「安定」です。 仕事で自己実現を果たすという熱意よりも、平穏な日常を維持することを最優先にしています。
・上の世代がためらうような権利主張を平気でする
「有給をとります」「定時なので帰ります」。 私たちが若い頃は、上司の顔色をうかがって言えなかったような権利を、彼らはあっさりと主張します。 そこには悪気すらなく、ただ「制度としてあるから使う」というフラットな感覚なのです。
・自己評価が高い
彼らは基本的に、自分のことを「ちゃんとやっている」と高く評価しています。 自己肯定感とは少し違い、「自分は平均的な水準はクリアしているはずだ」という強い自己認識を持っています。
・アウトではないけど微妙に失礼
決定的なルール違反はしません。 しかし、チャットの返信がスタンプ一つだったり、エレベーターで上座を譲らなかったり。 「怒るほどではないけれど、なんだかモヤモヤする」という絶妙なラインをついてきます。
② 完璧に守られた「温室」という環境
なぜ彼らは、このような振る舞いができるのでしょうか。 それは、彼らを取り巻く環境が、かつてないほど「安全」に設計されているからです。
・いつでも親が味方
今の若者にとって、親は反発する対象ではなく「一番の理解者」であり「スポンサー」です。 何かあればすぐに親に相談し、親もまた子どもを全力で守ろうとします。
・ほかの世代に比べ恵まれた労働環境
かつてのモーレツ社員のような働き方は消え去りました。 残業は厳しく管理され、コンプライアンスが徹底された環境が最初から用意されています。
・ストレスやハラスメントのない無菌化された職場
上司が少しでも強い言葉を使えば「パワハラ」と言われる時代です。 企業側も非常に気を遣っており、若者たちはストレスの少ない「無菌室」のような職場で育てられています。
・先輩世代から守られ、大切にされる
深刻な人手不足の中、若手社員は金の卵です。 辞められないように、先輩たちは腫れ物に触るように優しく接します。
・飲み会でも気遣ってもらえる
昔のように、若手がビール瓶を持ってお酌に走り回る光景は減りました。 むしろ、上司のほうが「何飲む?」「無理しなくていいよ」と気を遣ってくれるのが今の飲み会です。
彼らは、私たちが血の滲むような思いをして作り上げてきた「クリーンで優しい社会」の恩恵を、フルに受けて育ってきた世代なのです。
③ 秀でることを嫌う「同調のプロフェッショナル」
そんな安全な環境の中で、彼らが最も恐れているのは「浮くこと」です。 だからこそ、彼らは絶妙なバランス感覚で自分をコントロールしています。
・平均値より下にこぼれ落ちない術を知っている
彼らは赤点を取るようなことはしません。 情報収集能力が高く、どうすれば「ダメなやつ」の烙印を押されずに済むか、その最低ラインを正確に見極めています。
・平均値より上に目立たない術を知っている こ
れが私たちの世代と大きく違うところです。 彼らは「優秀すぎて目立つこと」も極端に避けます。 目立てばリーダーにされたり、面倒な仕事を振られたりして、リスクが高まるからです。 常に「真ん中」にいることが、彼らにとっての最適解なのです。
・いい子を演じることで上世代と一定の距離を保つ
彼らは決して反抗的な態度はとりません。 ニコニコと「わかりました」と頷き、いい子を演じます。 しかし、それは相手に踏み込ませないための「ATフィールド」のようなものです。 愛想よく振る舞うことで、心の距離を安全に保っているのです。
④ 狭い世界で完結する「幸せの定義」
彼らの視線は、遠くの未来や広い世界には向いていません。 もっと手元の、確実なものを見つめています。
・自分や近しい人が良ければそれでいい
世界平和や社会の変革といった大きなビジョンよりも、自分の半径数メートルの友人や恋人と楽しく過ごせることを重視します。
・将来展望がない日本でも十分幸せ ・日本の衰退を気にしない
「失われた30年」と言われ、日本の国力が落ちているというニュースを見ても、彼らはあまり悲観していません。 今の生活がそこそこ楽しく、スマホがあればエンタメには困らないからです。 「日本がダメになっても、自分たちの日常はなんとかなる」と、ある意味で達観しています。
・嫌われることを気にしない
正確に言えば、「自分のコミュニティ外の人からどう思われても構わない」という感覚です。 親しい人に嫌われるのは極端に恐れますが、会社のおじさんやおばさんにどう思われようと、彼らの心はノーダメージなのです。
⑤ 無敵の鎧に隠された「4つの弱点」
ここまで読むと、「なんて手強い相手なんだ」とため息をつきたくなるかもしれません。 しかし、金間さんは、そんな彼らにも決定的な「弱点」があると指摘しています。 無菌室で育ったからこそ、想定外の事態には非常に脆いのです。
・「言い訳」がない状態
彼らは失敗を極端に恐れるため、常に「環境のせい」「教え方のせい」にできる逃げ道を用意しています。 しかし、すべてがお膳立てされ、「あとはあなたがやるだけですよ」という言い訳のできない状況に立たされると、途端に足がすくんでしまいます。
・異性が集まった場
デジタルでのコミュニケーションには長けていますが、生身の、特に異性がいるような予測不能なコミュニケーションの場では、うまく自分を取り繕えずにパニックになることがあります。
・同世代のいない世界
彼らの行動基準は「周りの同世代がどうしているか」です。 そのため、同世代が一人もおらず、上の世代ばかりの環境にポツンと放り込まれると、どう振る舞っていいかわからず、無敵の鎧が機能しなくなります。
・やりたいことが見つかった友達から放たれる光
これが、彼らにとって最大の弱点であり、同時に希望でもあります。 「平均的でいい」「波風立てずに生きよう」と横並びで歩いていたはずの友人が、突然「これがやりたい!」と熱狂できるものを見つけて目を輝かせ始めた時。 その強烈な「光」を浴びた瞬間、彼らの無敵の鎧はガラガラと崩れ去ります。
「自分はこのままでいいのか?」「自分には何もないんじゃないか?」 心の奥底に隠していた焦りや不安が、一気に溢れ出すのです。
結びにかえて:私たちは彼らに何ができるのか
30代から50代の私たちは、バブルの残り香を知っていたり、就職氷河期を自力でサバイブしたり、とにかく「頑張れば報われる(はずだ)」という価値観の中で生きてきました。 だからこそ、今の若者たちの淡々とした姿に、歯痒さを感じてしまうのは当然のことです。
しかし、彼らを「無敵」にしたのは、他でもない私たちの世代が作ってきた社会です。 ハラスメントを無くし、労働環境を整え、子どもを大切に育てる社会。 それは決して間違っていませんし、むしろ誇るべき成果です。 彼らはただ、私たちが用意した「安全なゲーム盤」の上で、最も合理的なルールに従ってプレイしているだけなのです。
では、チームを率いるリーダーとして、あるいは人生の先輩として、私たちは彼らにどう接すればいいのでしょうか。
それは、「無理に鎧を剥がそうとしないこと」です。 「もっと熱くなれよ!」と正面からぶつかっても、彼らは綺麗に受け流すだけです。
私たちができるのは、彼らが「言い訳できないくらい、本気で挑戦したくなる打席」を用意してあげること。 そして何より、私たち自身が仕事や人生を心から楽しみ、熱中している姿を見せることではないでしょうか。
彼らは、友人の放つ光に弱いのと同じように、大人が放つ「本気の光」にも敏感です。 「この人のようになりたい」「このプロジェクトなら、自分も熱狂できるかもしれない」。 そんなふうに思わせる背中を見せることが、見えない壁を越える一番の近道になるはずです。
今度、職場の若手メンバーや、進路に向き合う若い世代と話す機会があったら。 彼らの「そつのなさ」の奥にある、まだ見ぬ熱量を探してみてください。 無敵の鎧の下には、きっと私たちと同じように、何かに夢中になりたいと願う素顔が隠れているはずですから。
皆さんの明日からのマネジメントや、若い世代との対話が、より温かく、実りあるものになることを心から応援しています!
詳しく知りたい方は、 金間大介さんの『無敵化する若者たち』を手に取ってください。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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