【3分要約・読書メモ】ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る

BOOKS-3分読書メモ-
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ご覧頂き誠にありがとうございます。
今回は『ソーシャルジャスティス』についてレビューと要約の記事となります。

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著者

内田 舞
小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長。北海道大学医学部卒。イェール大学精神科研修修了、ハーバード大学・マサチューセッツ総合病院小児精神科研修修了。日本の医学部在学中に米国医師国家試験に合格・研修医として採用され、日本の医学部卒業者として史上最年少の米国臨床医となった。

1. 本書の概要

ソーシャルジャスティス』は、現代社会における「正義」の在り方を深く探る一冊です。著者の内田舞氏は、ハーバード大学の准教授であり、精神科医・脳科学者としての視点から、分断が進む社会でいかにして正義を育てていくかについて考察しています。本書は、社会問題や人権問題に取り組む際に直面する課題に対し、科学的かつ実践的なアプローチを提供しています。特に、SNSでの炎上や差別、分断といった現代特有の問題に焦点を当て、それらを乗り越えるためのヒントを提供します。

2. 本書の要約

本書は、3部構成でソーシャルジャスティスについて掘り下げています。

第I部「炎上はなぜ起きるのか」では、SNSでの炎上現象を脳科学の視点から分析しています。著者は、炎上がなぜ起こるのか、そのメカニズムを解説し、それを抑えるための処方箋を提示します。特に、感情がどのように拡散し、誤解や敵対が生まれるのかを理解することで、より冷静な対応が可能になると述べています。

第II部「差別と分断を乗り越えるために」では、現代社会における差別や分断の問題に焦点を当てています。ここでは、同意とアドボカシーの重要性、マイクロアグレッションの理解、そして歴史的な差別の背景について学ぶことが重要であるとされています。著者は、自身の体験や対話を通じて、ThemとUsという分断構造を解消するための方法を提案します。

第III部「日本社会への処方箋」では、女性や子どもを取り巻く社会の問題について議論されています。特に、女性の労働環境や子どものメンタルヘルスに関する偏見の克服、そして母親としての自己決定権に関する問題が取り上げられています。著者は、これらの課題に対して脳科学に基づく新しいアプローチを提案し、社会全体がより公正な方向へと進むためのビジョンを描いています。

3.印象に残ったコメント

・炎上に便乗してしまわないための自尊心
誰かを攻撃しても自分の幸福度は上がらない。
また、「自分を正当化して、誰かを貶めたい」という思いは、ときとして「相手を下げることによって自分を上げたい」という自信のなさの表れである。

「相手を下げても、自分は上がらない」。

相手との比較ではなく、ありのままの自分自身をリスペクトとする芯のある自尊心を育てることが必要。

・行き過ぎたキャンセルカルチャー
「再評価」の過程を踏まずに、感情に任せた攻撃によってたとえ相手を業界追放のような局面に追い込んでも、ほとんどの場合、それによって自身の幸せが得られるわけではない。

相手に敬意を払って気遣うことが大事。
判断を急いではいけないし、すべてを白黒はっきりさせなければいけないわけでもない。

オバマ元大統領

・エンパシー=他社の靴を履く
その人がどんな経験を持ち、どんな思いでその発言を発しているのかを想像する努力、つまり「他者の靴を履く」と比喩される「エンパシー」が重要。

言葉を通しての理解よりも、実体験での人との交流が視野を広げる。今まで自分自身が抱えているとも気づかなかった固定観念や偏見を壊すきっかけとなる。

・「内的評価」を育てる多様な軸
自分の感情、考え、行動について落ち着いて分析する。誰かの声に自分の声を重ねるのではなく、自分の心の声に耳を傾けてみる。その中で、自分の感覚に自信が持てるようになることもあるし、引きずられがちだった自分の論理のねじれや、あるいは自分自身にかけていたいらぬプレッシャーに気づくこともあるかもしれません。

・沈黙を破る
「正義が存在する積極的平和」のために必要なことは、なによりも我々一人ひとりが無意識に持っている考えを意識的に見つめる「再評価」の努力なのではないでしょうか。自分自身の行動や感情の発露に耳を傾け、自分の意志は自分の元と尊重しながら、自分とも他人とも一面的ではなく多面的に向き合うこと。その過程で起こる気づきがアドボカシーの声になり、共感するエンパシーになり、自分ごととして社会とかかわっていく責任と判断に繋がっていく。

・遅くてもいいから止まらないこと
「ゆっくりでいいから、馬から降りないこと」が一番大事。今が大変でも、とにかく止まらないこと。止まってしまうと再発進は大変だけど、今はどんなに遅いペースでもいいから、続けていれば、必ずその努力の蓄積は実る。

・アクセプトする
「アクセプトすること」は、許容することでも、諦めることでも、忘れることでも、その事実に付随する感情を抑制することでもありません。ただ起きた出来事に関して、良い/悪いという評価を与えずに「起きたことは変えられない」という事実を事実をして認識し、受容することです。

3. 感想とレビュー

ソーシャルジャスティス』は、非常にタイムリーで重要なテーマを扱った本であり、その内容は深く、かつ実践的です。まず、炎上や差別のメカニズムを脳科学の視点から解説することで、単なる感情論や道徳的なアプローチにとどまらず、科学的な裏付けを持った実践的な対策が示されている点が非常に興味深いです。また、著者が自身の経験や対話を交えて語る部分は、理論だけでなく、現実世界での実践の重要性を感じさせてくれます。

特に、第II部の差別や分断を乗り越えるための提案は、今まさに私たちが直面している課題に対する実践的なアドバイスが詰まっています。マイクロアグレッションの理解や、同意とアドボカシーの重要性など、日常生活で意識すべきポイントが具体的に示されているのが非常に有益です。また、第III部での日本社会に対する提言も、今後の社会変革に向けた実践的なステップを考える上で大変参考になります。

全体的に、本書は単なる理論書ではなく、具体的な行動に結びつけるためのガイドブックと言えるでしょう。炎上や差別、分断といった問題に対して、どう向き合い、どのように乗り越えるべきかを示してくれる一冊です。

4. まとめ

ソーシャルジャスティス』は、現代社会の複雑な問題に取り組むための深い洞察と具体的な提案が詰まった一冊です。炎上や差別、分断といった現代特有の課題に対して、脳科学的な視点からのアプローチを提供し、さらにそれを実践に結びつけるための具体的な方法が示されています。社会正義について深く考え、行動を起こしたいと思っている方にとって、非常に価値のある一冊です。読後には、自分自身の行動や考え方を見直すきっかけになるでしょう。

最後まで読んでいただきまして、
ありがとうございました。

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