みなさん、突然ですが質問です。
「アート」と「ビジネス」って、どんな関係があると思いますか?
「関係ないでしょう?」
そう思った人も多いかもしれませんね。
でも、最近はビジネス書コーナーでも「アート思考」という言葉をよく見かけるようになりました。
なぜ、今アートがビジネスパーソンに必要だと言われているのでしょうか。
今回ご紹介するのは、三浦俊彦さんの著書
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』です。
この本は、アートの専門家である「東大の先生」と、アート初心者の「ライター」の対話形式で進んでいきます。
専門的な内容がとてもわかりやすく解説されているので、アートに詳しくない人でも安心して読み進められますよ。
もしあなたが、
「最近、アイデアが枯渇してきたな」
「いつものやり方だと、もう通用しない」
「新しい刺激が欲しい」
そう感じているなら、きっとこの本が、あなたの凝り固まったアタマを刺激してくれるはずです。
著者の紹介
著者の三浦俊彦さんは、東京大学大学院総合文化研究科の教授です。
専門は、美学や現代思想、比較文化論など多岐にわたります。
美学や芸術学の研究者として、また大学の教員として、長年アートの本質を探求し続けてきました。
専門家というと少し堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、本書ではアート初心者のライターの疑問に、とても丁寧でわかりやすく答えてくれています。
その解説は、まるで実際に授業を受けているかのようです。
「なるほど!」と膝を打つような気づきがたくさん得られますよ。
本書の要約
1日目|いま流行りの「アート」って何?
この本は「そもそもアートって何?」という素朴な疑問から始まります。
アートとは、「常識をぶち壊す工夫」だと、著者は定義しています。
私たちは、効率や生産性を追求するあまり、無意識のうちに「常識」という枠の中に閉じこもりがちです。
でも、アートはあえてその枠を壊し、新しい世界を創造しようとします。
この章では、アートとビジネスは「両方とも、創造的な仕事だ」と解説しています。
だからこそ、アートに触れることで、私たちは新しい発想を得ることができるのですね。
ひとことで言うなら、アートは「常識をブチ壊す工夫」
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
デザインは人の生活に入り込むもの→実用的
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
アートは人の生活とは切り離されたもの→非実用的
アートは基本的に「違和感を内包するもの」
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
アートの3つの効用
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
①文化的な人間としての備えておくと有利な、「教養」としてのアート
②自分の常識を少しづつ入れ替えていく、「刺激剤」としてのアート
③鑑賞や創作行為を通じて自分に意識を向ける、「人生の本番」としてのアート
2日目|美術だけじゃない!アートの種類と価値はいろいろある
アートは、絵画や彫刻といった「美術」だけではありません。
本書では、アートの定義をさらに広げていきます。
デザインとの違いも明確に示されています。
デザインは「実用的」で、目的を持って作られるもの。
一方、アートは「非実用的」で、表現したいという感情から生まれるものだと説明されています。
この違いを知るだけでも、アートの見方が大きく変わりますよ。
また、アートには「天性」のスキルが必要で、デザインは「習得」できるもの、という考え方にも納得しました。
この章を読むことで、アートという概念がぐっと身近に感じられるはずです。
芸術は3つに分類できる
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
①「ハイアート」と「ローアート」
②「視覚芸術」と「言語芸術」と「聴覚芸術」
③「純粋芸術」と「合成芸術」
アートの価値は批評家が決める
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
ハイアート、つまり「アートらしい作品」になればなるほど現実世界の常識や価値観と連動しないということです。連想しないから理解しづらいわけです。だからこそ、そこにアートとしての価値がある。
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
3日目|【教養としてのアート】アート史は進化論で学ぶと超面白い!
アートの歴史は、ただの年表ではありません。
著者は、アート史を「進化論」で捉えることを提案しています。
過去の作品は、すべて次の作品の「種」となり、新たな表現方法へと進化してきたというのです。
この考え方でアート史を紐解くと、今まで「よくわからない」と思っていた現代アートも、その文脈が見えてきます。
「自分の知らない世界を知っていこう」というマインドセットが、アートを学ぶ上では大切なんですね。
アートは時代を超えて私たちに語りかけ、新たな視点を与えてくれる教養なのです。
創作熱心なのは男、鑑賞能力が高いのは女
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
アートは「子孫繁栄」という「これ以上ないくらい実用的」なところから始まった
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
アート市場の変化を究極的にシンプルな形で説明するなら「昔は写実的。今は抽象的」。これだけでOK。
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
4日目|【刺激材としてのアート】現代アートの魅力を教えてください!
現代アートは、最も「刺激的」なアートかもしれません。
なぜなら、私たちの常識を正面から揺さぶってくるからです。
本書では、現代アートの代表的な作品を通じて、その魅力を解説しています。
例えば、マルセル・デュシャンの『泉』という作品。
ただの男性用小便器が、なぜアートとして認められたのか。
それは、作者が「これはアートだ」と主張し、社会に問いを投げかけたからです。
この「常識を壊す」という姿勢は、まさにビジネスで新しい市場を創造する際の考え方と似ています。
現代アートは、私たちの凝り固まったアタマを柔らかくする「刺激剤」なのです。
コンセプチュアル・アートは、「いかに鑑賞者の期待を裏切れるか」
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
限られた時間を使って、自分が経験したことがないものにどんどん挑戦する人の方が引き出しが植える。
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
つまり、「自分の世界観を貪欲に広げようとするマインドを持っているから、アート鑑賞もするし、だから新しい発想が湧きやすい」
アートは、ノーリスクでできる冒険
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
5日目|【人生の本番としてのアート・前編】アート鑑賞のすすめ
アート鑑賞は、ただ作品を眺めるだけではありません。
本書では、アート鑑賞の目的を「自分に意識を向けること」だと説明しています。
私たちは、日々仕事や生活に追われ、常に未来の目標に向かって突き進んでいます。
「目的」と「手段」の連鎖の中で、今この瞬間を生きている感覚を失いがちです。
でも、アートと向き合っている時間は、その行為自体が目的になります。
誰かのためでも、何かのためでもなく、ただアートを楽しむ。
それは、日々の忙しさから解放され、自分自身と向き合うための貴重な時間です。
「作品と接したときの自分のリアクションを楽しむ」のもアート鑑賞の本質かもしれない
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
アートと向き合った時の反応
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
①作品がつくる世界にのめり込んで自分をなくす
②作品を見ている自分の感受性を確かめながら芸術作品に対峙する
作品鑑賞の時は、タイトルを必ず見よう!
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
タイトルは作品の一部なので、タイトルを見なければ、作品の半分しか見ていない。
最終日|【人生の本番としてのアート・後編】全員がアーティストになる時代
この章では、誰もがアーティストになれる時代が来ると語られています。
それは、絵を描いたり、彫刻を作ったりするだけではありません。
私たちは、日々の暮らしの中で「アート思考」を活かすことができます。
自分の内なる声に耳を傾け、自分なりの「問い」を立ててみる。
それが、自分だけの新しい価値観や生き方を生み出すことにつながります。
アートは、特定の才能を持つ人だけのものではなく、私たち全員が持つべき「生きる力」なのかもしれません。
ココだけは押さえたい一文
本書を読んで、私が最も衝撃を受けたのは、この一文です。
「アートに触れているときは『人生の本番』なんですよ。」
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』
この言葉は、私の心を深く揺さぶりました。
私たちは、常に「目的」に向かって走るように生きています。
お金を稼ぐ、キャリアを築く、子育てをする…。
それらはすべて、未来の幸せのための「手段」だと考えていました。
でも、本当にそうなのでしょうか?
目的と手段の連鎖の中で、私たちは「今を生きる」ことを忘れていないでしょうか。
アートに触れている瞬間は、ゴールが「今」にあります。
無駄だと思える時間の中に、人生の本質が隠されているのかもしれません。
この一文は、私の人生観を大きく変えるきっかけとなりました。
感想とレビュー
私は日頃、効率や生産性を重視するあまり、無駄を徹底的に排除しようとしていました。
それは、仕事だけでなく、プライベートでも同じでした。
「この時間は何のために使うのか?」
「もっと効率的な方法はないか?」
そんな思考回路に陥っていた自分に、この本は一石を投じてくれました。
この本を読んで、「無駄な時間」こそが、人生を豊かにする鍵だと気づかされたのです。
特に、アートと哲学の共通点についての話は非常に興味深かったです。
昔は、科学も心理学も、すべて「哲学」から生まれていました。
しかし、明確な答えが見つかった途端に、独立した「学問」として切り離されていったのです。
そして、今でも謎のまま残っているのが「哲学」です。
アートも同じです。
役に立つものは「デザイン」や「建築」として分離し、残ったものが「アート」です。
つまり、アートと哲学は、両方とも「わけのわからないもの」として残ったもの。
そして、その「わけのわからなさ」の中にこそ、私たちの心を揺さぶり、人生を豊かにするヒントがあるのです。
アートは、私たちを「目的と手段の連鎖」から解放し、「今を生きる」感覚を取り戻させてくれます。
この本は、ビジネス書のような実用性だけでなく、心の奥深くに語りかけてくる哲学的な側面も持っています。
アートに少しでも興味がある方、
または、人生に行き詰まりを感じている方に、ぜひ読んでほしい一冊です。
まとめ
『東大の先生! 超わかりやすくビジネスに効くアートを教えてください!』は、アートの入門書でありながら、哲学書でもあり、自己啓発書でもあると感じました。
この本が教えてくれるのは、
「ロジックを超えた、感性と思考の技術」です。
そして、「効率」だけでは測れない、人生の価値を再認識させてくれます。
ビジネスの成功だけでなく、人生の豊かさを追求したい方。
新しい時代の変化に対応できる柔軟な思考を身につけたい方。
この本は、あなたの人生をよりクリエイティブなものに変えてくれるはずです。
ぜひ一度、手に取ってみてください。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
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