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このブログでは、ビジネスにおける戦略や市場のトレンド、そして新しい価値をどうやって社会に広げていくかといったテーマに関心がある方に向けて情報を発信しています。
私たちの周りでは、ここ数年で急速に「あたりまえ」になったものがたくさんありますよね。例えば、ノンアルコール飲料の多様化、キャッシュレス決済の普及、そしてリモート勤務の一般化など。これらは、かつては「特別なこと」だったのに、いつの間にか私たちの生活や社会に溶け込み、「あたりまえ」のこととして受け入れられています。
なぜ、このような新しい「あたりまえ」は生まれるのでしょうか?そして、私たち自身が持つ素晴らしいアイデアやサービスを、どうすれば世の中に浸透させ、「あたりまえ」にすることができるのでしょうか?
今回ご紹介する一冊は、この問いに、PR(パブリック・リレーションズ)という視点から深く切り込み、その実践的な方法を教えてくれる本です。
それが、『「あたりまえ」のつくり方 ——ビジネスパーソンのための新しいPRの教科書』 嶋浩一郎 (著) です!
著者の嶋浩一郎氏は、PR界の第一人者であり、博報堂ケトルの共同CEO。30年以上にわたり、数々のキャンペーンを手がけ、新しい潮流を生み出してきました。本書は、そんな「あたりまえ」を生み出すプロが、PRの真髄を解き明かした渾身の一冊です。
PRというと、メディアへの露出やSNSでの情報発信を思い浮かべるかもしれませんが、それはPRのごく一部にすぎないと本書は言います。真のPRとは、社会全体を動かし、新しい価値や概念を人々の「あたりまえ」にするための、より本質的な活動なのです。
この記事では、私が『「あたりまえ」のつくり方』を読んで、これはマーケターだけでなく、組織や社会で何か新しいことを始めたい人、あるいは変化を推進したい人にとって、まさに必読の「新しいPRの教科書」だと感じたポイントを、以下の構成で、コンパクトにまとめてお伝えします。
新しい「あたりまえ」は、どうやって生まれるのか?そして、あなたはどうすれば、その「あたりまえ」を「つくる」側になれるのか? ぜひ、最後までお付き合いください!
PRの本質「合意形成」で社会とビジネスを動かす【要約/レビュー】
1. 著者の紹介
まず、本書『「あたりまえ」のつくり方 』の著者、嶋 浩一郎(しま こういちろう)氏をご紹介します。
嶋浩一郎氏は、日本のPR界、コミュニケーションデザイン界において、第一人者と称される存在です。広告会社である博報堂の出身で、現在は博報堂ケトルの共同CEOを務めていらっしゃいます。博報堂ケトルは、「マスと個」をつなぐ新しいタイプの広告会社として知られ、数々の革新的なキャンペーンを生み出してきました。
嶋氏は、単なる広告や広報の枠にとどまらず、社会全体の潮流や人々の意識を動かす戦略的なコミュニケーション、すなわち「PR」の本質を深く探求し、実践されてきました。30年以上にわたる豊富な経験の中で、彼はどのようにして新しいアイデアやサービスが社会に受け入れられ、「あたりまえ」になっていくのか、そのメカニズムを見抜いてきました。
本書は、そんな嶋氏が長年の経験と洞察を凝縮し、自身の「PR観」を体系的にまとめたものです。彼が手がけた仕事の中には、社会的な議論を巻き起こし、人々の意識や行動を変えるきっかけとなった事例も多くあります。
「新しい価値を社会に広めること」「人々の行動や意識を変えること」。これらに情熱を燃やす嶋氏だからこそ書ける、力強く、そして深い示唆に満ちた一冊です。
2. 本書の概要
次に、本書『「あたりまえ」のつくり方 』が全体としてどのような内容を扱っているのか、その概要を説明します。
本書は、私たちの社会で日々生まれる新しい「あたりまえ」は、どのようにして定着していくのか、そして新しいアイデアやサービスを社会に浸透させ、ビジネスを加速するために必要なPRの考え方と実践方法を明らかにするものです。
著者の嶋浩一郎氏は、PRの本質を、従来のメディア露出やパブリシティといった狭い範囲ではなく、「新しい『あたりまえ』を世の中に定着させるため、あらゆるステークホルダーと対話し『合意形成』を目指す活動」であると定義します。これは、PRの概念を大きく拡張し、その戦略的な役割を強調するものです。
いくら優れたアイデアやサービスがあっても、それが社会に受け入れられ、人々の「あたりまえ」にならないと、ビジネスとしての成功は難しい。本書は、まさにこの課題に応えるための実践的な指南書です。
テクノロジーの進化、多様性の広がり、サステナビリティへの意識向上など、現代社会は大きな変革の波に直面しており、新しい「あたりまえ」が次々と生まれています。こうした時代において、多様な人々の「合意形成」を図り、新しい価値観や行動様式を社会に実装していくPRの力がますます重要になっていると本書は説きます。
本書では、「合意形成」を加速するためのPRの5つの原則と、新しい「あたりまえ」を「つくる」ための7つの方法(補助線)が、豊富な事例とともに具体的に解説されています。
これらの原則と方法論は、単に広報やPRの専門家だけでなく、経営者、起業家、新規事業担当者、マーケター、さらには組織や社会を変えたいと願うあらゆるビジネスパーソンにとって、新たな視座とパワフルな戦略をもたらす内容となっています。
市場の中での「違い」を見つける広告に対し、社会の中で「同じ」(共通認識や共感)を見つけていくPR。その真髄である「合意形成」こそが、社会をつなげ、ビジネスを動かし、ブランドが愛されるための鍵である。本書は、このPRの本質を深く理解し、自らの力で新しい「あたりまえ」を「つくる」側に立つための、新しいPRの教科書なのです。
3. 本書の要約
それでは、本書『「あたりまえ」のつくり方 』の核となる内容を、その要約としてさらに詳しく見ていきましょう。
本書が提示するPRの核心は、「新しいものを人々の間で広く受け入れられる『あたりまえ』にする活動」であり、そのために最も重要なのが、多様な立場の関係者との「合意形成」であるという点です。従来のPRのイメージ(メディア露出など)を超え、社会全体の共通認識や行動様式を変えることを目指す、より戦略的な活動としてPRを再定義しています。
現代社会はテクノロジー、ダイバーシティ、サステナビリティといった大きな変革期にあり、新しい「あたりまえ」を意図的につくり出すことがビジネスや社会課題解決において不可欠となっています。そのためには、異なる立場の人々との対話を通じて理解と共感を生み出し、「これでいこう」という共通の土壌を作り上げていく「合意形成」の力が求められます。
本書では、この「合意形成」を加速するためのPRの5つの原則と、新しい「あたりまえ」を「つくる」ための7つの方法が解説されています。
合意形成を加速する5原則として挙げられているのは、
- 自分でやらない、第三者を頼る(信頼性や影響力を持つ第三者の力を借りる)
- 複数のステークホルダーを巻き込む(顧客だけでなく、従業員、株主、地域社会など多様な関係者を含める)
- 対話を続ける(合意形成は一度きりではなく継続的なプロセス)
- 社会視点で考える(市場での競争優位性だけでなく、社会全体への貢献や意義を考える)
- ファクトベースで語る(感情論ではなく客観的な事実やデータに基づいて議論する) といった点です。
これらの原則に基づき、新しい「あたりまえ」を具体的に「つくる」ための7つの方法(補助線)が提示されます。その一部を挙げると、
- 【インサイト】人々の隠れた欲望やニーズを見つけ出す
- 【社会記号】新しい概念や価値観に、分かりやすい「名前」(社会記号)をつける
- 【社会視点】個別の商品やサービスを、より大きな社会的な文脈の中に位置づける
- 【ナラティブを生む余白】メッセージに余白を残し、受け手が主体的に解釈し、自分事として語れるようにする
- 【リスク予想】新しい概念の導入に伴う摩擦や反発を予測し、対応策を考える などです。
本書では、これらの原則や方法論が、ノンアルコール飲料やキャッシュレス決済が「あたりまえ」になった事例、さらには女性の喫煙が「あたりまえ」になっていった歴史的なキャンペーン(「自由の松明」)や、冷凍餃子を「手抜き」ではなく「時短や家事負担軽減」として社会に位置づけ直した「#手間抜き論争」といった豊富な具体例とともに解説されています。これらの事例を通して、いかにして新しい概念が社会的な「合意」を得て、「あたりまえ」になっていくのかが、鮮やかに示されています。
本書の要約をまとめると、『「あたりまえ」のつくり方 』は、PRの本質を「多様な関係者との対話を通じた合意形成」と捉え、新しいアイデアやサービスを社会の「あたりまえ」にするための、戦略的な考え方と具体的な手法を、豊富な事例と分かりやすい原則・方法論で体系的に解説してくれる、新しいPRの教科書であるということです。これは、市場の中だけでなく、社会全体を視野に入れた、変化を「つくる」ための強力なフレームワークです。
4. ココだけは押さえたい一文
本書『「あたりまえ」のつくり方 』の中で、私がこの本の「新しいPR観」を最も端的に、そして力強く示していると感じた一文があります。それは、本書が定義する「PR」という活動の本質を述べた、この言葉です。
「PRを『新しい「あたりまえ」を世の中に定着させるため、あらゆるステークホルダーと対話し「合意形成」を目指す活動』と定義しています。」
『「あたりまえ」のつくり方 』
私たちが普段「PR」という言葉から連想するのは、メディアへの露出や、SNSでの情報発信など、どちらかというと「情報を広く発信する」というイメージが強いのではないでしょうか。もちろんそれもPRの一部ですが、この一文は、PRの目的が「新しいものを社会に定着させ、『あたりまえ』にすること」であり、そのための手段が「あらゆるステークホルダー(関係者)との対話を通じて『合意形成』を図ること」であると明確に示しています。
これは、PRを単なる「広報宣伝」や「露出獲得」といった戦術的なレベルから、社会の共通認識や行動様式を変えるという、より根源的で戦略的なレベルへと引き上げる定義です。新しい技術やサービス、あるいは新しい価値観が、なぜあるタイミングで急速に社会に受け入れられるのか?それは、多様な人々との対話を通じて「これでいこう」という「合意」が積み重なった結果なのだと教えてくれます。
この一文は、「どう伝えるか」だけでなく、「誰と対話し、どう共通理解を作るか」という、より深いレベルでコミュニケーションを考えることの重要性を私たちに突きつけます。「あたりまえ」は、自然に生まれるのではなく、意図的な「合意形成」という活動によって「つくられる」ものなのです。
本書を読む際には、ぜひこの言葉を心に留めて、あなたの目の前にある課題やアイデアを、「どうすればこれを社会の『あたりまえ』にできるだろうか?」「そのためには、誰と対話し、どんな『合意形成』が必要だろうか?」という視点で見つめ直してみてください。
パブリック・リレーションズとは、新しい「あたりまえ」を世の中に定着されるために、あらゆるステークホルダーと関係を築き継続的に対話し「合意形成」をする仕事
『「あたりまえ」のつくり方 』
すべてのイノベーションは辺境から生まれる
『「あたりまえ」のつくり方 』
広告は差別化ポイントを、PRは共通の目的や利益を探る
『「あたりまえ」のつくり方 』
広告は人と違うところを見るけると褒められる仕事で、PRは人と同じところを見つけると褒められる仕事
「市場の中の私の役割」を語るのではなく、「社会の中の私の役割」を語る
『「あたりまえ」のつくり方 』
PRは世の中の第3者や環境を相手の意見を問わず「コントロール」するのではなく、あたらしい「あたりまえ」の普及のために対話を通じて第3者の力を引き出すように「マネージメント」する思考と技術です。
『「あたりまえ」のつくり方 』
PRとは、「みんなが乗り込める大きな船を作っていく仕事」
『「あたりまえ」のつくり方 』
5. 感想とレビュー
本書『「あたりまえ」のつくり方 』は、日頃から「どうすれば新しい製品やサービスをお客様に受け入れてもらえるか」「どうすれば世の中のトレンドに乗れるか、あるいは作れるか」と考えている私にとって、非常に示唆に富み、仕事の視座が一段上がるような一冊でした。
マーケティングの現場では、常に「お客様にどう伝えるか」「どんな広告を打つか」といったことに注力しがちですが、本書を読んで、その前提となる「どうすれば新しい概念が社会に受け入れられる『あたりまえ』になるのか」という、より大きな視点が得られました。PRの真髄が「合意形成」にあるという著者の定義は、これまでの私のPR観を大きく覆すものであり、「なるほど!」と腑に落ちる感覚がありました。
例えば、新しい技術を使った製品を市場に投入する際、単に製品の良さをアピールするだけでなく、その技術や製品が「社会にとってどんな意味を持つのか」「人々の生活をどう良くするのか」といった、より大きな文脈で語り、様々な関係者(メディア、専門家、インフルエンサー、そして一般の消費者)との対話を通じて理解と共感を得ていくこと。これがまさに本書でいう「合意形成」であり、新しい技術を「あたりまえ」にするために不可欠なプロセスなのだと理解できました。
本書で紹介される「合意形成を加速する5原則」や、新しい「あたりまえ」を「つくる」ための7つの方法は、非常に実践的です。特に、「社会視点で考える」ことや、「隠れた欲望(インサイト)」を見つけ出し、それに「社会記号」として名前をつけること、そしてメッセージに「ナラティブを生む余白」を残すといった手法は、マーケティング戦略やコミュニケーション設計を行う上で、すぐにでも取り入れたい強力なツールだと感じました。「#手間抜き論争」の事例は、既存の概念(冷凍餃子=手抜き)を覆し、新しい「あたりまえ」(時短、家事効率化)に繋げるPRの力を鮮やかに示しており、非常に勉強になりました。
また、本書はPRを単なるコミュニケーションスキルとしてではなく、組織や社会を動かすための戦略的な機能として捉えています。これは、マネージャーとして、部署を越えた連携や、新しい取り組みを社内に浸透させていく際にも非常に役立つ視点です。関係者の「合意形成」を図りながら物事を進めるという考え方は、プロジェクト推進や社内変革においても不可欠だからです。
著者の嶋氏の語り口は、PR界の第一人者らしい鋭い洞察に満ちながらも、分かりやすく、豊富な事例が理解を助けてくれます。本書を読むことで、普段何気なく目にしているニュースやトレンドが、実は「誰かの意図によってつくられた新しい『あたりまえ』」かもしれない、という新しい視点を持つことができ、世の中の動きをより深く読み解けるようになるでしょう。
総じて、『「あたりまえ」のつくり方 』は、PRという活動の本質を「合意形成」という視点から問い直し、新しいアイデアやサービスを社会の「あたりまえ」にするための、強力な戦略と思考法を提供する、新しいPRの教科書です。単なる広報の技術書ではなく、変化の激しい現代社会で、自らの力で新しい価値を創造し、広げていきたいと願うすべての人にとって、必読の一冊と言えるでしょう。
6. まとめ
今回は、嶋 浩一郎氏の著書『「あたりまえ」のつくり方 ——ビジネスパーソンのための新しいPRの教科書』について、著者の紹介、本書の概要、要約、ココだけは押さえたい一文、そして感想・レビューをお伝えしました。
本書の核となるメッセージは、新しいアイデアやサービスを社会に浸透させ、人々の「あたりまえ」にするためには、メディア露出だけでなく、多様な関係者との対話を通じた「合意形成」という、PRのより本質的な活動が不可欠であるということです。
本書では、PRを「新しい『あたりまえ』を世の中に定着させるための合意形成活動」と再定義し、そのための5つの原則と7つの方法を、ノンアルコール飲料や#手間抜き論争といった豊富な事例を交えて分かりやすく解説しています。
私の個人的なレビューとしても、本書は、PRやマーケティングにおける「合意形成」という視点の重要性を明確にしてくれ、新しい製品やサービスを社会に浸透させるための戦略的な考え方を深めることができました。「社会視点で考える」ことや、「インサイト」「社会記号」「ナラティブを生む余白」といった具体的な手法は、日々の仕事にすぐに活かせる実践的なヒントとなりました。
もしあなたが、
- 自分のアイデアやサービスを世の中に広げたい
- 人々の意識や行動を変えたい
- PRやマーケティングの本質的な力を知りたい
- 新しい「あたりまえ」が生まれるメカニズムを知りたい
- 組織や社会で変化を推進したい
と考えているなら、ぜひ本書『「あたりまえ」のつくり方 ——ビジネスパーソンのための新しいPRの教科書』を手に取ってみてください。
本書は、あなたが世の中の「あたりまえ」を傍観する側から、それを「つくる」側に立つための、戦略的な視点と強力なツールを与えてくれるでしょう。
この本が、皆さんのビジネスや社会貢献活動において、新しい「あたりまえ」を生み出す一助となれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
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