誕生日のたびに、ケーキの上のろうそくが増えていくのを見て、「あぁ、また年をとってしまった……」とため息をついていませんか?若い頃に思い描いていた自分と、現在の自分を比べて、焦りや虚しさを感じてしまうのは、多くの大人が通る道かもしれません。
そんな、加齢や人生の停滞感にモヤモヤしている私たちの視界を、一瞬でパッと晴らしてくれるエッセイ集が登場しました。コラムニスト、作詞家、そしてラジオパーソナリティとして絶大な支持を集めるジェーン・スー(著)『ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど』です。
インパクト抜群のタイトルですが、その中身は、大人の女性(そして男性も!)が抱える心身の不具合やエイジズム(年齢による偏見)を、いかに軽やかに乗りこなしていくかという知恵が詰まっています。今回は、本書の要約とレビューを解説します。
1. 著者の紹介:時代の「もやもや」を言語化する達人
著者のジェーン・スーさんは、1973年東京生まれ。レコード会社勤務を経て、現在はコラムニストや作詞家として活躍されています。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』のパーソナリティとしてもおなじみですよね。
彼女の最大の魅力は、誰もが心の中に抱えているけれど言葉にできなかった「小さなトゲ」や「割り切れない感情」を、ユーモアたっぷりに、かつ鋭い知性で言語化してくれる点にあります。自称「未婚のプロ」として、現代を生きる女性のリアルな悩みやライフスタイルを肯定し、背中を押してくれる彼女の言葉は、まさに私たちの「代弁者」的な存在です。
2. 本書の要約:燃え盛る「ろうそく」を誇らしく引き受ける
『ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど』は、雑誌『美ST』に連載されたエッセイを軸に、美容、健康、人間関係、そして自分自身の「受け入れ方」を綴った一冊です。
ろうそくの数を「命の勢い」として誇る
本書のタイトルにもなっているエピソードは、加齢に対するマインドセットの劇的な変化を象徴しています。30歳の頃、スーさんは増えていくろうそくの数に圧倒され、「こんなに年をとってしまったのに、自分は……」とがっくり肩を落としていたそうです。
しかし、アラフィフとなった今、彼女の考えは違います。ケーキの表面を埋め尽くし、キャンプファイヤーのように激しく燃え盛るろうそくを見て、「これこそが私の命の燈だ。燃えろよ、燃えろ」と誇らしく感じるようになったのです。予想外のことが定期的に起こるのが中年期。だからこそ、その激しい炎を「失うこと」への恐怖ではなく、「生きてきた証」として愛おしむ強さが描かれています。
私を傷つけるのも人、助けてくれるのも人。体重を増やすのは自分。
『ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど』
「ご自愛」という切実な生存戦略
物価ばかりが上昇し、先行きが不透明な現代において、スーさんは「時代はまったくもってご自愛なんです」と断言します。自分を大切にすることを後回しにせず、まずは自分自身を健やかに保つこと。
それは、単なる甘やかしではありません。自分の中にある「虚栄心」や「自己顕示欲」といった、他人には見せたくないドロドロした部分さえも、「まるで唯一無二のように自分を扱う」ことで受容するプロセスです。親しい友人にそんな一面があっても「人間だもの」と許せるように、自分自身の未熟さも「そんなもんだよね」と抱きしめる。悩み、調整しながらも、「できるだけ健やかに、自分のことを好きな私で生きていたい」という切実な願いが、多くの読者の共感を呼んでいます。
虚栄心や自己顕示欲を装備した自己を受容するのは「まるで唯一無二のように自分を扱う」こと。
『ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど』
親しい友に虚栄心や自己顕示欲があったとしても、まあ人間そんなもんだよねと受容できるではないですか。
予想外のことが定期的に起こるのが中年期。
『ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど』
「自分の物差し」でお金と美しさを選ぶ
スーさんの視点は、世間が押し付ける「美しさ」や「成功」の基準を軽やかにかわします。お金の使い方もその一つです。「誰かと勝ち負けをつける道具にせず、自分に喜びをもたらすためにお金を使う」。安いか高いかの価値を他人に委ねるのではなく、自分の心がどう動くかで決める。
「私を傷つけるのも人、助けてくれるのも人。体重を増やすのは自分」というユーモア溢れる一節にあるように、自分の身に起きることを他人のせいにせず、かといって自分を追い込みすぎもしない。そんな絶妙なバランス感覚で、新しい現実と新しい自分を乗りこなしていくための知恵が、全編を通して語られています。
誰かと勝ち負けをつける道具にせず、自分に喜びをもたらすためにお金を使う。安いか高いかの価値は、人に決めてもらうんじゃない。自分で決めるのよ。
『ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど』
3. ココだけは押さえたい一文
本書の精神を最も象徴する、迷える大人たちの背中を強く押してくれる一文です。
「時代はまったくもってご自愛なんです。物価ばかり上昇する厳しい時代に、自分を大切にしないでどうするのよ。」
『ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど』
4. 感想とレビュー:大人の「悪足掻き」が愛おしくなる
『ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど』を読み終えたとき、鏡の中の自分を見る目が少しだけ優しくなっていることに気づきました。
ジェーン・スーさんの文章には、いい意味での「開き直り」と「知的な誠実さ」が同居しています。加齢に伴う変化を「仕方ない」と諦めるのではなく、かといって「抗いすぎて不自然になる」のでもない。「悪足掻きこそ大人の醍醐味」と言ってのける彼女の姿勢に、どれほど多くの人が救われることでしょう。
レビューとして特筆したいのは、美容に対する考え方です。若返るためではなく、自分が機嫌よく過ごすためのメンテナンス。そんな風に美容を捉え直すと、毎日のスキンケアも苦行ではなく、自分への投資に変わります。
自分自身のコンプレックスや加齢を、誰かと比較する材料にするのではなく、自分だけの喜びを育むための土壌にする。重たいテーマを軽やかに、それでいて核心を突くスーさんの語り口は、一歩踏み出す勇気がほしい時にぴったりのサプリメントです。
5. まとめ
ジェーン・スー(著)『ねえ、ろうそく多すぎて誕生日ケーキ燃えてるんだけど』は、人生の後半戦をどう面白がって生きていくかを示す、最高のガイドブックです。
- 加齢を「誇り」として捉え直すことで、誕生日が楽しみになる。
- 「ご自愛」を徹底し、未熟な自分さえも丸ごと受容する。
- 自分の価値を自分で決めることで、他人の視線から自由になる。
「もう若くないから」と自分に制限をかけてしまっている人にこそ、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。ケーキが燃えちゃうくらいの勢いで、残りの人生を謳歌してもいいんだ!と、晴れやかな気持ちになれるはずです。
あなたのケーキの上にあるたくさんのろうそくも、誇らしく燃やしていきましょう。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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