【3分要約・読書メモ】日本の就活─新卒一括採用は「悪」なのか:常見陽平

BOOKS-3分読書メモ-
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「リクルートスーツに身を包み、何社もエントリーしてはお祈りメールに一喜一憂する……」

日本の就職活動といえば、とかく「辛い」「不合理」「時代遅れ」といったネガティブな言葉で語られがちです。
特に「新卒一括採用」は、学業の阻害やミスマッチの原因として、政財界や学者からも「悪」として批判の矢面に立たされてきました。しかし、本当にこの仕組みを壊すことだけが正解なのでしょうか?

今回ご紹介する常見陽平さんの著書『日本の就活──新卒一括採用は「悪」なのか』は、そんな「新卒一括採用悪者論」に対して、現場の実態と理論の両面から鋭く切り込んだ一冊です。

この記事では、本書の要約レビューを通じて、私たちが知っているようで知らない「日本の就活」の正体に迫ります。

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1. 著者の紹介

著者の常見陽平(つねみ・ようへい)さんは、千葉商科大学准教授であり、雇用・労働問題の専門家として知られています。
かつてはリクルートで採用・就職支援に携わり、その後も長年にわたり「就活」という現象をウォッチし続けてきました。

常見さんの特徴は、単なる机上の論理ではなく、実際に大学の教壇に立ち、日々学生たちの悩みに直接寄り添っている点にあります。就活生が抱えるリアルな不安、企業側の本音、そして大学教育の現状。そのすべてを肌で感じているからこそ書ける、血の通った論考が多くの読者の支持を集めています。

2. 本書の要約

それでは、本書『日本の就活──新卒一括採用は「悪」なのか』の主要な内容を、章を追って詳しく要約していきます。

第1章〜第2章:新卒一括採用への批判と「歴史」

これまで、東大総長や経営学者、さらには経団連のトップまでもが新卒一括採用を批判してきました。「学業を阻害する」「早期化が異常だ」といった声です。
しかし常見さんは、そもそも就活の歴史が19世紀末から続いていること、そして「指針」などのルールが何度も形骸化してきた歴史を紐解きます。就活時期をめぐるジレンマは今に始まったことではなく、日本社会の構造に深く根ざしているのです。

新卒一括採用の問題点は、学業など学生生活の阻害、大学での教育成果を尊重しないこと、不明確な評価基準、情報の開示、ミスマッチのリスク、卒業後の就職機会が減るなど指摘されている。

『日本の就活──新卒一括採用は「悪」なのか』

第3章〜第4章:ミスマッチと危機の正体

リクナビに代表される就活メディアの肥大化や、ネット情報の氾濫によって、就活はより複雑で辛いものになりました。
また、就職氷河期、リーマンショック、そして新型コロナウイルス……。これら3つの危機が就活プロセスにどう影響したのかを分析しています。ここで重要なのは、就活は単なる「会社の入口」ではなく、若者が社会へとスライドしていくための「移行装置」として機能してきたという点です。

「会社の入口」から「社会の入口」への意義を変えて、新卒一括採用は存続する

『日本の就活──新卒一括採用は「悪」なのか』

第5章:ハラスメント、差別、そしてZ世代

現代の就活が抱える闇についても詳しく触れています。セクハラや「オワハラ(就活終われハラスメント)」、学歴フィルター、そして不適切な質問。
特に人権意識が高いZ世代にとって、こうした企業の不誠実さは致命的です。人権意識の低い企業には人が集まらず、未来が閉ざされる厳しい現実が描かれています。

Z世代は人権に関する問題意識が高い。不適切な質問を繰り返すような企業には人が集まらない。採用氷河期が続く中、人権意識が低い企業は人が集まらず、未来が閉ざされる。

『日本の就活──新卒一括採用は「悪」なのか』

第6章:中堅私大の就活支援現場から

本書で最も反響が大きいのが、常見さん自身の就活支援日記です。
「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」に悩む学生、週末も面接特訓に付き合う教員。ここでは「企業が冷たい」「学生が甘い」といった犯人探しではなく、奨学金や生活費のリスクを背負い、失敗を恐れて立ちすくむ「ごく普通の学生」への温かい眼差しがあります。大学が最後の一人まで伴走する姿は、就活支援の真髄を感じさせます。

第7章〜第8章:もし新卒一括採用がなかったら?

もしこの仕組みがなくなれば、毎年約45万人の労働力と税収が失われ、若年層の失業率は急上昇するリスクがあります。
常見さんは、新卒一括採用を「ダークヒーロー」と定義します。多くの欠点や副作用があり、嫌われながらも、結果として若者に成長の契機を与え、企業に新風をもたらす合理的でしぶとい仕組みなのです。

新卒一括採用をやめて、既卒者の採用にシフトしたら人材の多様性が実現するというのは幻想である。
組織をフリーアドレス化し、服装を自由にしたらイノベーションが起こると信じている日本の大企業と同じである。

『日本の就活──新卒一括採用は「悪」なのか』

新卒一括採用は「必要悪」として機能している。
若者と企業の可能性にかける仕組みである。
若者に成長の契機を与え、企業に新風をもたらし、大学にとっては強力な武器となる。
それゆえに、この仕組みは嫌われながらも合理的であり、しぶとく存続している。

『日本の就活──新卒一括採用は「悪」なのか』

3. ココだけは押さえたい一文

本書の結論を象徴する、非常にパワフルな一文です。

「新卒一括採用とはダークヒーローである。必要悪として機能し、若者と企業の可能性にかける仕組みである。」

『日本の就活──新卒一括採用は「悪」なのか』

美しい制度ではないかもしれない。けれど、これに代わる「若者を守る仕組み」が他にない以上、安易な解体は最も弱い立場にいる学生を直撃するという、重い警告を含んだ言葉です。

4. 感想とレビュー

ここからは、私の個人的なレビューを綴ります。

正直に言って、本書を読むまでは「新卒一括採用なんて、早く通年採用に切り替えればいいのに」と考えていました。しかし、常見さんの「実態を知らない反対論への一喝」を読み、その考えの浅さを痛感しました。

特に、第6章の学生たちとの交流を描いた部分は、胸が熱くなります。
今の学生たちは、決して甘えているわけではありません。「数年ふらふらして自分探しをする」なんて余裕はなく、奨学金の返済という現実的な重圧の中で、必死に「正解」を探しています。その不安を理解せずに「新卒一括採用を廃止して自由化しよう」と言うのは、一部のエリートだけを救い、残りの大多数を見捨てる議論になりかねないという指摘には、膝を打ちました。
「合理性がある」と言われることの重み。

新卒一括採用は決して綺麗なものではありません。でも、就業経験のない若者が、空白なく労働市場に入っていける「インフラ」としての価値は、もっと評価されるべきだと感じました。

本書は、就活生本人だけでなく、採用担当者、そして「最近の就活は……」と眉をひそめている親世代にこそ読んでほしい一冊です。社会構造を正しく理解したうえで学生を見守るための、最良の指針になるはずです。

5. まとめ

常見陽平さんの『日本の就活──新卒一括採用は「悪」なのか』要約レビュー、いかがでしたでしょうか。

本書を読めば、就活という現象が単なる「企業選び」を超えた、日本社会の文化であり、移行装置であることがよくわかります。

  • 新卒一括採用は、嫌われながらも若者を守る「ダークヒーロー」である。
  • 既卒採用へのシフトは、多様性どころか格差を広げる可能性がある。
  • 議論すべきは「壊すか守るか」ではなく、どう「補完し、使いこなすか」。

「日本の就活」のあり方を真剣に考えたいすべての人に、この「毒をもって毒を制する」ような、現実的で愛のある一冊を手に取っていただきたいです。


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

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