「本を読む」という概念が、根底から覆されるような衝撃。
アーティストとして、そして表現者として絶大な支持を集めるヨルシカのn-buna(ナブナ)さんが、とんでもない作品を世に送り出しました。
その名も、書簡型小説『二人称』。
一般的な「書籍」の形をしておらず、32通の封筒と約170枚の原稿用紙で構成されたこの作品は、発売前から大きな話題となりました。この記事では、n-bunaさんの綴る言葉の魅力と、ヨルシカの世界観が凝縮された『二人称』の要約、そして実際に体験したレビューを詳しくお届けします。
1. 著者の紹介:言葉を操る魔法使い、n-bunaさん
著者のn-bunaさんは、人気バンド「ヨルシカ」の全楽曲の作詞・作曲・編曲を手掛けるコンポーザーです。ボカロPとしての活動を経て、現在は文学的な歌詞と緻密な物語性を融合させた音楽で、令和の音楽シーンを牽引しています。
n-bunaさんの作る音楽には、常に「文学」の影があります。オスカー・ワイルドや夏目漱石など、古今東西の文学作品を引用し、独自の解釈で再構築する手腕は唯一無二です。そんな彼が「音楽」ではなく「手紙」という形を選んで書き上げたのが、この『二人称』という物語です。
2. 本書の要約:封筒を開けるたびに深まる「僕」と「先生」の謎
『二人称』は、私たちが普段本屋で見かける「背表紙のある本」ではありません。大きな箱の中に、32通の封筒が収められた特殊な形態の作品です。ここでは、その物語の核心を要約していきます。
始まりは一通の添削依頼
物語は、ある少年(僕)が、新聞のチラシで見かけた「先生」に宛てて送った一通の手紙から始まります。
「もしよろしければ、僕の作品を添削していただけないでしょうか?」
この唐突な願いから、少年と、文学に造詣の深い謎の人物「先生」との奇妙な文通がスタートします。
言葉と世界を学ぶプロセス
先生は少年の詩に対し、ときに厳しく、ときに温かく赤字で添削を入れます。「君はこれから、途方もなく広い砂の海から、たった一粒の琥珀を見つけなければいけない」といった、詩的で鋭い先生の言葉に導かれ、少年は言葉の選び方や世界の捉え方を学んでいきます。
読者は、実際に封筒の封を切り、少年の拙い文字が徐々に整っていく様子や、先生が書き加えた赤ペンの跡をその目で確認しながら読み進めます。これは単に文字を追うだけの読書ではなく、他人の秘密のやりとりを盗み見ているような、あるいは自分自身が手紙を受け取っているような、非常に「有機的な体験」です。
隠された違和感と衝撃の真実
しかし、文通が重なるにつれ、読者はある「違和感」に気づき始めます。なぜこの二人は文通をしているのか。先生の正体は何なのか。そして、タイトルの『二人称』が意味するものとは……。
物語の後半では、ヨルシカの楽曲『へび』や『うめき』といった詩の一節も登場し、音楽活動と密接にリンクしたバックストーリーが明かされます。手紙という形式だからこそ仕掛けられる、n-bunaさんらしい「物語の構造」に、最後には誰もが息を呑むはずです。
3. ココだけは押さえたい一文
作品全体を象徴する、胸を締め付けるような一文をご紹介します。
「言葉で私を話しても、私ではないから」
この一文は、ヨルシカの新曲『うめき』の詩としても登場します。言葉にすればするほど、自分という存在から遠ざかっていくようなもどかしさ。表現することの業(ごう)を描くn-bunaさんの真骨頂とも言える言葉です。
4. 感想とレビュー:一生モノの「体験」を手に入れる
ここからは、私自身の感想(レビュー)をお届けします。
まず、箱を開けた瞬間の高揚感がすごいです。8,000円を超える価格に最初は驚くかもしれませんが、手に取ればその理由が分かります。紙の質感、文字の崩れ方、インクの色……。すべてが「本物」としてそこに存在しているのです。
正直、これほどまでに「読むこと」に緊張感を感じたのは初めてでした。次の封筒を開けるのが怖い、でも知りたい。そんな矛盾した感情に引きずり込まれます。特に、文中の添削によって「僕」の詩が磨かれていく過程は、まるで一人の人間が成長していく鼓動を感じるようでした。
ヨルシカのファンにとって、この作品は「公式解説」のような側面も持っています。楽曲『へび』に登場する「巫山(ふざん)」という言葉の意味や、そこに込められたキャラクターの思考が明かされるシーンでは、「そういうことだったのか!」と膝を打ちました。
でも、それ以上にひとつの「純文学」として、あまりに完成度が高いのです。答えの出ない問い(アポリア)に悩み、言葉の海でもがく登場人物たちの姿は、表現に関わるすべての人に刺さる内容だと思います。
5. まとめ
n-bunaさんが生み出した『二人称』は、デジタル時代にあえて「紙と封筒」というアナログな形式を突きつけた、挑戦的な傑作です。
- ヨルシカの音楽世界をより深く知ることができる。
- 封筒を開封する「体験」が、物語への没入感を極限まで高める。
- 「言葉」とは何か、という根源的なテーマに触れることができる。
この作品は、一度読んで終わりではなく、一生の宝物として手元に置いておきたくなる魅力に溢れています。
もしあなたが、ヨルシカの音楽に救われたことがあるなら、あるいは「新しい物語の形」に触れてみたいなら、ぜひこの『二人称』の封を切ってみてください。そこには、あなたを待っている「貴方」がいるかもしれません。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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