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今回は「みんなのフィードバック大全」についての記事となります。
■著者
三村真宗(みむら まさむね)
1969年、東京生まれ。’93年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。同年、日本法人の創業メンバーとしてSAPジャパン株式会社に入社。以後13年間に渡り、社長室長、戦略製品事業バイスプレジデント等を歴任。’06年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、金融、通信、ハイテク企業等の戦略プロジェクトに従事。’09年、電気自動車インフラ会社であるベタープレイス・ジャパン株式会社においてシニア・バイスプレジデントとして環境省および経済産業省との実証実験プロジェクトを主導。’11年10月から株式会社コンカー 代表取締役社長に就任、現在に至る。著書に『新・顧客創造』、『最高の働きがいの創り方』(技術評論社 ‘18年)寄稿など多数。
■第1章 フィードバックとは何か
・フィードバックはビジネスの必須スキル
フィードバックとは、相手が自分では良く理解していない弱点や改善しどころ、あるいは強みや長所に気づきを与え、そして成長につなげてもらうコミュニケーションです。
このコミュニケーションは必ずしも上司から部下への一方通行だけで交わされるものではなく、部下から上司、同僚から同僚、というように組織全体に広がっていくべきもの。
・フィードバックの5つの基本概念
①フォードバックのマインド
「後ろ向き・責める気持ち」ではなく、「建設的に・成長を願って」がフィードバックを実施する際のマインドとして絶対に不可欠です。
②フィードバックの種類
フィードバックには、「ギャップフィードバック」と「ポジティブフィードバック」の2種類があります。
ギャップフィードバックは、相手の行動の気になる点や、課題や改善すべき点を伝えるフィードバックです。
ポジティブフィードバックは、本人が気づいていない強みや長所を伝えることで、相手の成長につなげるフィードバックです。
③フィードバックの方向
上司から部下だけでなく、部下から上司、同僚同士、ら部門の上司・同僚・後輩といった、タテ・ヨコ・ナナメ全方向でのフィードバックを展開する。
④フィードバックの受け止め力
フィードバックの実践度を高めていくには、受け手側のスキル、耳の痛い話を受け止める心構えを高める必要がある。フィードバックは、「伝え手と受け手の共同作業」である。
⑤組織的な取り組み
他社にフィードバックするのは大変な勇気が必要とされます。フィードバックが当たり前のように交わされる組織文化にするには、経営者やリーダーによるトップダウンの取り組みが重要。
■第2章 ポジティブフィードバックをマスターする
・ポジティブフィードバックの効果
ポジティブフィードバックの効果は3つ
①好ましい行動の強化
②好ましい行動への転換
③承認欲求の充足
・「5W1H」で掴む、ポジティブフィードバックのコツ
■第3章 ギャップフィードバックをマスターする
・ギャップフィードバックに必要な準備
ギャップフィードバックの準備には、6つの条件「6つのRight」がある。
フィードバック準備の「6つのRight(ライト)」
①Right Occasion(適切な機会に)
プレゼンや顧客訪問のすぐあとなと正しい機会に実施する。
②Right Environment(適切な環境で)
他人のいる場所やメール等は避ける。
③Right Tone(適切なトーンで)
失敗に対しても、叱責ではなく、暖かく、敬意をもつ。
④Right Atmosphere(適切な雰囲気で)
ポジティブ9:ギャップ1の比率で、フィードバックの濃度を上げておく。
⑤Right Relationship(適切な関係性で)
普段から信頼し尊敬し合える関係を気づいておく。
⑥Right motivation(適切な動機で)
相手の成長を心化が願う。
「みんなのフィードバック大全」より
・フィードバックのコツ「ソラ・アメ・カサ」のフレームワーク
「ソラ・アメ・カサ」は思考フレームワークで、非常に汎用性が高くギャップフィードバックの進め方にも当てはまる。
「ソラ」:「事実や事象」
「アメ」:「課題や問題」
「カサ」:「改善案や打ち手」
・ギャップフィードバックの「ソラ・アメ・カサ」
<導入>
・ラポールビルディングで打ち解ける
・ポジティブフィードバックを入れる
・あるべき姿を会話する
・フィードバックしてもいいか?と聞いてみる
<ソラ>における事実確認の進め方
事実確認
①事実をベースに
②具体的に
③偏った主観や府の感情を排して
④他人の意見でなく、自分の意見や感じ方を伝える
⑤n数=1を一般論にすり替えない
<ソラ>における適切な話法
⑥人と課題を切り分ける
⑦決めるけない
⑧事実誤認や対話拒絶なら中断する
<アメ>における深層議題の掘り下げ
⑨深層議題を掘り下げる
⑩なぜを繰り返してみる
⑪質問しながら思考を手伝う
<ソラ・アメ>における傾聴で共感を示す
⑫じっくりを言い分を聞く
⑬共感を示す
⑭時には聞き流す
<カサ>における内省の大切
⑮改善案を自分で考えてもらう
⑯沈黙しても、辛抱強く待つ
⑰傾聴する
<カサ>における解決策の助言
⑱受け手が改善案を求めるのを待ってから助言する
⑲求めなければ、改善案を必要か確認してから助言する
⑳今後のアクションを合意する
㉑改善後のイメージを想像してもらう
㉒いくつも指摘しない
■第4章 コーチャビリティを身につける
・コーチャビリティとは
コーチャビリティとは、「他者からの助言に心を開き、時には苦言すらも自己の成長に転化できる能力」のことです。コーチャビリティが高い人は、平たく言えば素直な人です。他者からの助言を、スポンジのように素直に受け止めて自己の養分にし、早いペースで成長し、そして高い成果をあげます。そして高い成果に自信を得て、さらに成長するという好循環の波に乗ることができます。
・ネガティブな反応をコントロールする3つのステップ
ステップ1:心構え
「無知の知」の考え方。自らの無知を自覚することが真の知恵へと至る道の第一歩です。自分は何でも知っている、自分は間違いなどしない、など、傲慢な考えを捨てる。「自分は完璧な人間ではない」と自覚し、謙虚な気持ちで相手に対して心を開く。
ステップ2:傾聴
ギャップフィードバックが始まったら、何はともあれ、最後まで聞き切りましょう。厳しい指摘をされても、脊髄反射的に心を閉ざしてしまわない事。反論や言い訳をしたくなる気持ちを抑えて、相手の話に耳を傾け続ける。
ステップ3:受け止め
フィードバックを受け止め、そして成長につなげる。感謝の念を伝えて、役に立つ部分が何であったかを自分の言葉で説明する。すべてのフィードバックを受け入れる必要はない。相手との信念の違いや事実誤認のなど議論しても不問な場合は聞き流す。
・認知の歪み
代表的な認知の歪みが10種類あると言われている。認知の歪みは、ギャップフィードバックを忌避してしまう人、言い換えれば、コーチャビリティが低い人の思考に当てはまる。
自分がどのような認知の歪みに囚われているのかを考え、そのひずみに屈せずに自問自答で反論することで、歪みを取り除くことができる。
代表的な認知の歪み
- マイナス化志向
物事がうまくいっても「まぐれだ」などネガティブなほうに考えてしまう。 - 心のフィルター
物事の悪い側面ばかりに目が生き、よい側面を見ようとしない - レッテル張り
何か悪いことがあると「自分は何もできないダメ人間だ」と客坦にネガティブな自己否定をしてしまう - ”自分のせい”思考
悪いことが起こると、その原因は様々なのに、すべてが自分のせいだと思い込み自分を責めてしまう。 - 極端な一般化
たまたま、たった一つの悪いことがあると、世の中すべてそうだと思い込んでしまう。 - 過大評価・過小評価
自分の短所や失敗を過大に考える。又は自分の長所や成功を過小評価する。 - 結論の飛躍(心の読みすぎ)
ふとした他人の言動や素振りに過剰に反応してしまう。悲観的な結論に飛躍し、不要な予防措置を取ってしまう。 - ”べき”思考
あらゆる事柄を「すべき」「すべきでない」と思い込む。できないと罪を犯している感覚にさいなまれる。 - 白黒思考
白か黒か。極端に考えてしまう。あいまいな考えや状態を受け入れられない。 - 感情の理由づけ
理性的な根拠なく、感情にかませて結論を出してしまう。そうした結論は正しいと信じ込んでしまう。
■感想
「フィードバックなくして成長なし」。「働きがいのある会社」 6年連続1位を獲得した株式会社コンカーが実践している「コミュニケーション手法」が具体的に書かれている。著者は、本書を「日本におけるフィードバックの概念を変える一冊にしたい」という思いで製作。読了後は、まさにフィードバックに対する意識や解像度が変わる。
「働きがいのある会社」に必要なのは、「高め合う文化」だった。その文化を醸成している一つにフィードバックがある。日本人は、相手の改善点をはっきり伝えるのが苦手で、褒める時も「照れくさい」と思ったり、「おべっかかと思われたりしないか」と躊躇してしまう。
自分自身を高めるために、内省するだけでなく、相手に正しいフォードバックして組織を強くする、また、相手からのフォードバックを正しく受け入れて成長する。組織目線、個人目線の両方に応用できるノウハウが、フレームワークに落とし込まれている。文章を読まなくても、このフレームワークのメモを持っているだけで、あなたとあなたの組織は大きく変わる。1on1ミーティングなど実施する管理職にとって必読の一冊です。
最後まで読んでいただきて、ありがとうございました。
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背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
日々の仕事やライフスタイルのヒントになればうれしいです。