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今回は『やり抜く力 GRIT(グリット)』についてレビューと要約の記事となります。
著者
アンジェラ・ダックワース(Angela Duckworth, Ph.D.)
ペンシルベニア大学心理学教授。近年、アメリカの教育界で重要視されている「グリット」(やり抜く力)研究の第一人者。2013年、マッカーサー賞(別名:天才賞)受賞。教育界、ビジネス界、スポーツ界のみならず、ホワイトハウス、世界銀行、経済協力開発機構(OECD)、米国陸軍士官学校など、幅広い分野のリーダーたちから「やり抜く力」を伸ばすためのアドバイスを求められ、助言や講演を行っている。
ハーバード大学(神経生物学専攻)を優秀な成績で卒業後、教育NPOの設立・運営に携わり、オックスフォード大学で修士号を取得(神経科学)。マッキンゼーの経営コンサルタント職を経て、公立中学校の数学の教員となる。その後、心理科学の知見によって子どもたちのしなやかな成長を手助けすることを志し、ペンシルベニア大学大学院で博士号(心理学)を取得し、心理学者となる。子どもの性格形成に関する科学と実践の発展を使命とするNPO「性格研究所」の創設者・科学部長でもある。
1. 本書の概要
『やり抜く力 GRIT(グリット)』は、心理学者アンジェラ・ダックワースが提唱する「グリット(やり抜く力)」を解き明かした一冊です。本書では、成功するために必要なのは「才能」ではなく、むしろ「情熱」と「粘り強さ」の組み合わせである「やり抜く力」であると強調しています。著者自身の豊富な研究と実例を通じて、どんな分野でも成功するために必要な心構えと具体的な方法を紹介しています。
特に、ビジネス、スポーツ、教育、さらには子育てにおいても活用できる普遍的なメソッドを提供しており、読者が自身や他人の「やり抜く力」をどう育て、伸ばしていくかについて深く考えるきっかけを与えます。この本は、米国教育省が「最も重要なテーマ」として挙げるほど、教育界でも大きな影響を与えています。
2. 本書の要約
『やり抜く力 GRIT(グリット)』は3つのパートに分かれています。
Part 1: 「やり抜く力(グリット)」とは何か?なぜそれが重要なのか?
第1部では、やり抜く力が何であり、なぜ成功の鍵を握るのかについて説明されています。特に、成功者は「才能」ではなく「情熱」と「粘り強さ」を兼ね備えていることが強調されます。例えば、著名なビジネスリーダーやスポーツ選手などの成功者の例が示され、彼らがどのようにして困難を乗り越え、目標に向かって進んだかが紹介されます。ダックワースの「達成の方程式」は、才能 × 努力 = スキル、スキル × 努力 = 成果というものです。つまり、努力が成功において最も重要な要素であると強調されています。
Part 2: 「やり抜く力」を内側から伸ばす
第2部では、やり抜く力を自分自身で育む方法について詳細に説明されています。まず「情熱」と「粘り強さ」をどう育てるかが論じられます。例えば、「興味を結びつける」という概念では、情熱を見つけるために自分が本当に興味を持っていることに対して深く没頭する重要性が説かれます。また、「練習の法則」では、単に努力するだけでなく、効果的な練習が成功の鍵であることが強調されます。「目的を見出す」ことで、目標に対しての情熱が維持され、成功へと導かれることも述べられています。
Part 3: 「やり抜く力」を外側から伸ばす
第3部では、環境や他者の影響がどのようにやり抜く力を育むかが説明されています。特に子育てにおいて、子どものやり抜く力を伸ばすための科学的なアプローチや、効果的な課外活動が紹介されています。例えば、「1年以上継続する活動」と「進歩の経験」が将来の成功に大きな影響を与えるという研究結果が示され、これが学業や仕事における成功にも繋がるとされています。また、周囲のサポートや環境がやり抜く力を強化する重要な役割を果たすことも強調されています。
3. ポイント
- 「スキル」は「努力」によって培われる。
「スキル」は「努力」によって生産的になる。
「達成」を得るには、「努力」が2回影響する。
才能×努力=スキル
スキル×努力=達成
→「2倍の才能」があっても「1/2の努力」では負ける - 「情熱」と「粘り強さ」を持つ人が結果を出す
「情熱」とはひとつのことに専念すること - 必死に努力する以前に、まず楽しむことが大事
「好きにならないと、努力できない」 - 「意義を感じない仕事」を続けることは耐えられない
自分の職業は仕事、キャリア、天職のうちどれか?
ただやるべきことをこなしているか(仕事)
ステップアップするため(キャリア)
自分よりも大きな存在と繋がるための重要な仕事(天職)
- 「生まれながらの才能」よりも「努力」と「学習」を褒める
自分なりに目標をもって、以前はできなかったことをできるようにすることが大事 - 「やり抜く力」を発揮する視点
「人間は何でもやればうまくいく」、「人は成長する」という認識が欠かせない - 最後までやり通す経験から人格が形成される
- 「やり抜く力」が身に付くルール
- 家族全員、ひとつはハードなことに挑戦する
- やめてもよい(ある程度は一生懸命に取り組む)
- 「ハードなこと」は自分で選ぶ
- ひとつのことを2年間は続ける
- 子どもには、「高い期待」と「惜しみない支援」を組み合わせる
4. 感想とレビュー
『やり抜く力 GRIT(グリット)』は、シンプルながら非常に強力なメッセージを持つ本です。「やり抜く力」という言葉自体は、なんとなく耳にすることはあっても、ここまで科学的に裏付けられた形で紹介されたのはこの本が初めてです。著者のアンジェラ・ダックワースは、ハーバード大学で神経生物学を学び、マッキンゼーでコンサルタントを務めた後に、教育者としてのキャリアを築いたという異色の経歴を持つ研究者であり、彼女のバックグラウンドから来る視点がこの本に独特の深みを与えています。
本書で特に印象的だったのは、成功の鍵が「才能」ではなく「努力の継続」であるという点です。これまで、成功には天性の才能が必要だと感じていた部分があったのですが、この本を読むことで「努力次第で成功の可能性を高められる」という力強いメッセージを受け取りました。また、ダックワースの「達成の方程式」は非常に明快で、個人の成長やキャリアアップのための指針としても役立ちます。
特に教育や子育てに関心がある読者にとっては、「賢明な子育て」という章が役立つでしょう。子どもに「やり抜く力」をどう育てるかについて、具体的なアドバイスが詰まっており、親としての視点からも非常に興味深く読み進めることができました。例えば、子どもが興味を持つことを見つけ、それを続けさせることで、彼らの成功の可能性を広げるという考え方には共感しました。
ただ一方で、「やり抜く力」を強調しすぎると、無理に続けることが大切だと誤解される可能性もあります。本書ではその点についても触れられていますが、読者によっては、やり抜くことが何でも正しいと感じてしまうかもしれません。そのため、個々の状況に応じて「やり抜く力」をどう活かすかを考える必要があると感じました。
5. まとめ
『やり抜く力 GRIT(グリット)』は、成功を目指すすべての人にとって必読の書です。「才能」ではなく「情熱」と「粘り強さ」が成功に不可欠であるというメッセージは、多くの人に勇気を与え、実生活で活用できる具体的なアプローチを提供しています。特に、ビジネス、スポーツ、教育、子育てに携わる人々にとって、やり抜く力の重要性とその育て方を学べるこの本は、大きなインスピレーションとなるでしょう。
本書を通じて、自分自身や周りの人のやり抜く力をどのように育て、引き出すかを考えるきっかけを得られます。「才能」ではなく「努力の継続」が成功の鍵であるというシンプルな真実に触れたとき、私たちはもっと前向きに、そして戦略的に未来を見据えることができるでしょう。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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