ご覧頂き誠にありがとうございます。
今回は『幸せな仕事はどこにある』についてレビューと要約の記事となります。
- 著者
- 1. 本書の概要
- 2. 本書の要約
- 第一講:「差別化」――「ささいな良いところ」をプロとしての強みに育てる
- 第二講:「品質」―― 英語、プレゼン、論理思考……「どの力を伸ばせばいいか」わかる
- 第三講:「目立つ①」―― 選ばれるために「思い出される人」になる
- 第四講:「目立つ②」――「最初に覚えられる」ことで揺るがない評価を手に入れる
- 第五講:「伝える」――「実力はあるのにアピールが下手」から卒業する
- 第六講:「マーケティングの全体像」――「自分への期待」をよく知ることで、自分らしく必要とされる
- 第七講:「パーパス」――「個性を見つける」と「誰かの役に立つ」を両立させる
- 第八講:「心を動かす」――「どう言うか」を練り上げて差をつける
- 最終講:「必要とされる」―― 相手の根っこにある「必要」を掘り下げ、それに応える
- 3. 感想とレビュー
- 4. まとめ
著者
井上 大輔(イノウエ ダイスケ)
ソフトバンク株式会社 コンシューマ事業推進統括 プロダクト本部 新規事業開発統括部 統括部長。
ニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディジャパンでマネージャーを歴任。ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズ統括本部 マーケティング本部長、ソフトバンク株式会社 コンシューマ事業統括 コミュニケーション本部 メディア統括 部長を経て現職。WASEDA NEO「早稲田マーケティングカレッジ」並びに「『人生の可能性』を広げるビジネスパーソンのための本づくり講座」講師。
1. 本書の概要
『幸せな仕事はどこにある』は、マーケティングの視点から「幸せな仕事」を見つける方法を探求する小説です。主人公・一郎が、ちょっと変わった先生「ハカセ」と社長のアシスタント「アコさん」から、マーケティングの講義を通じて自己の本当の「やりたいこと」を見つけるまでの成長を描いています。マーケティングの概念を小説形式でわかりやすく学べるため、高校生から大人まで幅広い層に向けた内容となっています。
2. 本書の要約
本書は、マーケティングの考え方を通じて「幸せな仕事」を見つけるプロセスを、物語形式で描いています。主人公・一郎は、企業の平社員としての生活に満足しておらず、自分の「やりたいこと」を見つけたいと思っています。そんな時に出会ったのが、社長のアシスタント・アコさんと、マーケティングの知識を持つ「ハカセ」という人物です。彼らの指導のもと、一郎はマーケティングの基本原則を学び、それを自身のキャリアにどう応用するかを探っていきます。
物語は、各章ごとに異なるマーケティングのテーマを扱っています。たとえば、個性を見つけることの重要性を説く「差別化」、実力をアピールするための「目立つ」技術、自分の役割を見つける「パーパス」など、マーケティングの考え方を活用することで、一郎が次第に自分の仕事に対する考え方を変えていく様子が描かれます。物語の終盤では、一郎が自分の「幸せな仕事」を見つけるために、これまで学んだマーケティングの知識をフルに活用し、具体的なアクションを起こすまでが描かれています。
第一講:「差別化」――「ささいな良いところ」をプロとしての強みに育てる
- 「思い出してもらえない」のは「存在しない」との同じ
- 同質化で同じ土俵に上がらないと、違いを「差別化要素」にできない
- 同質化→差別化の順番は、車などの高額商品でも同じ
- 同質化は時に「非効率」。でも「非合理」ではない
第二講:「品質」―― 英語、プレゼン、論理思考……「どの力を伸ばせばいいか」わかる
- レベルが高ければ満足度が上がり、低ければ下がる「一元的品質要素」
- レベルが高ければ満足度が上がるが、低くても下がらない「魅力的品質要素」
- レベルが高くても満足度は上がらないが、低いと下がる「当たり前品質要素」
- レベルが高いと満足度が下がる不思議な「逆品質要素」
- 品質要素をめぐる間違いは、時代の変化を見誤ることで起こる
- 品質要素を「備えること」と「それを訴求すること」はわけて考える
- 「kanoモデル」は「売り手の理屈」から「買い手の理屈」への転換装置
「失敗あるある」は、あえて言っても仕方がない「無関心品質要素」や「当たり前品質要素」を、広告などで無駄に訴求してしまうことです。
『幸せな仕事はどこにある』
コールセンターがつながりにづらい、など、後発企業が「づらい」「にくい」を頑張って解消したときに、そのネガティブなイメージを振り去りたい、と広告を打ったりします。
しかし、そういう広告にはだいたいあまり効果がありません。顧客にとって、たとえばコールセンターに電話がつながることは「当たり前」だからです。
第三講:「目立つ①」―― 選ばれるために「思い出される人」になる
- 「心理的入手可能性」とは、関連するキーワードに張られたリンクの数と太さ
- 心理的入手可能性が物理的入手可能性を強化し、それがまた心理的入手可能性が強くする
- 広告は新しいキーワードとのリンクを築く道具
第四講:「目立つ②」――「最初に覚えられる」ことで揺るがない評価を手に入れる
- みんなに最初に覚えられたブランドがリーダーになる
- 「最初に参入した」もリーダーシップを約束してくれない
- リーダーになれなかったら「サブカテゴリ―のリーダー」を目指す
日本一高い山は富士山、ですが、日本一登山者が多い山はどこでしょうか?
『幸せな仕事はどこにある』
そうです、高尾山です。
「高い山」というカテゴリーでは遠く1位に及ばない高尾山でも、「登山者が多い山」というカテゴリーで1位を押さえることができれば、ここでも「リーダーシップの法則」が働いてその地位を盤石にすることができます。
日本で2番目に高い山をほとんどの人が知らないように、日本で2番目に登山者が多い山に興味を持つ人はほとんどいない・・・そんな状況が作り出せるのです。
最初にパーセプションを押さえることに失敗したブランドや、参入したカテゴリーにはじめから圧倒的なリーダーがいたブランドはどうすればいいか。
新しいカテゴリーやサブカテゴリーを立ち上げて、そのサブカテゴリーのリーダーを目指せばいいわけです。
第五講:「伝える」――「実力はあるのにアピールが下手」から卒業する
- コミュニケーションのマクロモデル=誤解が生まれるメカニズム
- デコーディング=「選択的歪曲」+「選択的注意」
- ノイズを分析することで、起こりうるデコーディングを予測する
- 受信者の反応を、発信者の改善アクションに変えるのが「フィードバック」
- 広告表現の技術=エンコーディングの技術
第六講:「マーケティングの全体像」――「自分への期待」をよく知ることで、自分らしく必要とされる
- 顧客にとっての「価値」は直感的にはわからない。だから分析して定義する
- せっかく想像した価値も、顧客がそれを知らなければ意味がない
- 「私にとっての価値」=「顧客にとっての価値」とは限らない
- 顧客を想って価値を定義しても、それを作り出し、伝えないとハッピーにできない
第七講:「パーパス」――「個性を見つける」と「誰かの役に立つ」を両立させる
- 魅力的でなければパーパスの存在理由はない
- 魅力的なパーパースは「ベストの自分」と「社会課題」が交わる点にある
- 理念を達成することではなく、そこに向かって進み続けることに意味がある
- 一歩一歩の前進を何十年と続けるために、それを引っ張るパーパスには磁力が必要
第八講:「心を動かす」――「どう言うか」を練り上げて差をつける
- 一対多のコミュニケーションで「ストレート・トーク」は通用しない
- 現代人は誰もがコピーライター
- 多くの人の「心を動かす」のは練り上げられたハウ・トゥー・セイ
- 「特徴」「優位性」「便益」「価値」から話の切り口を選ぶ
- 「顧客」「競合」「自社」の視点で移り変わる市場環境を分析し、切り口を決める
最終講:「必要とされる」―― 相手の根っこにある「必要」を掘り下げ、それに応える
- ニーズ(根っこにある欲求)→ウォンツ(一般名詞)→デマンド(固有名詞)
- ウォンツとデマンドが溢れる現代社会では、ニーズはなかなか顧みられない
- ウォンツをニーズのレベルまで掘り下げて、そこから逆立ちで新しいウォンツを生み出す
3. 感想とレビュー
『幸せな仕事はどこにある』は、マーケティングの知識を活かして自分のキャリアを再構築し、最終的に「幸せな仕事」を見つけるための道筋を示してくれる素晴らしい本です。物語の形式をとっているため、堅苦しいビジネス書とは一線を画し、読者は一郎の成長を通じて自分自身のキャリアに対する考え方を見直す機会を得られます。
特に印象的だったのは、「差別化」と「目立つ」というテーマです。マーケティングでは、自分を他人と差別化することが成功の鍵であるとされていますが、それは単に目立つための技術ではなく、自分自身の本質を理解し、それを他者に伝える方法を見つけることに他なりません。この本では、そのプロセスが具体的に説明されており、非常に実践的な内容となっています。
また、物語の中で一郎が経験する挫折や迷いは、多くの読者が共感できる部分でしょう。彼がマーケティングの考え方を通じて、少しずつ自信を取り戻し、最終的には自分自身の「幸せな仕事」を見つける姿は、読者にとって大きな励みとなります。
一方で、物語形式であるため、専門的なマーケティングの知識を期待している読者にとっては、やや物足りなさを感じる部分もあるかもしれません。しかし、その分、マーケティングの概念が初めての人でも理解しやすい内容になっており、ビジネス初心者から中級者まで幅広い層に向けた一冊と言えるでしょう。
4. まとめ
『幸せな仕事はどこにある』は、マーケティングの考え方を通じて「幸せな仕事」を見つける方法をわかりやすく教えてくれる一冊です。物語の形式を採用しているため、専門的な知識を持たない読者でも理解しやすく、また一郎の成長を追体験することで、自己のキャリアに対する新たな視点を得ることができます。
特に、マーケティングを通じて自己の個性を見つけ、それを他者にどう伝えるかを考えるプロセスは、多くの読者にとって有益なものとなるでしょう。本書を通じて、「幸せな仕事」を見つけるための第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただきまして、
ありがとうございました。
背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
日々の仕事やライフスタイルのヒントになればうれしいです。
X(Twitter)、Threads、instagram、Blueskyもやっているので、もしよかったら覗いてください。