【3分要約・読書メモ】なぜ働いていると本が読めなくなるのか:三宅 香帆 (著)

BOOKS-3分読書メモ-
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今回は『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』についてレビューと要約の記事となります。

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著者

三宅香帆(みやけかほ)
文芸評論家。1994年生まれ。高知県出身。
京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了(専門は萬葉集)。
著作に『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』、『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない―自分の言葉でつくるオタク文章術―』、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』、『人生を狂わす名著50』など多数。


1. 本書の概要

三宅香帆著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は、現代社会で仕事に追われる中で、趣味や読書の時間を持つことが難しくなっている現実に焦点を当てています。本書は、労働と読書の関係を探りつつ、「全身全霊」で働く社会から「半身で働く社会」への転換を提唱しています。仕事だけでなく趣味や個人的な成長にもっと時間を割くべきだというメッセージが込められています。

2. 本書の要約

本書のテーマは、「仕事と趣味(読書)の両立がなぜ難しいのか」という疑問です。三宅さんは、労働と読書の関係を歴史的に追いかけながら、現代において特に日本社会で広がる長時間労働が大きな要因であると指摘しています。しかし、それだけではなく、時代ごとの働き方の変化や社会の価値観の影響も無視できません。

労働と読書の歴史的背景:

明治時代から現代に至るまで、労働と教養、知識の価値がどのように変遷してきたかを詳細に説明。明治時代においては、自己啓発書が読書の主流となり、労働と教養の関係性が深く結びつけられていました。大正・昭和期を経て、戦後日本では「教養」を重視した読書が隆盛を極めますが、徐々にその目的が「成功のための道具」としての側面が強まっていきました。

現代の働き方と読書の関係性:

インターネットが普及し、仕事のスタイルが大きく変化した現代では、求められる情報を即座に入手できるため、読書に時間をかける余裕がなくなりがちです。また、読書は多くの情報や価値観に触れるため、一見すると「ノイズ」と感じられることもありますが、三宅さんはその「ノイズ」がむしろ重要であると主張しています。情報を単純化するのではなく、複雑な文脈を理解するためには、やはり読書が不可欠だという視点を提示しています。

「全身全霊」の働き方:

日本社会で「全身全霊」で仕事に取り組むことが当たり前とされてきた背景があります。週5勤務、長時間労働、さらには残業が求められるこの「全身社会」では、趣味や読書など、仕事以外の時間を確保することが困難です。

「半身社会」の提案:

三宅さんは、これに対抗して「半身で働く社会」を提案します。週4勤務やフレキシブルな働き方を通じて、仕事以外にも充実した時間を過ごすことができる社会を目指すべきだとしています。この「半身」の働き方は、効率を重視し、短い時間で仕事をこなし、余った時間で自己成長や家族との時間を大切にすることを目指します。

読書の意義:

全身で働く社会では、読書のような「ノイズ」と感じられる活動に時間を費やす余裕がなくなりますが、実はその「ノイズ」こそが新しい知識や発見をもたらすのです。三宅さんは、読書が単なる情報収集ではなく、豊かな思考や想像力を育むために必要な行為であることを強調しています。

3. ポイント

  • 日本の労働と読書史
    明治~戦後の社会では立身出世という成功に必要なのは、教養や勉強といった社会に関する知識とされていた。しかし現代において成功に必要なのは、その場で自分に必要な情報を得て、不必要な情報はノイズとして除外し、自分の行動を変革することである。そのため自分にとって不必要な情報も入ってくる読書は、働いていると遠ざけられることになった。

    つまり、1980年代以前に長期労働に従事する人々が本や雑誌を読めていたのは、それが労働や社会的地位上昇の役に立つ「知識」を得る媒体だったからだ。しかし1990年代以降、労働や成功に必要なものは、自分に関係のある情報を探し、それをもとに行動することとされた。

    だが今後、80年代以前のような「労働のために読書が必要な時代」はもうやってこないだろう。それでは、現代において労働に関係しない文化的な時間を楽しむことは、諦めなくてはいけないのか?そうではない?

    本書では、「働きながら本を読める社会」の実現のために、読書で自分に関係のないノイズの文脈を取り入れる余裕を持つことができる「半身」の働き方を提案している。
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 労働と読書の変革
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 日本人の成功間の変遷

  • 「半身社会」こそが新時代である
    私たちは、そろそろ「半身」の働き方を当然とすべきではないか。

    いや、働き方だけではない。様々な分野において、「半身」を取り入れるべきだ。「全身」に傾くのは容易だ。しかし「全身」に傾いている人は、他者にもどこかで「全身」を求めたくなってしまう。「全身」社会に戻るのは楽かもしれない。しかし持続可能ではない。そこに待ち受けるのは、社会の複雑さに耐えられない疲労した身体である。

    「半身」とは、様々な文脈に身を委ねることである。読書が他社の文脈を取り入れることだとすれば、「半身」は読書を続けるコツそのものである。

    仕事や家事や趣味や—――様々な場所に居場所をつくる。さまざまな文脈の中で生きている自分を自覚する。他者の文脈を取り入れる余裕をつくる。その末に、読書という、ノイズ込みの文脈を当頭にに入れる作業を楽しむことができるはずだ。

    私たちは、様々な文脈に生かされている。仕事だけに生かされているわけじゃない。

    読書は、自分とは関係ない他者を知る文脈を増やす手段である。
    だからこそ、「半身」で働こう。

自分から遠く離れた文脈に触れること—――それが読書なのである。

なぜ働いていると本が読めなくなるのか

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 「全身」と「半身」の比較

3. 感想とレビュー

なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は、多くの現代のビジネスパーソンが抱える「仕事に追われ、本を読む時間がない」という問題を鋭く描写しています。三宅さんが提唱する「半身社会」という概念は、新しい働き方を考える上で非常に示唆に富んでおり、特に若い世代にとって共感できる内容です。

本書で特に印象深かったのは、「全身で働く方がむしろ楽だ」という逆説的な指摘です。全身で働くことで、他のことに手をつける余裕がなくなるため、結果として仕事に集中できる一方、半身で働くためには仕事の効率を高め、さらに趣味や他の活動に時間を割かなければならないため、短期的にはより大変だという考え方です。この視点は、仕事と生活のバランスを考えるうえで新たな視点を提供してくれました。

また、読書の価値を「ノイズ」として捉える発想も興味深いです。現代では、効率を求めすぎて必要な情報だけを手に入れようとしがちですが、本来読書とは、自分が予想していなかった知識や感情に触れるための行為です。この「ノイズ」を受け入れることで、豊かな人生を送ることができると感じさせてくれる一冊でした。

4. まとめ

なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は、現代の働き方と趣味の時間の関係を再考させる一冊です。特に「半身社会」という新しい価値観を提案し、働き方改革や自己実現のためのヒントを提供してくれます。読書を生活に取り戻すためには、仕事に全身全霊で取り組むだけではなく、趣味や自己成長のための時間を意識的に確保することが重要です。

この本は、働くことに追われる現代のビジネスパーソンにこそ読んでもらいたい作品であり、読書という豊かな時間を再発見するきっかけになるでしょう。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

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