【3分要約・読書メモ】働くということ 「能力主義」を超えて :勅使川原 真衣 (著)

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今回は『働くということ 「能力主義」を超えて』についてレビューと要約の記事となります。

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著者

勅使川原 真衣 Mai TESHIGAWARA
1982年横浜生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。外資コンサルティングファーム勤務を経て独立。2017年に組織開発を専門とする、おのみず株式会社を設立し、企業はもちろん、病院、学校などの組織開発を支援する。二児の母。2020年から乳がん闘病中。著書に『「能力」の生きづらさをほぐす』(どく社)、『働くということ 「能力主義」を超えて』(集英社)、『職場で傷つく ―リーダーのための「傷つき」から始める組織開発』(大和書房)がある。

1. 本書の概要

働くということ 「能力主義」を超えて』は、著者・勅使川原真衣氏が現代の「働き方」について問いかけた一冊です。企業での組織開発コンサルタントとしての経験を持つ著者は、私たちが抱える「働くこと」への違和感や不安、能力主義や成果主義に対する疑問を社会学的な観点から探求しています。企業での「選ぶ・選ばれる」関係が個人にどのような影響を与えるか、そしてその構造が現代社会でいかに問題を引き起こしているかを深く考察し、読者に新たな働き方のあり方を提案しています。

2. 本書の要約

プロローグ:働くことの意味を再考する

働くことは単なる生計手段でなく、人間関係や社会との関わりを通じて自己実現や成長を追求するプロセスでもあります。しかし、現代社会においては「選ばれる」ことが強調され、能力主義や成果主義が強く押し出されることで、働くことがストレスや不安の源になっています。

序章:「選ばれたい」という欲望と違和感

現代の企業環境では、社員が「選ばれたい」という欲望を抱くよう煽られがちです。能力主義の中で成果を出すことが求められ、その結果、個人は自己責任感を強く持たされる一方で、競争が激化しています。しかし、この欲望は本当に私たちにとって幸せなものなのか、本書ではその点を問います。

「能力」をこの目で見たことのある人はいません。なのに、その存在を大の大人も信じ切っていて、「正確に測る」と称してテストをし、他者のそれと比較、「もっとああしろ、こうしたほうが将来のためだ」と「欠乏」を突きつけたり、「上には上がいるぞ」と発破をかける。際限なく高みを目指すよう、縦方向に「能力」獲得を促せれる。

この状況をこの先も続けていくことが、社会をよくすることだと言えるでしょうか。

働くということ 「能力主義」を超えて

第1章:「選ぶ・選ばれる」という労働の現実

企業や組織内では、個々人の能力に基づき「選ぶ・選ばれる」システムが存在します。特に外資系企業や成果主義的な職場では、このシステムが顕著であり、個人の成果が重要視されます。しかし、著者はこの仕組みが個人の成長や幸福につながるか疑問を呈しています。

個人に「良し悪し」をつけるかの能力というものが備わっているとする大前提と、それを評価・処遇の基軸に据えることを良しとする「能力主義」。
能力主義が社会に最善のルールである、というのは実に人為的な、不自然なゲームのルールなのだ。

ーそもそもの問題は、個人が社会に1人っきりで真空パックされたかのような「人間観」「仕事の成果観」に端を発するのではないか?

皆で持ちつ持たれつ生きているのに、どうして社会の大事な決め事に際して、往々にして個人単位で考えさせられてきたのか?

働くということ 「能力主義」を超えて

第2章:働くことと「関係性」

働くという行為は、単なる作業や成果を出すことにとどまらず、他者との関係を築き、維持することでもあります。人との関わりや信頼関係が生まれることで、仕事の意義が変わり、個人の充実感や達成感に大きな影響を与えます。著者は、こうした関係性が現代の職場で過小評価されていることを指摘します。

私たちのパフォーマンスを左右しているのは自分の能力だけによらない。言動の「癖」や「傾向」は個人個人で違いがあります。その「持ち味」同士が周りの人の味わいや、要求されている仕事の内容とうまく嚙み合った時が「活躍」であり、「優秀」と称される状態なのではないでしょうか。周囲の人たちの状況やタイミングなど、偶然性が多分に影響しているのです。

働くということ 「能力主義」を超えて

たった一人で達成するものの小ささたるや。どんな状態であれ、とりあえず前を向いて、何とか進んでいる。これが仕事の原型、もっと言えば人生の全貌です。「有能」になることや、「自立」すること、人と「競争」することのために、生きているわけではありません。人と人が組み合わさって、助け合うことが生きることなのです。

懸命に仕事に邁進し、人から見れば順風満帆な人とて、個人の能力をどうにかすることが「よりよい社会」の入り口だと信じている。

能力をより多く、より高く身につけた人が「自立」して生きれば、「よりよい社会」になるのでは・・・ないですよね。

働くということ 「能力主義」を超えて

第3章:実践における知見

実際の労働環境では、どのように「選ばれる」プレッシャーを軽減し、自己実現を図ることができるのか。本章では具体的なアプローチとして、個人が自分の働き方や目標をどのように再設定できるかが説明されています。成果主義的な環境にいながらも、いかにして自分のペースで成長するかという方法が提案されています。

「正しさ」や「序列」「優秀」には際限がありません。終わりなき旅なのです。どうせ頑張るなら、今の自分や周りの他者を否定して、「もっともっと」を求めるのではなく、自分自身を舵取りすることに精を出す。そして永遠に終わりなき「正しく人を選ぶ」旅は今日でやめにする。「選ぶ」ということばは、他者に対してではなく、自分に使ってこそ、「働くということ」を豊かにするものだと、肝に銘じたいものです。自戒を込めて。

働くということ 「能力主義」を超えて

一元的な基準ではこぼれてしまう人に、その人に会った役割、在り方を提案できるのが脱・「能力主義」

働くということ 「能力主義」を超えて

「一元的な正しさ」「正攻法」を限定してしまうことが、「働くこと」を苦しませる最たる要因です。

「働くということ」の希望はまさに、ゆく川の流れのごとく、ひとつの姿にとらわれない自己と組織が織りなすものであるということではないでしょうか。「絶対にこっちが正しい」「あっちが間違っている」のような思いが微塵でも頭にかすめたら、それは危うきサインです。

それぞれの人が持つ興味、守備範囲を持ち寄って、総じて幅広な見方を確保すること。これが脱・「能力主義」的「働くこと」のポイントです。それぞれ異なる見方を持つ他者と組み合わせることで、組織全体の視野狭窄にまったをかける。それが多様性であり、包摂であり、エンパワーメントの本来の意味だと私は思います。

働くということ 「能力主義」を超えて

終章:「選ばれし者」の終わり

本書の最後に、著者は「選ばれし者」という概念がもはや過去のものになりつつあると述べます。現代の働き方は、単に成果を出すことだけに焦点を当てるべきではなく、人間関係やコミュニケーションを重視し、社会全体としての貢献を目指すべきだというメッセージが込められています。

「働くということ」に欠かせないのは、「一元的な正しさ」を強制力を持って教え込むことでも、それを体現する「高い能力」「強い個人」でもありません。むしろ、どんなため息にも耳を傾けるような余裕、懐のようなものが、望まれています。相手の口を塞ぐようなことがはびこっていたら、それは「働くということ」がうまくいっていない証です。相手が安心して真意を吐き出すことができる空間を作ったうえで、それにとって意見を交換すること。その際に、変えるべきは相手(他者)ではなく、まず自分のモードを問うてみる。まじめで一生懸命な私たちが引き続き頑張るとしたら、この点です。誰かのモノサシに合わせて、人を「選ぶ」ことでは決してありません。

働くということ 「能力主義」を超えて

ゴールは決めない、「完成」という概念があると、はなから思わない。とはまさに効率やタイパの真逆中の真逆です。未来を決めつけず、今できることを周囲とガチャガチャ試してみる。

働くということ 「能力主義」を超えて

見慣れたもの、予測可能なものにだけ安心感を抱いている場合ではない。見たことのない景色を皆で見るために、ただ存在を紡ぎ合う。そこに、「選抜」する/されるという概念は無用だ。他者や環境と「組み合わせ」て生きること。そう楽ではないのかもしれないが、生きた心地はよっぽどするだろう。他者よりも「抜きんでる」のではなく、いつもそばに、頭の片隅に、外面の奥に・・・どんな形でもいい、他者と「ともに居る」こと。これこそが労働であり、教育であり、社会で生きることだ。汝あっての我。他者に心から感謝と敬意を。

働くということ 「能力主義」を超えて

3. 感想とレビュー

働くということ 「能力主義」を超えて』は現代の働き方に疑問を持つ人々にとって非常に示唆に富む内容となっています。特に能力主義や成果主義に疑問を感じているビジネスパーソンにとって、働くことの本質を再考させられる一冊です。著者の独特の視点は、単なるキャリアアップのためのノウハウ本とは一線を画しており、働くこと自体が何を意味するのかを深く考える機会を提供してくれます。

本書の特に印象的な部分は、働くことが人間関係や他者とのコミュニケーションを通じて成り立つという点です。現代のビジネス環境では、成果や能力が重視されがちですが、それ以上に大切なのは、周囲との協力や信頼関係を築くことであると改めて気づかされます。

また、働くことに対するストレスや不安を軽減するための具体的なアドバイスも魅力的です。成果を出すことに対して過度にプレッシャーを感じるのではなく、働き方そのものに意義を見出すことが重要だというメッセージは、多くの働く人々にとって共感を呼ぶことでしょう。

一方で、能力主義を完全に否定するわけではなく、そのバランスを取ることの重要性も説いている点が現実的です。特に外資系企業や成果主義的な職場にいる人々にとっては、自分自身の働き方やキャリアを見つめ直す機会になるでしょう。

4. まとめ

働くということ 「能力主義」を超えて』は、現代の働き方に悩む人々に向けて書かれた一冊です。能力主義や成果主義が強調される中で、著者は働くことの本質を見つめ直し、自己実現や他者との関係性、そして社会への貢献を考えることの重要性を強調しています。働くことが単なる生計手段ではなく、自己成長や他者との関係性を築くプロセスであるという考え方は、ビジネスパーソンだけでなく、すべての働く人にとって示唆に富む内容です。

働くことに対するプレッシャーや不安を感じている人、成果主義的な環境に疲れている人にとって、この本は新たな働き方の可能性を示唆する一冊となるでしょう。自己実現と社会貢献を両立させる働き方を模索するために、本書をぜひ手に取ってみてください。

最後まで読んでいただきまして、
ありがとうございました。

背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
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