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今回は『築地本願寺の経営学』についてレビューと要約の記事となります。
『築地本願寺の経営学』の要約とレビュー:お寺が変わる、時代が変わる
1. 著者の紹介
安永雄彦氏は、異色の経歴を持つ僧侶です。銀行員、コンサルタントというビジネスの世界で長年活躍した後、50歳で僧籍を取得。2015年からは築地本願寺の宗務長として、寺院経営の大改革を推進しています。ビジネスの視点と仏教の教えを融合させた独自の経営手法は、各方面から注目を集めています。
2. 本書の概要
『築地本願寺の経営学』は、400年の歴史を持つ築地本願寺が、現代社会においてどのように生き残り、人々と繋がりを保っていくべきかを、経営という視点から考察した一冊です。「開かれたお寺」をキーワードに、リブランディング、マーケティング、人材マネジメントなど、具体的な改革事例を紹介しながら、寺院経営だけでなく、あらゆる組織の変革に通じる普遍的な教訓を提示しています。
3. 本書の要約
本書は、大きく分けて以下の内容で構成されています。
- 第1章 新たな時代に変わらない価値をつくる――築地本願寺のサバイバル戦略: 寺院を取り巻く環境の変化、そして変化に対応することの重要性を解説。伝統を守りながらも、時代に合わせた変革が必要であることを示しています。
- 第2章 開かれたお寺の「顧客創造」――築地本願寺のリブランディング: 築地本願寺が取り組んだリブランディング戦略を紹介。カフェの開設、情報発信の強化など、人々との接点を増やすための具体的な施策を解説。
- 第3章 お寺は「人生のコンシェルジュ」――顧客とつながるマーケティング: 人々の人生に寄り添う「人生のコンシェルジュ」というコンセプトを提唱。相談窓口の設置、ライフイベントに合わせたサービス提供など、顧客との繋がりを深めるためのマーケティング戦略を解説。
- 第4章 目標を共有できる仕組みをつくる――人材マネジメントとリーダーシップ: 組織改革における人材マネジメントの重要性を解説。目標共有のための仕組みづくり、人材育成、リーダーシップなどについて論じています。
- 第5章 なぜ働くのか、なぜ生きるのか――ビジネスマン僧侶のキャリアのつくり方、考え方: 著者自身のキャリアを振り返りながら、働く意味、生きる意味について考察。ビジネスと仏教の融合という視点から、独自のキャリア論を展開。
- 終章 なぜ「新たな時代」に仏教が必要なのか――死を恐れず、「一日一生」を生きる: 現代社会における仏教の役割を改めて問い直す。死生観、生き方、心のあり方など、現代人が抱える課題に対する仏教的な視点からのメッセージを提示。
特に重要なポイント:
- 顧客創造: 従来の「檀家制度」に依存するのではなく、現代社会に合わせた新しい顧客との繋がり方を模索。
- リブランディング: 古いイメージを刷新し、誰もが気軽に訪れることができる「開かれたお寺」を目指す。
- 人生のコンシェルジュ: 人々の人生に寄り添い、様々な相談に応じることで、心の支えとなる存在を目指す。
- ヴァーチャル・テンプル構想: オンライン法要、情報発信などを通して、場所や時間にとらわれずに人々が仏教に触れる機会を提供する。
- イノベーション: 伝統を守りつつ、時代の変化に合わせて常に新しいことに挑戦する。
4. ココだけは押さえたい一文
「変わりゆく時代の中で仏教の教えという変わらない価値を伝えるには、その方法や手段も時代に合わせて変化する必要があり、さらには自らが変化することを恐れてはなりません。」
この一文は、本書のメッセージを力強く象徴しています。伝統を守ることは大切ですが、変化を恐れていては、その価値を伝えることはできません。時代に合わせて変化していくことこそ、伝統を未来に繋げる唯一の方法なのです。
「一日一生」で毎日を生きる
今日一日を自分の一生と思って、充実させて生きていく。それが、満足できる生を送る唯一の条件、すなわち、満足できる死を迎える唯一の方法なのです。
「一日一生」で毎日生きるための具体策としては、病を得て、医師に「あなたは余命5年ですよ」と宣言されたとイメージして生きていく。
5. 感想とレビュー
本書は、単なる寺院の経営改善の話にとどまらず、現代社会における組織のあり方、リーダーシップ、そして個人の生き方まで、深く考えさせられる内容です。特に、従来の常識にとらわれず、変化を恐れずに挑戦することの大切さを教えてくれます。
固定概念を覆す革新的な視点
本書を読んで最も印象的だったのは、著者・安永氏の固定概念を覆す革新的な視点です。寺院という伝統的な組織において、ビジネスの手法を取り入れることは、従来の考え方からすれば異端とも言えるでしょう。しかし、安永氏は、時代の変化に合わせて変わることを恐れず、果敢に改革を進めていきます。その結果、築地本願寺は多くの人々にとって身近な存在となり、新たな価値を生み出すことに成功しました。この事実は、あらゆる組織において、変化への対応がいかに重要であるかを物語っています。
「顧客創造」というキーワード
本書で繰り返し語られる「顧客創造」というキーワードは、現代のビジネスにおいて非常に重要な概念です。従来の寺院は、檀家制度という既存の顧客に支えられていましたが、安永氏は、現代社会に合わせた新しい顧客との繋がり方を模索しました。カフェの開設、イベントの開催、オンラインでの情報発信など、様々な取り組みを通して、今まで寺院に縁のなかった人々との接点を増やし、新たな顧客層を開拓しました。この「顧客創造」の視点は、寺院だけでなく、あらゆるビジネスにおいて重要な示唆を与えてくれます。
「人生のコンシェルジュ」という役割
築地本願寺が目指す「人生のコンシェルジュ」という役割も、非常に興味深いコンセプトです。寺院は、単に葬儀や法要を行う場所ではなく、人々の人生に寄り添い、様々な相談に応じることで、心の支えとなる存在を目指しています。結婚相談所、終活支援、心の悩み相談など、ライフステージに合わせたサービスを提供することで、人々との繋がりを深めています。この「人生のコンシェルジュ」という役割は、現代社会において、寺院が果たすべき新しい役割を示していると言えるでしょう。
リーダーシップと人材マネジメント
組織改革を成功させるためには、リーダーシップと人材マネジメントが不可欠です。安永氏は、自身の経験を通して、リーダーシップの重要性、目標共有のための仕組みづくり、人材育成などについて語っています。特に、従来の寺院の組織文化を変革し、職員の意識改革を促した点は、特筆すべき点です。変化を恐れず、新しいことに挑戦する文化を組織に根付かせることが、組織改革を成功に導く鍵となることを教えてくれます。
ビジネスと仏教の融合
本書は、ビジネスと仏教という、一見異質なものが融合することで、新たな価値を生み出す可能性を示しています。安永氏は、ビジネスで培った経験と、僧侶としての視点を融合させ、独自の経営手法を確立しました。この融合は、現代社会において、ビジネスと宗教がどのように関わっていくべきかという問いに対する、一つの答えと言えるでしょう。
本書の良かった点:
- 具体的な改革事例: カフェ「Tsumugi」の開設、オンライン法要の実施、銀座サロンの開設など、具体的な改革事例が豊富に紹介されており、読者は具体的なイメージを持ちながら読み進めることができます。
- データに基づいた説明: 参拝者数の増加、会員数の増加など、データに基づいた説明も多く、改革の効果が客観的に理解できます。
- 著者の視点: 著者自身の言葉で改革の過程や想いが語られており、臨場感を持って読むことができます。
誰におすすめか:
- 寺院、神社関係者: 寺院経営のヒントを探している方、伝統と革新のバランスに悩んでいる方に特におすすめです。
- 企業の経営者、マネジメント層: 組織改革、ブランディング、マーケティングに関心のある方にとって、多くの示唆を与えてくれるでしょう。
- NPO、公益法人関係者: 社会貢献活動、組織運営に関心のある方にもおすすめです。
- 地方創生に関わる方: 地域の活性化、観光振興のヒントを探している方にも役立つでしょう。
- 生き方、キャリアについて考えている方: 変化の時代における生き方、働く意味について深く考えさせられるでしょう。
- 宗教、文化に関心のある方: 現代社会における宗教の役割、伝統文化の継承について新たな視点を得られるでしょう。
6. まとめ
『築地本願寺の経営学』は、変化の激しい現代社会において、伝統ある組織がどのように生き残っていくべきか、そのヒントを与えてくれる貴重な一冊です。寺院経営という枠を超え、あらゆる組織の変革、そして個人の生き方にも示唆を与える内容となっています。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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