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今回は『マーケティングの新しい基本』についてレビューと要約の記事となります。
著者
奥谷孝司(おくたに・たかし)
株式会社顧客時間共同CEO取締役。オイシックス・ラ・大地株式会社専門役員COCO(Chief Omni-Channel Officer)。株式会社イー・ロジット社外取締役。株式会社Engagement Commerce Lab.代表取締役。1997年良品計画入社。衣服雑貨のカテゴリーマネージャーとして定番商品の「足なり直角靴下」の開発し、WEB事業部長として「MUJI passport」のプロデュースなどを担当。2015年10月オイシックス株式会社(当時)入社。2018年9月株式会社顧客時間を設立。共同CEO取締役に就任。Head of Marketingとして、顧客時間に参画する多様なスペシャリストと共に、数多くの業界・企業におけるDXプロジェクト・事業開発プロジェクトのサポートを行っている。2021年3月一橋大学大学院経営管理科博士後期課程単位取得満期退学。著書に『世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略』(共著、日経BP)、『オムニチャネルと顧客戦略の現在』(共著、千倉書房)がある。
岩井琢磨(いわい・たくま)
株式会社顧客時間共同CEO代表取締役。1993年博報堂DYグループに入社。2012年コーポレート・コミュニケーション・センターのセンター長。Chief Project Managerとして、製造業・流通サービス業界を中心とした部署横断型の事業変革プロジェクト、企業ブランド構築プロジェクトの設計・推進を数多く手がける。2018年9月株式会社顧客時間を設立。共同CEO代表取締役に就任。Head of Managementとして、顧客時間に参画する多様なスペシャリストと共に、数多くの業界・企業におけるDXプロジェクト・事業開発プロジェクトのサポートを行っている。早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了(MBA)。日本マーケティング学会理事。著書に『世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略』(共著、日経BP)、『オムニチャネルと顧客戦略の現在』(共著、千倉書房)、『物語戦略』(共著、日経BP)、『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』(共著、日本経済新聞出版)がある。
1. 本書の概要
『マーケティングの新しい基本』は、デジタル時代におけるマーケティング戦略を根本から見直し、現代のマーケティングに適応するための新しいフレームワークを提唱する本です。著者である奥谷孝司氏と岩井琢磨氏は、従来の4P(プロダクト、プライス、プロモーション、プレイス)をデジタル革命に対応させるために進化させ、デジタルと顧客のつながりを重視した新しいマーケティングの基本を示します。本書は、デジタルシフトや顧客とのエンゲージメントの重要性に焦点を当て、事例や理論を通じてその実践方法を詳しく解説しています。
特に、カスタマー・バリュー・ピラミッドやエンゲージメント4Pといった新しいフレームワークを導入し、デジタル時代に企業が顧客とどうつながり、価値を提供するかを深く掘り下げています。事例としては、ルルレモンやペロトン、アマゾンフレッシュ、YAMAPといった企業が紹介されており、それぞれがどのようにデジタル技術を活用してビジネスモデルを進化させたかが具体的に解説されています。
2. 本書の要約
本書は、デジタル革命がマーケティングの基本そのものを変えつつあるという視点からスタートします。顧客の生活がデジタル化する中で、従来のマーケティング4Pは限界に達しており、今求められているのは「顧客とのつながり」や「データの活用」に基づいた新しいアプローチです。本書はそのアプローチとして、「カスタマー・バリュー・ピラミッド」と「エンゲージメント4P」を提唱し、これを基に企業がどのように顧客との関係を築き、持続可能なビジネスモデルを作り上げるかを解説します。
1. 顧客行動の変化と企業の対応
現代の顧客は、デジタル技術の普及により、いつでもどこでも情報を入手し、オンラインとオフラインの境界が曖昧になっています。これに対して企業は「顧客とのつながり」を最重要視する必要があり、マーケティングの基本戦略もデジタルシフトを前提に進化させなければならないと強調されています。
2. カスタマーバリューの変化
顧客が求める価値は、単に商品の機能や価格だけではなく、ブランドとのつながりやエクスペリエンス(体験)にまで拡張しています。著者は「カスタマー・バリュー・ピラミッド」を提唱し、顧客の価値を基礎的価値、機能的価値、情緒的価値の3層に分類し、これらを総合的に提供することの重要性を説いています。顧客が得る価値の頂点に立つものは、ブランドや商品を通じて得られる「感情的なつながり」だと述べられています。
3. エンゲージメント4P
次に紹介されるのは、従来の4P(プロダクト、プライス、プロモーション、プレイス)に代わる「エンゲージメント4P」です。これは、顧客とのつながりを深めるために重要な4つの要素であり、現代のマーケティングの基盤を形成しています。これにより、企業は単なる売り手から、顧客と長期的な関係を築く「パートナー」に進化する必要があることが示されています。
4. デジタル時代に成功する企業の事例
本書では、デジタル時代に成功を収めている企業の具体的な事例も豊富に紹介されています。例えば、フィットネス業界の「ペロトン」は、顧客との直接的なつながりを重視し、独自のデジタルプラットフォームを活用して圧倒的な成長を遂げました。また、カナダのアスレジャーブランド「ルルレモン」も、デジタルを活用して時価総額で大手スポーツブランドを追い抜くほどの成功を収めています。これらの事例から、デジタルを中心としたエンゲージメントがいかに企業の競争力を高めるかが理解できます。
5. デジタルシフトの次にくるもの
デジタルシフトが進む中で、今後のマーケティング戦略は「OMO(オンラインとオフラインの融合)」が鍵となります。本書では、ウォルマートやアマゾンフレッシュが行っているように、オンラインとオフラインの顧客体験をシームレスに結びつける試みが次の大きな潮流であると解説されています。顧客データの活用が進むことで、企業はよりパーソナライズされた体験を提供できるようになります。
3. ポイント
- 5年後に今と同じビジネスを行っている企業は消える
- デジタル時代の前提「デジタルで顧客が企業と繋がっていること」
顧客が自社とつながり続けたいと思う「顧客価値」とは何か
その「顧客価値」を実現するために、我々は具体的にどのような提案行動を行うのか
その「顧客価値」は他社には模倣できないものなのか - デジタルを前提としたビジネスモデルにおいて、
最も重要なことはLTV(顧客生涯価値)の向上であり、
そのためには「プロダクトすら顧客に応じて可変的なものになる」 - エンゲージメント4P
- 顧客にとっての「つながる価値」を明確に持っていること(エンゲージメント)
- デジタルを前提とした顧客接点を持っていること(プレイス)
- 顧客を認識するデジタルIDとデータ&システムを持っていること(データシステム)
- 顧客に最適かつ直接的な提案を行うCRMを行っていること(CRMプログラム)
- 事業目的「なぜ事業を行うのか」=企業の「パーパス」
顧客は「商品サービスそのものよりも、ブランドが果たす「社会的問題の解決」で購入を判断する」 - マイクロソフトのマーケティング活動「Marketing with Purpose」
- 人々は事実と透明性を求めている
- 人々は企業に対して平等な体験提供を求めており、それは最低限のコンプライアンス重視を意味するものではない
- 人々は態度で示すブランドを求めているのであって、ミスを恐れた安全運転に務めるブランドを求めていない
- 人々は社会や人生に影響を与える(貢献する)商品を求めている
- 人々は共創を求めているのであって、囲まれたいのではない
4. 感想とレビュー
『マーケティングの新しい基本』を読んで感じたのは、デジタル時代におけるマーケティングの変革が非常に具体的かつ実践的にまとめられているということです。デジタル化が進む中、従来のマーケティングの枠組みでは顧客とのつながりを保つことが難しくなりつつありますが、本書はその変化に対応するための具体的なフレームワークを提示しています。
特に印象に残ったのは、「カスタマー・バリュー・ピラミッド」と「エンゲージメント4P」です。従来のマーケティング4Pはプロダクトや価格、場所など、物理的な要素に依存していたのに対し、新しい4Pでは、顧客とのエンゲージメントを中心に据えている点が現代のマーケティングに非常に適していると感じました。また、紹介されている事例が実際の企業の成功例に基づいているため、具体的に自社のマーケティング戦略にどう適用できるかがイメージしやすかったです。
一方で、マーケティングに関して初心者には少し難解に感じる部分もあるかもしれません。デジタルやデータの活用に対する基礎知識がないと、すべてを理解するのに時間がかかる可能性があります。しかし、マーケティングやデジタル戦略に関心がある人にとっては必読の一冊と言えるでしょう。
5. まとめ
『マーケティングの新しい基本』は、デジタル時代におけるマーケティング戦略を根本から見直すための新しい視点を提供してくれる一冊です。カスタマーバリュー・ピラミッドやエンゲージメント4Pといった新しいフレームワークを活用することで、企業は顧客とのつながりを深め、持続可能なビジネスを構築することができるでしょう。
デジタル技術がますます進化し、顧客とのエンゲージメントが重要視される今、本書は企業が未来に向けて成長し続けるための指針となる一冊です。マーケティング担当者だけでなく、ビジネス全体をデジタル化しようと考えている経営者やリーダーにとっても、非常に参考になる内容が詰まっています。
最後まで読んでいただきまして、ありがと
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背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
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