【3分要約・読書メモ】「指示通り」ができない人たちー職場の「なぜ?」を解き明かす:榎本博明 (著)

BOOKS-3分読書メモ-
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今回は『指示通り」ができない人たち』についてレビューと要約の記事となります。

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『「指示通り」ができない人たち』要約とレビュー:職場の「なぜ?」を解き明かす

1. 著者の紹介

榎本博明氏は、心理学博士であり、長年にわたり企業の人材育成や組織開発に携わってきた専門家です。豊富な臨床経験と心理学の知見を基に、職場における人間関係やコミュニケーションの問題、特に「指示通りに動けない」人材に焦点を当てた本書を執筆しました。著書多数で、心理学を分かりやすく解説することに定評があります。

2. 本書の概要

指示通り」ができない人たち』は、職場で見られる「なぜか指示通りに動けない」「周囲の期待に応えられない」人材の行動パターンを分析し、その背景にある心理メカニズムを解説した書籍です。認知能力、メタ認知能力、非認知能力という3つの視点から、具体的な事例を交えながら問題点を浮き彫りにし、改善策を提示しています。管理職だけでなく、部下を持つすべての人、そして自分自身の行動を振り返りたい人にとっても有益な一冊です。

3. 本書の要約

本書は、職場における「指示通りにできない」人材を、3つの能力不足という視点から分析しています。

プロローグ:管理職の困惑

プロローグでは、管理職が抱える具体的な悩みが紹介されています。

  • 有能だが自信がない人
  • 意欲はあるが成果が出ない人
  • 同僚との関係は良好だが顧客とのトラブルが多い人
  • 勉強熱心だが仕事に必要な知識が身につかない人
  • 何度教えても同じミスを繰り返す人
  • 約束を忘れたり勘違いしたりする人
  • 同僚と折り合いが悪い人
  • 顧客の要求を理解できない人
  • 教えたことを覚えていない、または教わっていないと言う人
  • 以前できたことが突然できなくなる人
  • 適切な判断ができない人
  • 根拠のない説明をする人
  • 注意やアドバイスでやる気をなくす人
  • アドバイスを説教と受け取る人
  • 人と接するのが苦手な人

これらの事例から、著者は以下の5つの「勘違い」を指摘しています。

  1. 人は誰でも理屈を理解すると思っている
  2. 人は誰でも理屈で判断すると思っている
  3. 頭の中の言葉や知識が違えば思考も違うことを踏まえていない
  4. 以前の経験や話したことを覚えているのを前提としている
  5. 誰もが根拠があってものを言ったり行動したりしていると思い込んでいる

第1章:認知能力の改善が必要な人

認知能力とは、情報を理解し、処理し、記憶する能力です。この能力が不足していると、以下のような問題が起こります。

  • コミュニケーション・ギャップが酷い
  • 取引先や顧客とのトラブルが目立つ
  • すぐに記憶がなくなる
  • パニックに弱い
  • 定型文がないと何も言えない
  • 「指示通り」というのが意外と難しい
  • 話が回りくどく、何を言いたいのかわからない
  • 理屈が通じない

第2章:メタ認知能力の改善が必要な人

メタ認知能力とは、自分の認知プロセスを客観的に認識し、制御する能力です。この能力が不足していると、以下のような問題が起こります。

  • 意欲ばかりが空回り
  • アドバイスを意地悪としか受け止めない
  • 周囲は手を焼いているのに、仕事ができるつもりでいる
  • 同じようなミスを繰り返す
  • 自分は仕事ができないと嘆くばかりで改善がない
  • 職場の雰囲気が悪いからやる気になれないという
  • 勉強はしているのだが能率が悪い
  • 非常に主観的で判断を誤る

第3章:非認知能力の改善が必要な人

非認知能力とは、目標達成意欲、感情コントロール、コミュニケーション能力など、認知能力以外の能力です。この能力が不足していると、以下のような問題が起こります。

  • 思うような成果が出ないと落ち込み、やる気をなくす
  • すぐ感情的になり揉め事が多い
  • 評価してもらえないとすぐヤケになる
  • 注意されるとすぐに反発する
  • コミュ力が高いと思ったが、気持ちの交流ができない
  • 仕事そのものの能力は高いが、人と接するのが苦手

第4章:能力改善の3つの柱

最終章では、これらの能力を改善するための具体的な方法が提示されています。

  • 認知能力を鍛える: 情報整理能力、記憶力、理解力などを高めるトレーニング。
  • メタ認知能力を鍛える: 自己評価能力、客観的視点、学習方法の改善などを促す方法。
  • 非認知能力を鍛える: 目標設定、感情コントロール、コミュニケーションスキル向上などを支援する方法。

4. ココだけは押さえたい一文

「まず第1に、人はだれでも理屈を理解すると思っている、つまり論理的に物事を考えることを前提としているが、それは違う。単に理屈を理解できない人もいるということだ。頭の中が論理的に整理できていない人もいるのだ。」

指示通り」ができない人たち

この一文は、本書の重要なメッセージを凝縮しています。相手が自分の意図を理解できない原因は、単なる誤解だけでなく、認知能力の不足による場合もあるという視点は、コミュニケーションにおける重要な気づきを与えてくれます。

「能力が低いから、自分の実力のなさに気づく能力が低い」というよりも、「メタ認知ができていないから、自分の現状がわからず、改善のための行動を取ることができない」と再解釈する

指示通り」ができない人たち

自分の情けなさをやたら嘆く人の場合、嘆くことで気分をスッキリさせているということがあり得る。
人に嘆くことで手っ取り早く楽になれる。でも、いくら気分がラクになっても、それでは何も改善されない。嘆くことで一時的に気分がラクになっても、自分が仕事ができないという状況は何も改善されていないため、またすぐに気分が滅入ってくる。

指示通り」ができない人たち

私たちは、自分を気分良くさせてくれる情報、自分の判断を正当化してくれる情報、つまり自分にとって都合のいい情報にばかり目を向け、都合の悪い情報は極力無視しようとする認知のクセを持っている。

指示通り」ができない人たち

日本においては人間関係要因がモチベーションに及ぼす影響は非常に大きい。日米比較研究において、アメリカ人が自分自身のために頑張るのに対して、日本人は人のために頑張る、つまり人の期待を裏切らないように頑張るといった傾向が強くみられることがわかっている。

指示通り」ができない人たち

聞き上手を中心とした対話上手な人の特徴
・相手の話を真剣に聞く
・一方的にしゃべらない
・相手に関心を持つ
・押しつけがましいことを言わない
・相手の気持ちに共感する
・相手が話しにくいことはしつこく聞かない
・適度に話を切り上げることができる

指示通り」ができない人たち

5. 感想とレビュー

指示通り」ができない人たち』は、職場におけるコミュニケーションの課題に直面しているすべての人にとって、必読の書と言えるでしょう。単に「できない人」を批判するのではなく、その背景にある認知、メタ認知、非認知能力の不足という視点から分析することで、建設的な解決策を探る姿勢に好感が持てます。事例を通して、読者は「なぜ?」という疑問への答えを見つけ、より良いコミュニケーションとチームワークを築くヒントを得られるでしょう。

良かった点:

  • 具体的な事例に基づいた解説: 抽象的な理論だけでなく、具体的な事例が豊富に紹介されているため、読者は自分の職場や過去の経験と照らし合わせながら理解を深めることができます。特に、プロローグで紹介される管理職の困惑は、多くの人が共感できるのではないでしょうか。「以前できたことが突然できなくなる」「言った言わないの食い違いが頻繁に起こる」など、誰もが一度は経験したことがあるような事例を通して、問題の本質が浮き彫りになります。
  • 心理学の知見に基づいた分析: 心理学博士である著者ならではの、専門的な視点からの分析は、問題の本質を深く理解するのに役立ちます。認知能力、メタ認知能力、非認知能力という3つの視点は、問題を多角的に捉えるための有効なフレームワークを提供してくれます。それぞれの能力が具体的にどのような行動に影響を与えているのかが明確に示されているため、読者は自身の課題や周囲の人の特性を客観的に分析することができます。
  • 実践的な改善策の提示: 問題点を指摘するだけでなく、具体的な改善策が提示されている点も本書の大きな魅力です。各能力を鍛えるための方法が具体的に解説されており、読者はすぐに実践に移すことができます。例えば、認知能力を高めるための情報整理術や記憶術、メタ認知能力を高めるための自己評価シートの活用、非認知能力を高めるためのコミュニケーションスキル向上のための具体的なアドバイスなどが紹介されています。
  • 管理職だけでなく、一般社員にも役立つ内容: 管理職向けの内容と思われがちですが、部下を持つすべての人、そして自分自身の行動を振り返りたい人にとっても有益です。自分自身の認知特性を理解し、改善することで、コミュニケーション能力や仕事のパフォーマンスを高めることができるでしょう。また、同僚や部下の行動を理解することで、より円滑な人間関係を築くことができます。
  • 平易な文章で読みやすい: 専門用語を多用せず、平易な言葉で書かれているため、心理学の知識がない人でも無理なく読み進めることができます。著者と悩める上司の会話形式で話が進んでいくため、飽きることなく読み進めることができます。

特に共感した点:

  • 「理屈が通じない」という経験への解説: 日常生活や職場で、「なぜこの人はこんな簡単なことが理解できないのだろう?」と感じた経験は誰にでもあると思います。本書では、その原因が単なる理解不足だけでなく、認知能力の不足による場合もあると指摘しており、非常に納得しました。この視点を持つことで、相手に対するイライラや不満が軽減され、より建設的なコミュニケーションを取ろうという気持ちになれます。
  • メタ認知の重要性: 自分の思考や行動を客観的に見つめ直すメタ認知能力の重要性は、多くの人が認識していると思いますが、本書ではその具体的な鍛え方が解説されており、非常に参考になりました。自己評価の具体的な方法や、客観的な視点を養うためのトレーニングなどが紹介されており、自身の成長に役立てることができます。
  • 非認知能力の重要性: 従来の能力評価では重視されてこなかった、目標達成意欲や感情コントロールといった非認知能力の重要性を改めて認識しました。特に、感情の起伏が激しい人や、評価に過敏な人への対応策は、職場における人間関係の改善に役立つでしょう。感情をコントロールするための具体的な方法や、他者との良好な関係を築くためのコミュニケーションスキルなどが紹介されています。

6. まとめ

指示通り」ができない人たち』は、職場におけるコミュニケーションの課題に直面しているすべての人にとって、必読の書と言えるでしょう。単に「できない人」を批判するのではなく、その背景にある認知、メタ認知、非認知能力の不足という視点から分析することで、建設的な解決策を探る姿勢に好感が持てます。事例を通して、読者は「なぜ?」という疑問への答えを見つけ、より良いコミュニケーションとチームワークを築くヒントを得られるでしょう。

本書は、まるで「職場の人間関係の取扱説明書」のような存在です。著者の長年の経験と知識が凝縮された内容は、読者にとって実践的な指針となるでしょう。単に技術を学ぶだけでなく、コミュニケーションを通して人間関係をより良くしたいと願うすべての人にとって、本書は必読の書と言えるでしょう。この本を手に取り、一つ一つ実践していくことで、あなたのコミュニケーション能力は飛躍的に向上し、職場環境はより円滑で生産性の高いものになるはずです。特に、管理職の方は、部下育成のヒントとして、また、一般社員の方は、自己理解と他者理解を深めるためのツールとして、本書を活用することをおすすめします。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
日々の仕事やライフスタイルのヒントになればうれしいです。

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