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今回は「なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか 」についての記事となります。
■著者
古屋星斗
リクルートワークス研究所 主任研究員。
2011年一橋大学大学院社会学研究科修了。同年、経済産業省に入省。産業人材政策、投資ファンド創設、福島の復興・避難者の生活支援、政府成長戦略策定に携わる。17年より現職。労働供給制約をテーマとする2040年の未来予測や、次世代社会のキャリア形成を研究する。一般社団法人スクール・トゥ・ワーク代表理事。法政大学キャリアデザイン学部兼任教員。著書に『ゆるい職場――若者の不安の知られざる理由』(中央公論新社)。
■第1章 「Z世代」は存在しない
Z世代の価値観は「二極化」が著しい。
「最近の若者はこうだから、こう育成しよう」
というアプローチは、もはや効果が乏しい。
「最近の若者は・・・」式の一本槍なロジックでは、現代の若者の価値観を整理することは難しい。この若者は、Z世代だからこうだ、という理解ではなく、その人自体への理解が求められる。
変わっているのは、「行動」や「経験」。
上の世代とZ世代の本質的な違いは、環境が変わったことにより行動・経験が変わったことに起因する。
Z世代はこうだからこう育成しよう、という平均的アプローチは効果が乏しくなってきている。
多様化、多極化する若手に対してどう向き合うのか。それは、若手育成の問題というよりは、現代の自社における職業経験が乏しい一人ひとりの社会人をどう育てるのか、という問題に過ぎないのかもしれない。
■第2章 「ゆるい職場」と若手の不安
「職場がゆるくて辞めたい」という若手が少なからず存在している。
「職場がきつくて辞めたい」という若手ももちろん今も存在しているが、同時に、「職場がゆるくて辞めたい」という若手が存在している。
若手にいろいろな考え方があることを前提としながら、彼ら彼女らを取り巻く環境に注目した際に、近年の職業社会や職場環境の変化の大きさに気付かざるを得ない。選択の回数が増える職業人生、法改正による「ゆるい職場」の登場、こうした環境変化の結果として、若者の不安と焦り、そしてある種の横並びで「成長しなければいけないのではないか」「成長してスキルや経験を獲得するのが安定だ」という機運が高まっている。
■第3章 若手は会社をこう見ている
月100時間の残業をしていた若手時代を持つ上司、「会社の花見の場所取りが最初の仕事だったんだよ昔は」という先輩の話を聞いて、若手にとってロールモデルになるわけない。マインドの問題ではなく、もはやルール的に、法律的にそのキャリア形成が不可能なのだから、モデルにしようがない。
その前提で上司や先輩とどう接点を持つかに注目する。
「何を言ってもわかりあえない」という若手もいれば、「あ、意外と・・・」という若手もいる。「あ、意外と上司も迷っているんだ」といった気づきが起こっている時、背中を見て育つ方式のロールモデルとしての上司ー若手の関係から、また違う関係が形成されるるある。
■第4章 心理的安全性だけでは活躍できない
若手の就労意欲を継続させるためには、
心理的安全性(ありのままを受容する)だけでは不十分。
キャリア安全性(何者かになることを促す)が必要になる。
心理的安全性が「ありのまま」であることを受容し、キャリア安全性が「なにもの」かになることを促すファクターである。
現代の日本においては、心理的安全性が高いだけの職場ではエンゲージメントが最大になっていないことが明らかになっている。現代の若者が活躍する職場における”ファクターX”として「職場のキャリア安全性」が存在している。
「職場のキャリア安全性」とは、「その職場で働き続けた場合に、自分がキャリアの選択権を保持し続けられるという認識」
■第5章 若手を育成できる管理職、できない管理職
話す内容は何でもよく、
コミュニケーションの頻度が高い上司の方が、
育成成功の実感を持っている。
若手を育成できるマネージャー9つのポイント
- 年齢層が比較的若い
- 若手とのコミュニケーション頻度が(その内容を問わず)一定以上ある
- 配属・移動の前後で、管理職が事前に希望を聞くことと、決定後の個別の場でコミュニケーションをする
- 若手へのoff-JTなどの教育訓練機会が充実(基準として、off-JT年間平均10時間以上)した企業に所属している
- 社員同士の職場を超えた「横断的なつながりを生み出す」制度がある企業に所属している(「日常の越境場」がある組織)
- 自らも職場の外の越境経験をしている
- 若手に対する「呼び方」は無関係
- 入社したての若手にも多くの(社会的)経験を求め、また期待をしている
- フォードバックの形式よりも、指導内容の明確性や内容の充実に注力している
■第6章 「ゆるい職場」時代の育て方改革 5つのヒント
今の労働環境では、
若手が3年我慢して職場の仕事をこなしても
成長に十分な経験は得られない。
育て方を大きく転換する必要がある。
現代の若手育成問題の本質は、「質的負荷の高い仕事を、いかに量的負荷や関係負荷なく与えるか」という言葉に集約される。
上司・マネージャーが自分の育てられてきたやり方で、部下・若者を育てることはできない。
「もっと今の仕事に打ち込め」「3年は我慢」という”石の上に3年いれば暖まる”言説はいまだに語られることがあるが、これは働き方改革以前の労働社会で企業から自動的に負荷の高い仕事が提供されていた状況が前提になると考えられる。
働き方改革以降の職場においては、待っていても十分な経験が自動的に提供されないわけだから、”我慢してこなしていても”何年たっても最低必要努力投入量に達しない。
■第7章 「優秀な人材ほど辞める」を食い止めるには
自社を高く評価し、
いきいきと業務に向かっている若手が
必ずしも定着しているわけではない。
「会社が好きで活き活き仕事をしているハイパフォーマーな若手が、キャリア不安を感じて辞めやすい」という状況が起きている。
・パフォーマンスが高い若手に対する育て方の打ち手
- 早々に外の体験を与え、自社の職場での仕事・キャリアの特徴(長所と短所)を認識させる
- 若手が”少し前の過去の自分”と比較できる指標を設定する
- 褒めることとフィードバックは別物と心得た上でフィードバックを行う。(業務上のフィードバックから、若手育成上級者は今後のキャリアづくりに関するフィードバックへ)
- やりたいことを尊重しつつ、加えて本人の視界に入っていない機会の”きっかけ”を提供する
- 「行動のための言い訳」を提供する
- 自信も同じくキャリアに悩み、試行錯誤していることを若手に開示してしまう
■感想
「若い人がわからない」そんな悩みを持つマネジメント層に対する本。若手の定着や育成でこれほど悩むようになった原因は2つ。ひとつは「若手の仕事・キャリアに関する考え方の多様化」。もうひとつは「職場環境の劇的な変化」。
働き方改革によって、労働時間が短くなり、職場人生の始まり時期に大切な”質的負荷”が職場から失われた「ゆるい職場」が増えている。本書では、日本の職場を「ふるい職場」に戻すことなく、「ゆるい職場」時代の新しい育て方を確立する方向性を示している。今、「働き方改革」に合わせて「育て方改革」が必要になっている。
最後まで読んでいただきて、ありがとうございました。
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