【3分要約・読書メモ】ザイム真理教―それは信者8000万人の巨大カルト 森永卓郎

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今回は『ザイム真理教―それは信者8000万人の巨大カルト』についての記事となります。

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■著者

森永卓郎(もりなが たくろう)
1957年、東京都生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。1980年に東京大学経済学部を卒業後、日本専売公社(現在のJT)に入社、「管理調整本部主計課」に配属となる。当時の専売公社はすべての予算を大蔵省(現・財務省)に握られており、「絶対服従」のオキテを強いられることになる。同部署で体感した大蔵省の実態を原点に、「ザイム真理教」が生まれ、それが国民生活を破壊していったメカニズムを本書で明らかにする。

■ザイム真理教とは

財政均衡、すなわち税収の範囲内に歳出を収めるという経済学的にはありえない話を「正しい」と思い込んでいる財務省の思想。

経済学の視点で見れば、自国通貨を持っている国は、財政均衡に縛られずに、より柔軟な財政政策を取ることができる。財政赤字は、ある程度拡大させて大丈夫。

しかし、岸田政権は、2026年に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させることを目標にしている。それは、財務省の意向に忠実な「財政均衡主義」を岸田政権も受け継いでいるからだ。

■事実と異なる神話

財務省は、財政均衡主義という教義をもち、それを正当化するために「日本の財政は破綻状態だ」と国民を脅す神話を作り上げた。

「普通国債の残高は、急激に拡大してきていて、すでに1029兆円と、赤ちゃんまで含めた国民一人当たり853万円もの借金を抱えている」と言われたら、ふつうは、「大変なことになっている」と思うだろう。

しかし、実際は、日本はそんな大きな「借金」を抱えているわけではない。日本政府は、世界で類を見ないほど大きな資産を保有しているからだ。

図表2は、財務省が「国の財務書類」として公表している2020年度末の連結貸借対照表では、国が持っている資産と負債(借金)が書かれている。

財務省が公表している2020年度末の連結貸借対照表

国は、国債という借金を987兆円抱えている。さらに、借入金なども加えると1661兆円という負債を抱えている。これが広い意味の国の借金の総額、負債額だ。

一方、資産は、日本政府は現金預金や有価証券などの流動市債を841兆円、土地や建物などの固定資産を280兆円ももっている。合計の資産額は1121兆円だ。

こんなに政府資産を持っている国は日本以外には存在しない。

つまり、日本政府は借金も多いが、その借金の3分の2ほどは資産としてキープしている。

負債の1661兆円から保有資産の1121兆円を差し引いた資産負債差額は540兆円となる。これが本当の日本政府が抱える借金なのだ。2020年度の名目GDPは527兆円だから、借金のGDP日は102%となる。これば、先進国では普通の水準である。日本の財政が国際的にみて悪いという事実はまったくない。

つまり、日本政府が抱えている本当の借金の総額は、公表されているグロスの数字と比べると3分の1程度で、それは先進諸国の政府が抱えている借金とほとんど変わらないレベルである。

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■アベノミクスはなぜ失敗したのか?

2021年から始まった第二次安倍政権の「アベノミクス」は、①金融緩和、②財政出動、③成長戦略の3本の矢で、日本経済をデフレから脱却させようという壮大な社会実験だった。

物価上昇率をマイナスからプラスに変え、労働市場も格段に改善したが、目標としていた消費者物価上昇率2%にすることも、物価上昇と賃金上昇の好循環によって日本経済を成長軌道に復帰させることもできなかった。

その原因は、2度にわたる消費税率引き上げだ。

消費税率を5%に引き上げるまで、日本の実質賃金は上昇していた。しかし、消費税を5%に上げたとたんに実質賃金の下落が始まった。消費税を上げると、その分だけ実質所得が減少する。そうすると消費者がお金を使わなくなり、企業の売上が落ちる。企業は、リストラや低賃金の非正規社員への移管で人件費を削る。そうするとまた消費が落ちて、企業の売上も落ちるという悪循環に陥る。

実質賃金と消費税率との関係

■なぜ日本は30年間成長できなかったか?

図表は、総務省「家計調査」を用いて、消費時導入前(1988年度)と現在(2021年度)の家計の比較を行ったものだ。

消費時導入前(1988年度)と現在(2021年度)の家計の比較

勤労者世帯の家計を31年前と比較すると、世帯収入は59万増えている(12.5%増)。ところが、所得税と住民税を合わせた直接税と年金保険料や健康保険料など社会保険料を合わせた税社会保険料負担は、41万増加している(50.1%増)。結果手取り収入は14万円、3.8%しか増えていない。

しかし、この期間で消費税率が0%から10%に引き上げられ、間接税の負担増は、32万に及んでいる。

つまり、消費税増額分を含めた社会保険料を差し引いた世帯主収入の手取りは、18万も減少している。

日本経済がこの30年間、ほとんど成長しなかったのは、日本企業がイノベーションを怠ったからだとか、終身雇用・年功序列処遇が時代に合わなくなったからだとか、企業が雇用を守るために賃金を抑え込んだ体など色々出されているが、この表が答えだ。

日本経済が成長できなくなった最大の理由は「急激な増税と社会保険料アップで手取り収入が減ってしまったから」だ。

使えるお金が減れば、消費が落ちる。消費が落ちれば、企業の売上が減る。そのため企業は人件費を削減せざるを得なくなる・・・・という悪循環が続いたのだ。

■感想

固定概念がひっくり返る。「消費税率のアップはしょうがない」「日本は借金が多すぎる」そう信じていた考えがグラグラと崩れていく。

森永卓郎氏は、今まで正しい考えと思っていた「財政均衡主義」を財務省が作り上げたカルト「ザイム真理教」と一刀両断。この教義が、国民やマスメディアや政治家まで、深く浸透してしまったことに危機感を持っている。

生活が厳しくなる一方の日本国民に、財政の事実を知ってもらい、財政均衡主義からの脱却が、国民生活を改善するためには必要であるという森永卓郎氏の強いメッセージが込められている。

賢く生きるために「知識」を身に付けよう!

この本に書いてあることがすべて正しいかよりも、様々な角度化が事象を眺め多角的に捉えることが今必要なスキル。財務省を今まで見ることができなかった角度で眺めることができる。教養本としても手に取る価値がある。

最後まで読んでいただきて、ありがとうございました。

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