「時間を無駄にせず、確実に良書と出会いたい」
天然生活webにて紹介されていたコトゴトブックス店主の木村綾子さんが愛してやまない4冊は、「読みながら自分だけの世界で遊ぶことができる」という、本への深い愛情が感じられるセレクションです。
小説からエッセイ、取材記まで、ジャンルは多岐にわたります。しかし、どの作品にも共通するのは、日常の深部に光を当て、生きた情景や感情を繊細に描き出す力を持っているという点です。
心に残るフレーズには付箋を貼り、メモを取りながら読むという木村さんの読書スタイルは、まさに本と対話する楽しさを教えてくれます。
詳しくはこちら→『「自分だけの世界」で思いきり遊べる“おすすめの本”4冊。コトゴトブックス店主・木村綾子さんの大好きな本』
1. 『この冬の私はあの蜜柑だ』
この短編集は、街で偶然に出会い、そして別れてゆく男女の、一瞬のきらめきと、その後の寂寥感を精緻な文章で描き出しています。
著者の片岡義男氏が生み出す世界は、読む人を一瞬にして日常の現実から切り離し、物語の中へと引き込む特別な力を持っています。木村綾子さんは、その魅力を「唯一無二の表現、目がカメラとなって情景を写すような描写」にあると語っています。
まるで映像を見ているかのような鮮烈な描写が、片岡作品の最大の特長です。「1行読んだだけで彼の世界に入っていき、現実を忘れるような感覚になります」という木村さんのコメントは、この作品が持つ没入感と世界観の完成度を端的に示しています。
都会の片隅で交わされる短い会話、交錯する視線、そして微かに残る感触。そうした断片的なものが、読者の心の中で一つの完全な物語へと結晶化します。男女の心の機微をここまで鮮やかに切り取れる作家は、ほかに類を見ません。読むことの喜び、そして物語に身を委ねる贅沢さを改めて感じさせてくれる、現代小説の傑作です。
忙しい日々の中で、心の深呼吸をしたいと願う人にとって、静かな興奮と懐かしさを運んでくれる一冊となるでしょう。
2. 『銀座ウエストのひみつ』
この本は、銀座で70年以上にわたり愛され続ける老舗洋菓子店「銀座ウエスト」に密着し、その工場や喫茶室の日常を丁寧に取材してまとめられた一冊です。
単なる商品紹介ではなく、時代を超えて愛される「名品」が、いかにして生まれ、どのような工夫と愛情をもって守り継がれているのかが詳細に描かれています。誰もが知るリーフパイやケーキといった人気のお菓子一つひとつに込められた、職人たちのこだわりと、店側の哲学が深く伝わってきます。
木村綾子さんは、本書を読んで「だれもが知るリーフパイなどの人気のお菓子がどんな工夫を重ねていまの愛される味になったのかを知って、食べる際もいっそうありがたくなりました」と語っています。
このコメントからは、単なる「おいしい」という感覚を超えた、ものづくりへの敬意と感謝の念が生まれていることがわかります。老舗が守る伝統のレシピ、そして品質を妥協しない姿勢は、現代のビジネスや生き方にも通じる普遍的な教えを含んでいます。
日々の暮らしの中にある「確かなもの」の価値を再認識させてくれるとともに、「ていねいに作られたもの」への感謝の念を深めてくれるでしょう。食べるという行為を、より豊かな体験へと変えてくれる、知的好奇心を満たす取材記です。
3. 『料理と毎日 12か月のキッチンメモ』
この本は、料理家である著者が、日々の食卓の献立はもちろん、それを取り巻く季節の移ろいや暮らしの断片を、12か月の「キッチンメモ」として綴ったエッセイ集です。
華やかなレシピ集とは異なり、日常のささやかな出来事や、その日の体調、気分に応じて生まれてくる「生きた献立」が記されています。特別な材料や手間をかけずとも、食べることを大切にする気持ちさえあれば、毎日の食事がどれほど豊かになるかを教えてくれます。
木村綾子さんは、特に「『風邪ひきさんのための肉団子スープ』など、料理名も楽しくて」と、日常に寄り添ったネーミングの魅力に触れています。さらに、「生活から献立が生まれていく様子を読むと、食べることと生きることはつながっていると実感します」と語るように、この本は料理=生きることという、根源的な喜びを再認識させてくれます。
料理の技術だけでなく、食べ物への感謝、季節の移ろいを感じる心、そして体をいたわる気持ちといった、日々の暮らしを慈しむための哲学が詰まっています。毎日の献立に悩む人はもちろん、食を通じて人生を豊かにしたいと願うすべての人にとって、キッチンに置いておきたい、温かく実用的なエッセイです。
4. 『たのしい暮しの断片』
このエッセイ集は、著者が日常の中で見つけた「気持ちのよいこと」や、「心に引っかかったこと」を、少しの辛口とユーモアを交えた独自の視点で描いたものです。
世間で語られる「ていねいな暮らし」といったステレオタイプな概念に対し、独自の解釈を加えながら、自分にとって本当に心地よい暮らしとは何かを追求しています。著者の鋭い観察眼と、軽快な語り口が、読者自身にも「本当に必要なもの」や「本当に心地よいこと」を見つめ直すきっかけを与えてくれます。
木村綾子さんは、本書について「“ていねいな暮らし”の意味を改めて考えさせられる一冊」だと述べています。これは、このエッセイが表層的な美しさや流行にとらわれず、本質的な心地よさを追求していることへの共感を示しています。
また、「文章に添えられた、画家である姉の久美子さんの作品も素晴らしいです」というコメントから、姉妹の感性が響き合うことによって、作品全体の芸術的な魅力が高まっていることがわかります。
自分らしく、心地よく生きるためのヒントを求めている人にとって、形式にとらわれない、自由な暮らしの断片が、新鮮な気づきと笑いをもたらしてくれるでしょう。軽やかに、しかし深く、日々の生活を豊かにするためのエッセンスが凝縮された一冊です。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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