戦後日本を代表する詩人、茨木のり子。彼女の言葉は、まるで冷たい清流のように私たちの頬を打ち、甘えや惰性に流されそうな心をシャキッと引き締めてくれます。しかし、その厳しさの奥には、人間に対する深い慈しみと、個としての尊厳を大切にする温かな眼差しがあります。
今回は、自立して生きる現代人の「背骨」となってくれるような10の言葉を厳選しました。
1:茨木のり子の紹介
茨木のり子(1926-2006)は、日本の詩人、随筆家、童話作家です。戦後の混乱期に詩作を始め、詩誌『列島』や『櫂(かい)』の創刊に参加しました。
代表作「自分の感受性くらい」や「わたしが一番きれいだったとき」などは、今なお多くの国語教科書に掲載され、世代を超えて読み継がれています。彼女の詩は、平易な言葉で書かれながらも、鋭い文明批評と、揺るぎない自己への問いかけに満ちています。
夫と死別した後の独り暮らしの中でも、凛とした生活態度を崩さず、最期まで「個」としての誇りを持ち続けたその生き様は、現代の女性たちからも多くの共感と尊敬を集めています。
2:名言
自分の感受性ぐらい自分で守れ。ばかものよ
茨木のり子
心が乾いたり、苛立ったりすることを、時代や環境、他人のせいにしてはいませんか? 茨木のり子の最も有名なこの一節は、「自分の心の平穏や豊かさを守れるのは、自分だけである」という冷徹なまでの自立を促します。他者に責任を転嫁せず、自分の手で自分を潤す覚悟を問い直される言葉です。
初心消えかかるのを暮しのせいにはするな。そもそもがひよわな志にすぎなかった
茨木のり子
忙しい毎日に追われて夢や目標を忘れてしまうとき、「生活が大変だから仕方ない」と言い訳したくなります。しかし、彼女は「本当に強い志なら、暮らしごときで消えはしない」と喝を入れます。自分の情熱の正体を、鏡の前で問い直したくなる一言です。
人間は誰でも心の底に、しいんと静かな湖を持つべきなのだ
茨木のり子
情報が溢れ、騒がしい現代。外の世界に反応し続けるのではなく、自分の中に誰にも踏み込ませない「静寂の場所」を持つこと。その心の湖が澄んでいてこそ、私たちは自分を見失わずに生きていけます。心の健康を保つための、大切な処方箋です。
ばさばさに乾いてゆく心をひとのせいにはするな。みずから水やりを怠っておいて
茨木のり子
心が荒んでいくのを感じたとき、誰かの優しさを待つのではなく、自分で自分に「水」をやる。読書をしたり、花を飾ったり、美しいものに触れたり。自分の機嫌を自分で取り、心を耕し続ける大切さを説いています。
世界に別れを告げる日に、ひとは一生をふりかえって、じぶんが本当に生きた日があまりにすくなかったことに驚くだろう
茨木のり子
漫然と過ごす日々の中で、心から感動し、自分として確かに存在した時間はどれほどあるでしょうか。「本当に生きた」と言える時間を一日でも増やしていく。その意識が、人生の密度を劇的に変えてくれます。
ひとりの人間の真摯な仕事は、おもいもかけない遠いところで、小さな小さな渦巻をつくる
茨木のり子
誰も見ていないところでの努力、誠実な仕事。それは無駄に見えるかもしれませんが、必ず世界のどこかで誰かの心に響き、波紋を広げます。自分のしていることの価値を信じられなくなったとき、静かな勇気を与えてくれる言葉です。
大人になってもどぎまぎしたっていいんだな。頼りない生牡蠣のような感受性、それらを鍛える必要は少しもなかったのだな
茨木のり子
大人になるとは、動じない強さを持つことだと思われがちです。しかし、彼女は「傷つきやすさ」や「ぎこちなさ」を消す必要はないと言います。繊細な心を持ち続けることこそが、人間としての豊かさの証なのです。
初々しさが大切なの。人に対しても世の中に対しても、人を人とも思わなくなったとき堕落が始まるのね
茨木のり子
慣れや傲慢さは、心の「堕落」の始まりです。初めて出会う人のように、初めて見る景色のように、常に「初々しさ」を持って世界に向き合うこと。その謙虚さが、生涯、知性と感性を磨き続けてくれます。
生きてゆくぎりぎりの線を侵されたら、言葉を発射させるのだ。
茨木のり子
普段は穏やかであっても、自分の尊厳や正義が踏みにじられそうになったとき、黙っていてはいけません。暴力ではなく、鍛え抜かれた「言葉」で抵抗する。知性を持った大人の戦い方を教えてくれる力強い言葉です。
年老いても咲きたての薔薇。柔らかく外にむかってひらかれるのこそ難しい
茨木のり子
年を重ねると、頑固になったり心を閉ざしたりしがちです。しかし、晩年まで瑞々しさを保ち、世界に対してオープンであり続けること。それが「美しく老いる」という最高の芸術なのだと教えてくれます。
3:まとめ
茨木のり子の言葉に共通しているのは、「徹底的な自己責任と、それゆえの自由」です。
彼女は、自分を「被害者」の立場に置くことを断固として拒みます。心を潤すのも、志を保つのも、すべては自分の責任。その厳しさは一見冷たく感じられますが、実は「自分の人生の主導権は、いつだって自分の手にある」という究極の応援歌でもあります。
ばさばさに乾きそうなときこそ、彼女の詩を開き、自分の心の湖に静かに水を注いでみませんか。凛と背筋を伸ばし、自分の感受性を守り抜く大人でありたいものです。
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