今回は、武田信玄の名言を解説していきます。
- 1. 武田信玄の紹介
- 2. 各名言の解説
- 戦略・戦術に関する言葉
- 1.もう一押しこそ慎重になれ。
- 2.風林火山 – 疾きこと風の如く、徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し。
- 3.勝敗は六分か七分勝てば良い。八分の勝ちはすでに危険であり、九分、十分の勝ちは大敗を招く下地となる。
- 人材・組織論に関する言葉
- 4.人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり。
- 5.老人には経験という宝物があるのだ。
- 6.渋柿は渋柿として使え。継木をして甘くすることなど小細工である。
- 人生訓・心構えに関する言葉
- 7.百人のうち九十九人に誉めらるるは、善き者にあらず。
- 8.一生懸命だと知恵が出る 中途半端だと愚痴が出る いい加減だと言い訳が出る。
- 9.自分のしたいことより、嫌なことを先にせよ。この心構えさえあれば、道の途中で挫折したり、身を滅ぼしたりするようなことはないはずだ。
- 10.人間にとって学問は、木の枝に繁る葉と同じだ。
- 3.まとめ
1. 武田信玄の紹介
武田信玄(1521年 – 1573年)は、戦国時代の武将で、甲斐国(現在の山梨県)の戦国大名です。卓越した軍事力と内政手腕で名を馳せ、「甲斐の虎」と恐れられました。特に、その軍旗に記された「風林火山」の旗印は有名です。彼の言葉は、戦国時代を生き抜いた知恵と教訓に満ちており、現代においてもビジネスや人生訓として多くの示唆を与えてくれます。
2. 各名言の解説
戦略・戦術に関する言葉
1.もう一押しこそ慎重になれ。
この言葉は、勝利を目前にした時の油断を厳しく戒める言葉です。戦において、敵を追い詰め、勝利が目前に見えている状況は、兵士たちの士気が最高潮に達し、勝利を確信している状態です。しかし、信玄はこのような状況こそ、最も危険な時であると説いています。「もう一押し」という状況は、敵も必死であり、予想外の抵抗を見せる可能性があります。また、勝利を目前にしたことで、兵士たちの警戒心が緩み、思わぬ伏兵や罠にはまる可能性もあります。
信玄は、このような状況こそ、指揮官は冷静さを保ち、最後まで慎重に状況を判断し、兵士たちに油断しないよう厳命する必要があると説いています。最後の詰めを慎重に行うことで、勝利を確実なものとし、無用な損害を防ぐことができるのです。この教訓は、戦に限らず、ビジネスにおける重要なプロジェクトの最終段階や、人生における目標達成の直前など、あらゆる場面で当てはまります。成功を目前にして気を引き締め、最後まで気を抜かないことの大切さを教えています
2.風林火山 – 疾きこと風の如く、徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し。
この言葉は、中国の兵法書『孫子』の「軍争篇」に由来する言葉で、武田信玄が軍旗に記したことで広く知られるようになりました。この言葉は、戦における基本的な心構えを示すだけでなく、状況に応じて柔軟に対応することの重要性を示しており、戦の基本だけでなく、ビジネスや人生における戦略の基本としても応用できます。
- 疾きこと風の如く: 行動は迅速に、風のように速く。敵の意表を突く奇襲や、迅速な展開で敵を翻弄することを意味します。ビジネスにおいては、市場の変化に素早く対応することや、競合他社に先んじて新しいサービスや製品を投入することなどがこれに当たります。
- 徐かなること林の如く: 平常時は静かに、林のように落ち着いて。敵に気づかれないように静かに潜伏し、機を窺うことを意味します。ビジネスにおいては、市場調査や情報収集を綿密に行い、機が熟するまで静観することなどがこれに当たります。
- 侵掠すること火の如く: 攻撃は激しく、火のように猛烈に。一度攻撃を開始したら、敵を圧倒するほどの勢いで攻め立てることを意味します。ビジネスにおいては、新市場への参入や、競合他社との競争において、集中的な資源投入と迅速な行動で優位を確立することなどがこれに当たります。
- 動かざること山の如し: 防御は堅固に、山のように動かない。敵の攻撃に対しては、山のようにどっしりと構え、容易に崩されない強固な防御を築くことを意味します。ビジネスにおいては、競合他社の攻撃や市場の変動に対して、強固な経営基盤と戦略で対応し、安定した事業運営を維持することなどがこれに当たります。
3.勝敗は六分か七分勝てば良い。八分の勝ちはすでに危険であり、九分、十分の勝ちは大敗を招く下地となる。
この言葉は、勝利の追求におけるバランス感覚の重要性を示しています。信玄は、勝利を目指すことは当然であるとしながらも、完全な勝利に固執することの危険性を指摘しています。「六分か七分勝てば良い」という言葉は、相手に再起の機会を与え、自身も慢心することなく、常に警戒を怠らないことの重要性を説いています。
八分以上の勝利は、相手に大きな恨みを残し、報復のリスクを高めます。また、勝利に驕り、油断を招き、思わぬ反撃を受ける可能性があります。九分、十分の勝利に至っては、相手を完全に追い詰めることで、絶望的な状況に追い込まれた相手が死に物狂いで反撃に出てくる可能性があり、逆に大敗を喫する原因となることもあります。この言葉は、戦における教訓だけでなく、ビジネスにおける競争や交渉においても重要な示唆を与えてくれます。相手を完全に打ち負かすのではなく、適度な勝利に留めることで、長期的な関係性を維持し、安定した利益を確保することができるのです。
人材・組織論に関する言葉
4.人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり。
この言葉は、組織における人材の重要性を説いています。信玄は、城を守るためには、堅固な石垣や深い堀だけでなく、それを守る人が不可欠であると考えていました。「人は城、人は石垣、人は堀」という比喩は、人材が組織の基盤であり、防衛力であり、重要な資源であることを示しています。優秀な人材がいなければ、どんなに立派な建物や設備があっても、組織は維持できません。
さらに、「情けは味方、仇は敵なり」という言葉は、組織運営において、人への思いやりが重要であることを示しています。部下や同僚への思いやり、感謝の気持ち、公正な評価などが、組織内の人間関係を良好に保ち、団結力を高めます。逆に、冷酷な態度や不当な扱い、差別などは、敵を作り、組織の力を弱めます。この言葉は、現代の企業経営においても、人材育成と組織運営の重要性を示す言葉として広く知られており、リーダーシップの基本とも言えるでしょう。
5.老人には経験という宝物があるのだ。
この言葉は、経験の価値を高く評価する信玄の考え方を表しています。若い頃には体力や知識が豊富であっても、経験は不足しています。信玄は、長年培ってきた経験は、何物にも代えがたい貴重な財産であると考えていました。「老人には経験という宝物がある」という言葉は、経験が持つ重要性を端的に表現しています。
長年の経験を通して培われた知識、判断力、洞察力などは、若い世代にはない強みであり、組織や社会にとって非常に貴重な資源となります。信玄自身も、数々の戦を経験し、多くの苦難を乗り越えてきたからこそ、卓越した武将として名を残すことができました。現代社会においても、高齢者の経験を活かすことの重要性が認識されており、企業における顧問制度や、地域社会におけるボランティア活動など、様々な形で高齢者の経験が活かされています。
6.渋柿は渋柿として使え。継木をして甘くすることなど小細工である。
この言葉は、人の個性や特性を活かすことの重要性を説いています。渋柿はそのままでは渋くて食べられませんが、干し柿にすることで美味しく食べることができます。信玄は、渋柿を無理に甘くしようとするのではなく、渋柿ならではの活用方法を見出すように、人の欠点を無理に直そうとするのではなく、その人の長所や個性を活かすことが重要であると考えていました。
「継木をして甘くすることなど小細工である」という言葉は、人の本質を変えようとするのは無駄な努力であり、むしろその人の個性を活かす方法を考えるべきだということを示しています。この言葉は、人材育成や組織運営において、多様性を尊重し、それぞれの個性を活かすことの重要性を示しています。現代の企業においても、社員の個性を活かした人材配置や、多様な人材が活躍できる環境づくりが求められています。
人生訓・心構えに関する言葉
7.百人のうち九十九人に誉めらるるは、善き者にあらず。
この言葉は、周囲の評価に盲従することの危険性と、自己の信念を持つことの重要性を説いています。「百人のうち九十九人に誉めらるるは、善き者にあらず」とは、ほとんど全ての人から褒められるような人物は、必ずしも良い人物とは限らないという意味です。これは、周囲に迎合し、誰からも嫌われないように立ち回っているだけで、自分の確固たる信念や行動規範を持っていない可能性があるからです。
信玄は、周囲の評価を全く無視すべきだと言っているわけではありません。しかし、多数の意見に流され、自分の考えを放棄してしまうことは、自己の成長を阻害し、真の成功を遠ざけることにつながると考えていました。真に重要なのは、周囲の評価に左右されることなく、自分の信念に基づいて行動することです。時には、周囲の反対や批判を受けることもあるかもしれませんが、それでも自分の信じる道を貫くことで、真の自己実現を達成できるのです。この言葉は、現代社会においても、周囲の空気に流されやすい現代人にとって、自分の軸を持つことの大切さを教えてくれる重要な教訓と言えるでしょう。SNSなどで多くの「いいね」を得ることを目標にするのではなく、本当に自分が大切にしたい価値観に基づいて行動することの重要性を教えてくれます。
8.一生懸命だと知恵が出る 中途半端だと愚痴が出る いい加減だと言い訳が出る。
この言葉は、物事に取り組む姿勢と、それによって生じる結果を明確に示しています。「一生懸命だと知恵が出る」とは、何かに真剣に取り組むことで、普段は思いつかないようなアイデアや解決策が生まれることを意味します。困難に直面しても、諦めずに努力を続けることで、状況を打開する知恵が湧いてくるのです。これは、心理学でいう「フロー状態」に近い状態と言えるかもしれません。フロー状態とは、何かに没頭している状態であり、集中力が高まり、創造性や生産性が向上するとされています。
「中途半端だと愚痴が出る」とは、真剣に取り組んでいないため、物事がうまくいかないことへの不満や不平不満が口に出ることを意味します。中途半端な取り組みでは、十分な成果が得られず、その結果に対する不満が生まれます。そして、その不満を他者や環境のせいにすることで、自己の責任を回避しようとする傾向があります。これは、自己肯定感の低下や周囲との関係悪化にもつながる悪循環を生み出します。
「いい加減だと言い訳が出る」とは、最初から真剣に取り組む意思がないため、失敗や不備に対する言い訳を準備している状態を指します。責任を回避するために、様々な理由をつけて正当化しようとします。これは、自己成長を阻害するだけでなく、周囲からの信頼を失うことにもつながります。この言葉は、仕事や勉強だけでなく、人間関係や趣味、人生のあらゆる場面において、真剣に取り組むことの大切さを教えてくれます。
9.自分のしたいことより、嫌なことを先にせよ。この心構えさえあれば、道の途中で挫折したり、身を滅ぼしたりするようなことはないはずだ。
この言葉は、時間管理と自己管理の重要性、そして長期的な成功のための心構えを説いています。「自分のしたいことより、嫌なことを先にせよ」とは、後回しにしがちな面倒なこと、気が進まないことを先に片付けることで、精神的な負担を軽減し、後の作業に集中できる状態を作ることを意味します。心理学では「先延ばし」という行動が問題視されていますが、これはまさに嫌なことを後回しにする行動パターンです。先延ばしは、不安やストレスを増大させ、パフォーマンスの低下につながることが研究で示されています。
信玄の言葉は、この先延ばしを防ぐための有効な方法を示しています。嫌なことを先に片付けることで、精神的な余裕が生まれ、他のことに集中できるようになり、結果的に全体の効率が向上します。また、達成感を得やすく、モチベーションの維持にもつながります。「この心構えさえあれば、道の途中で挫折したり、身を滅ぼしたりするようなことはないはずだ」とは、嫌なことから逃げずに、きちんと向き合うことで、途中で挫折したり、悪い方向に進んだりすることを防ぐことができるということを示しています。困難な課題に正面から向き合い、それを克服することで、自信がつき、更なる困難に立ち向かう力となります。逆に、嫌なことから逃げ続けることで、問題が積み重なり、最終的に大きな問題に発展し、身を滅ぼすことにもつながりかねません。この言葉は、目標達成のための効果的な方法であり、自己管理能力を高めるための重要な教訓となります。現代社会では、タスク管理ツールや時間管理術など様々な方法がありますが、信玄の言葉は、そういったテクニックの根本にあるべき心構えを示していると言えるでしょう。
10.人間にとって学問は、木の枝に繁る葉と同じだ。
この言葉は、学問の重要性を、木とその葉の関係に例えて分かりやすく説明しています。「人間にとって学問は、木の枝に繁る葉と同じだ」とは、木にとって葉が光合成を行い、成長に不可欠な要素であるように、人間にとって学問は知識や教養を吸収し、成長するために不可欠な要素であることを意味します。葉がなければ木は枯れてしまうように、人間も学問を怠ると成長が止まり、可能性を十分に発揮することができません。
学問は単に知識を詰め込むことだけでなく、思考力、判断力、問題解決能力など、人間としての総合的な能力を高める効果があります。また、学問を通して得られる教養は、人間関係を円滑にし、豊かな人生を送るための基盤となります。信玄が生きた時代は、現代とは異なり、武士にとって学問は武芸と並んで重要な教養の一つでした。しかし、この言葉は時代を超えて、現代社会においても重要な意味を持っています。現代社会は、情報化社会であり、常に新しい情報や知識が生まれています。変化の激しい現代において、学び続けることは、自己成長だけでなく、社会に適応していくためにも不可欠です。この言葉は、生涯にわたって学び続けることの大切さ、そして学問が人間にとって不可欠なものであることを教えてくれます。
3.まとめ
武田信玄の名言は、戦国時代を生き抜いた武将ならではの、実践的な知恵と教訓に満ちています。彼の言葉は、戦略・戦術、人材・組織論、人生訓など、幅広い分野にわたっており、現代においても多くの示唆を与えてくれます。特に、状況に応じて柔軟に対応すること、人材を大切にすること、そして常に真剣に取り組むことの大切さは、現代社会においても重要な教訓と言えるでしょう。彼の言葉を心に留め、日々の生活に活かしていくことで、より良い人生を送ることができるでしょう。
最後まで読んでいただきまして、
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背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
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