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今回は『マネジャーの最も大切な仕事』についてレビューと要約の記事となります。
『マネジャーの最も大切な仕事』要約とレビュー:95%が見過ごす「小さな進捗」の力
1. 著者の紹介
テレサ・アマビール氏はハーバード・ビジネススクールの教授であり、創造性、モチベーション、仕事環境に関する世界的な権威です。スティーブン・クレイマー氏は心理学者であり、長年にわたり企業の人材育成や組織開発に携わってきました。二人は共同で長期間にわたる大規模な調査研究を行い、その成果をまとめたのが本書『マネジャーの最も大切な仕事』です。この研究は、マネジメントの常識を覆す発見をもたらし、世界中で注目を集めています。
2. 本書の概要
『マネジャーの最も大切な仕事』は、マネジメントにおいて最も重要な要素は「進捗」であるという「進捗の法則」を提唱しています。著者らは、26チーム、238人の従業員を対象に数ヶ月間にわたる日誌調査を行い、1万2千件を超える日誌分析と669人のマネジャーへの調査を通じて、日々の「小さな進捗」が従業員のモチベーション、創造性、生産性に大きな影響を与えることを明らかにしました。本書は、評価やインセンティブ、明確な目標よりも「進捗」を支援することこそがマネジャーの最も重要な仕事であるという、マネジメントの新常識を提示しています。
3. 本書の要約
本書は、日々の「小さな進捗」が従業員のインナーワークライフ(仕事を通じた感情、認識、モチベーション)に与える影響に着目し、マネジャーがどのように進捗を支援すべきかを解説しています。
導入:マネジメントの誤解
多くのマネジャーは、組織の管理や社員の管理がマネジメントの全てだと考えています。しかし、著者らは、マネジャーの最も大切な仕事は、チームや部下にとってやりがいのある仕事が毎日少しでも前に進むよう支援することだと主張します。「進捗」という言葉は簡単そうに聞こえますが、実際には多くのマネジャーが見過ごしており、支援することも難しいのが現状です。
人間のモチベーション・生産性・創造性に影響を与えるもの:「進捗の法則」
著者らは、約670人のマネジャーに対し、モチベーションに最も影響を与える要素を尋ねる調査を行いました。その結果、「仕事の進捗のサポート」と答えたのはわずか5%でした。しかし、その後の詳細な調査により、「仕事の進捗のサポート」こそが、モチベーション、生産性、創造性に最も大きな影響を与えることが明らかになりました。これが「進捗の法則」です。
インナーワークライフ:パフォーマンスの源泉
著者らは、個人の職務体験を「インナーワークライフ」と定義し、感情、認識、モチベーションの3つの要素で構成されると説明しています。
- 感情: 良い気分、悪い気分といった感情全般。
- 認識: 仕事や組織に対する瞬間的な印象や考察。
- モチベーション: 仕事への意欲、熱意、努力の継続意欲。
このインナーワークライフが、創造性、生産性、コミットメント、同僚性といったパフォーマンスに影響を与えます。特に、内発的動機付け(仕事そのものから得られる喜びや達成感)が重要です。
インナーワークライフを向上させる要因:「進捗」「触媒」「栄養」
インナーワークライフを向上させる最も強力な要因は、「やりがいのある仕事が進捗している」という感覚です。この「進捗」を支援するために、マネジャーは以下の3つの要素に注目する必要があります。
- 進捗: プロジェクトが前進している、小さな勝利を経験する、ブレイクスルーが起こる、目標を達成するなどの出来事。
- 触媒ファクター: 仕事を直接支援する出来事。明確な目標設定、自主性の尊重、リソースの提供、十分な時間の提供、仕事への手助け、問題と成功からの学習、活発なアイデア交換などが含まれます。
- 栄養ファクター: チームのために頑張りたいと思える人間関係上の出来事。尊重、励まし、感情的サポート、友好関係などが含まれます。
調査方法:日誌調査
著者らは、スタートアップから大企業まで、26のプロジェクトチーム、238人の従業員を対象に、数ヶ月間にわたる日誌調査を行いました。参加者は毎日、その日のインナーワークライフ(感情、認識、モチベーション)を自己採点し、その日に起こった出来事を記録しました。この1万2千件を超える日誌分析から、「進捗」がインナーワークライフに最も大きな影響を与えることが明らかになりました。
マネジャーにとって最も大切なこと:進捗の支援
優秀なマネジャーは、社員が「重要な仕事」が「前に進んでいる」という感覚を持ち、自分のアイデアが尊重され、やりがいのある何かを成し遂げるサポートを受けていると感じることが重要だと理解しています。マネジャーは、組織や社員を管理するだけでなく、日々の「進捗」を重視することで、社員や組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。
4. ココだけは押さえたい一文
「マネジャーにとって最も大切なのは、『チームや部下にとってやりがいのある仕事が、毎日少しでも“進捗”するよう支援する』ことだ。」
『マネジャーの最も大切な仕事』
この一文は、本書のメッセージを簡潔に表しています。マネジメントの本質は、目標達成や結果だけを見るのではなく、日々の「進捗」を支援することにあるということを示しています。
小さな出来事の28%が大きな反応を引き出している。つまり、人が重要でないと考える出来事でさえ、しばしばインナーワークライフへ大きな影響を与える。
『マネジャーの最も大切な仕事』
小さなポジティブな出来事やネガティブな出来事は、心を上向かせも落ち込ませもするちょっとした加速装置なのである。
人のマネジメントにあたっては、小さな出来音にしっかり気を払う必要がある。
人は幸福を感じ、組織や社員へのポジティブな見方を持ち、仕事そのものからやる気を引き出されている時に普段より優れた仕事をする。
『マネジャーの最も大切な仕事』
外発的モチベーションよりも内発的モチベーションの方が創造性には役立つ。
やりがいのある仕事に大切なのは、自分の仕事が何かや誰か(自分のチームや、自分自身や、自分のかぞくでもいい)にとって価値のあるものだと自分が認識すること。
『マネジャーの最も大切な仕事』
インナーワークライフと仕事自体に影響を与える7つの触媒ファクター
『マネジャーの最も大切な仕事』
1:明確な目標設定をする
2:自主性を与える
3:リソースを提供する
4:十分な時間を与えるーしかし与えすぎてはいけない
5:仕事をサポートする
6:問題と成功から学ぶ
7:自由活発なアイディア交換
5. 感想とレビュー
『マネジャーの最も大切な仕事』は、マネジメントの常識を覆す、非常に重要な発見をもたらした一冊です。「進捗の法則」は、マネジメントだけでなく、個人の仕事や学習にも応用できる普遍的な原則と言えるでしょう。単なる経験則や推測ではなく、データに基づいた客観的な分析が、本書の大きな強みです。
良かった点:
- 科学的な根拠に基づいた主張: 長期間にわたる詳細な調査研究に基づいて「進捗の法則」を提唱しており、非常に説得力があります。単なる経験則や推測ではなく、データに基づいた客観的な分析が、本書の大きな強みです。1万2千件を超える日誌分析という膨大なデータに基づいているため、読者は安心して著者の主張を受け入れることができます。
- 「インナーワークライフ」という概念の提示: 感情、認識、モチベーションから構成される「インナーワークライフ」という概念は、人間のパフォーマンスを理解する上で非常に有用です。仕事の満足度やモチベーションは、単に待遇や環境だけでなく、日々の仕事の進捗によって大きく左右されるということを示しています。これは、マネジメントにおいて「人」を中心に考えることの重要性を改めて認識させてくれます。
- 具体的な支援方法の提示: 「進捗」を支援するために必要な「触媒ファクター」と「栄養ファクター」が具体的に示されており、マネジャーが何をすべきかが明確になっています。目標設定、自主性の尊重、リソースの提供、尊重、励ましなど、具体的な行動指針は、すぐに実践に移せるものばかりです。例えば、目標設定においては、SMARTの法則(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)を活用することなどが考えられます。
- マネジメントの視点を変える: これまでのマネジメントは、目標達成や結果に偏重する傾向がありましたが、本書は、日々の「進捗」に焦点を当てることで、マネジメントの視点を大きく変えることを提案しています。これは、従業員のエンゲージメントやモチベーションを高める上で非常に重要な視点です。結果だけでなくプロセスを重視することで、従業員の成長を促進し、組織全体のパフォーマンス向上に繋げることができます。
- 事例が豊富で分かりやすい: 調査で得られた具体的な事例が豊富に紹介されており、読者は内容を具体的にイメージすることができます。成功事例だけでなく、失敗事例も紹介されていることで、より深く理解することができます。例えば、小さな進捗がモチベーションを高めた事例や、進捗が阻害されたことでモチベーションが低下した事例などが紹介されています。
特に共感した点:
- 「小さな進捗」の力: 日々の「小さな進捗」が、モチベーションや創造性に大きな影響を与えるという発見は、非常に共感できます。目標達成までの道のりは長く、途中でモチベーションを維持するのが難しいですが、日々の「小さな進捗」を意識することで、モチベーションを高く保ち、目標達成に向けて着実に進むことができます。これは、個人の目標達成だけでなく、チーム全体のモチベーション維持にも役立ちます。
- マネジャーの役割の再定義: マネジャーの役割は、単に指示を出すことや管理することではなく、部下の「進捗」を支援することにあるという考え方は、マネジメントの本質を捉えていると言えるでしょう。マネジャーは、部下が仕事にやりがいを感じ、日々成長できるようにサポートする役割を担っているのです。これは、従来のトップダウン型のマネジメントから、部下をエンパワーメントする新しいマネジメントへの転換を促すものです。
- 「触媒ファクター」と「栄養ファクター」の重要性: 仕事の進捗だけでなく、それを支援する環境や人間関係も重要であるという考え方は、非常に重要です。適切なリソースや時間、自主性が与えられ、尊重や励まし、サポートがあることで、部下はより意欲的に仕事に取り組むことができます。これは、心理的安全性の高い職場環境を構築する上で非常に重要な要素です。
6. まとめ
『マネジャーの最も大切な仕事』は、マネジメントの常識を覆す、非常に重要な発見をもたらした一冊です。「進捗の法則」は、マネジメントだけでなく、個人の仕事や学習にも応用できる普遍的な原則と言えるでしょう。著者らの詳細な調査研究と、分かりやすい解説は、読者のマネジメントに対する考え方を大きく変える力を持っています。
本書は、単なるマネジメント論にとどまらず、働くすべての人にとって、仕事のやりがいやモチベーションについて深く考えさせられる内容となっています。日々の「小さな進捗」を大切にし、それを支援する環境を構築することで、個人も組織も大きく成長できるということを教えてくれます。
特に、以下のような方におすすめです。
- マネジメント層の方々
- チームリーダーやプロジェクトリーダー
- 人材育成に関わる方々
- 仕事のモチベーションを高めたい方
- 目標達成に向けて努力している方
この本を手に取り、「進捗の法則」を実践することで、あなたのマネジメントスキルは大きく向上し、チームや組織のパフォーマンスは飛躍的に向上するでしょう。そして、あなた自身も、より充実した仕事人生を送ることができるはずです。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
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