「時間を無駄にせず、確実に良書と出会いたい」
ジュンク堂が2024年10月31日に公開した「知られざる名著」企画。
書店員がテーマに沿って厳選した、隠れた名著の魅力を探る、インタビュー形式の連載企画の第1回目のテーマ「心理学」から書籍を紹介します。
ジュンク堂池袋本店に勤務する書店員のY・Iさんが選んだ6冊は、心理学の入門書から専門書まで、幅広い内容です。
これらの本は、私たちが普段意識しない「心」の働きを深く掘り下げています。自己理解を深め、他者とのコミュニケーションを考えるきっかけになります。
詳しくはこちら→知られざる名著|読み物として楽しむ「心理学」。人文担当者が選ぶ、心の行き先を示す6冊
1. 『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』
新潮社
この本は、現代社会で多くの人が感じる「心の空虚感」をテーマにした物語です。主人公は、あらゆるものが手に入る時代で、自分自身の「こころ」だけが見つからず、生きづらさを感じています。
この物語は、心理学の専門用語を使いません。登場人物たちの心の揺れを繊細に描き出し、読者自身の内面と向き合うきっかけを与えてくれます。
心理学に詳しくなくても、心に漠然とした不安を抱えるすべての人に寄り添ってくれるでしょう。文学的で哲学的な一冊です。
2. 『雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら』
KADOKAWA
心が疲れたり、人間関係に悩んだりする日は、まるで雨が降るように気分が沈むことがあります。この本は、そんな「雨の日」の心の状態をテーマにしたものです。心理的な不調の兆候と、それにどう対処すればよいかを優しく解説しています。
不安やストレスを感じたときに、どんな心の動きが起きているのか。それを和らげるための呼吸法や思考法などを分かりやすく説明しています。
本格的なカウンセリングを受ける前に、自分自身の心をいたわるための手引きとして活用できるでしょう。心の健康を保つためのヒントが詰まった、温かいガイドブックです。
3. 『ゼロから始めるジャック・ラカン』
ちくま文庫
フランスの精神分析家、ジャック・ラカンの難解な思想を、初心者向けに一から丁寧に解説した入門書です。ラカンの思想は複雑で、多くの人が理解を諦めてきました。
しかし、この本は、ラカンの主要な概念である「想像界」「象徴界」「現実界」などを、身近な例やユーモアを交えながら解き明かします。まるでラカン本人から講義を受けているかのように、彼の思想の全体像を捉えることができるでしょう。
この本を読むと、哲学、文学、社会学に大きな影響を与えたラカンの思想が、いかに現代の私たちの生き方や社会のあり方を考える上で重要かがわかります。
4. 『日常生活の精神病理』
岩波文庫
精神分析の創始者ジークムント・フロイトが、私たちの「日常生活」に潜む心理的なメカニズムを解き明かした古典です。
この本は、人の言い間違いや物忘れ、偶然の出来事のように見える行動の裏に、無意識の願望や葛藤が隠されていることを示唆しています。フロイトは、これらの「些細な」出来事を分析して、無意識の世界を明らかにしました。
この本を読むことで、自分や他者の行動を、今までと全く異なる視点で見つめ直せます。自己分析だけでなく、人間関係の複雑さを理解する上でも重要な示唆を与えてくれるでしょう。
5. 『集中講義・精神分析 上・下』
岩崎学術出版社
精神分析の歴史と理論を、講義形式で体系的に解説した本格的な入門書です。
精神分析の創始者フロイトの思想から始まり、ユングやラカンといった後継者たちの理論まで、その複雑な系譜を丁寧にたどります。核心的な概念である「無意識」などを、豊富な事例を交えながら分かりやすく解説しています。
精神分析を学問として本格的に学びたい人にとって、基礎から応用までを網羅する必携の教科書となるでしょう。
6. 『野の医者は笑う 心の治療とは何か?』
文春文庫
精神科医である著者が、「心の治療」とは何かを、自身の診療経験を通して深く考察したノンフィクションです。この本は、専門用語をほとんど使わず、物語のように語りかけるスタイルが特徴です。
著者は、患者の言葉に耳を傾け、その人生の物語を深く理解することこそが、治療の第一歩だと説きます。心を病んだ人々の苦悩と、そこから立ち直っていく過程を温かく見守る著者の姿勢が描かれています。
心を病んだ人だけでなく、生きづらさを感じているすべての人に寄り添ってくれるでしょう。希望の光を与えてくれる、心温まる一冊です。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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