「子供は可愛い、育児は素晴らしい」
そんな綺麗事ばかりの育児論に、どこか違和感を感じていませんか?
少子化が進む令和の日本で、あえて「親になる」ことを選んだ(あるいは選ばざるを得なかった)男性たちの胸の内。
そこには、世間が目を背けてきた残酷で切実な本音が渦巻いています。
稲田 豊史氏の著書『ぼくたち、親になる』は、匿名取材によって暴き出された「父親たちの自意識」を綴った衝撃のルポルタージュです。
この記事では、本書の詳しい要約と、読後の感情を揺さぶるレビューを詳しくお届けします。
1. 著者の紹介
著者は、編集者・ライターの稲田 豊史(いなだ とよふみ)氏です。
ヒット作『映画を早送りで観る人たち』で、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する現代人の心理を見事に分析したことで知られています。
稲田氏は、常に社会の「微かな変化」を敏感に捉えるプロです。
本作でも、これまでの育児本が触れてこなかった「男性側のドロドロとした内面」にメスを入れています。
プロの取材者として、徹底的に匿名性を守りながら聞き出した言葉の数々。
それは、私たちが「普通」だと思っていた父親像を根底から覆すものばかりです。
2. 本書の要約
『ぼくたち、親になる』は、WEB連載時から大きな反響と賛否両論を巻き起こした話題作です。
多様な男性たちの証言から、現代の「親になること」の輪郭を浮き彫りにします。
ある男性は「自分の職業にとって、子育てはハンデだ」と言った。
『ぼくたち、親になる』
ある男性は「子供が生まれた時点で妻への愛情はゼロになった」と言った。
ある男性は「人間は子供を作って当然。作らない夫婦には問題がある」と言った。
ある男性は「少子化の原因は“女性の幼稚化”だ」と言った。
ある男性は「キャリアの天井が見えたから子供を作った」と言った。
ある男性は「実験のために子供を4人儲けた」と言った。
ある男性は「神様、どうか子供ができませんように」と祈った。
ある男性は「子供がいる人といない人では、根本的に理解し合えないのではないか」と逆質問してきた。
ある男性は「自分の気を狂わせないために、“変化し続ける”対象として子供が必要だった」と語った。
「仕事の質」か「育児」かという究極の選択
現代のビジネスパーソンは、常に「自己成長」を求められています。
しかし、育児はそんな精密なタイムマネジメントを、いとも簡単に破壊します。
ある編集者の男性は、没入状態(ディープワーク)が中断される苦痛を訴えます。
「一度思考が途切れると、元の場所には戻れない」
子供という制御不能な存在は、キャリアを重視する男性にとって、時に「ハンデ」として認識されます。
女性がずっと抱えてきたこの苦しみを、男性もようやく「自分事」として体感し始めた。
それが令和という時代のリアルな風景です。
子どもをつくる=人生の3分の1を差し出す
『ぼくたち、親になる』
「納得」を求めるあまりの晩婚化・晩産化
昭和の時代、親になることは「当たり前」の通過点でした。
しかし今は、なぜ子供を持つのかという「意味」を自分で定義しなければなりません。
- 「人生の負荷として子供が必要だった」
- 「これ以上仕事で成長できないと悟ったから、育児にリソースを振った」
そうした「納得感」を得るまでに、多くの男性は40代を迎えています。
精神的に成熟し、経済力を持ってから親になる。
一見理想的ですが、その代償として「生殖能力の低下」という冷酷な現実に直面することになります。
自分が恐れているのは、「同一局面が永遠に続く地獄」
『ぼくたち、親になる』
遺伝子の継承に対する「冷めた視線」
驚くべきことに、多くの男性が「自分の血を残したい」という欲求を否定しています。
東大卒で4児を育てる専業主夫の男性でさえ、「自分が死んだ後のことなどどうでもいい」と語ります。
一方で、自分のルーツに苦しむ人々もいます。
DVや浪費癖のあった実父を反面教師にし、「自分の汚れた血を絶やしたい」と願う切実な思い。
子供を作らないという選択を、「自分のような人間を増やしたくない」という究極の誠実さとして実行しているのです。
団塊ジュニア世代が抱く「子供時代の呪縛」
少子化の背景には、団塊ジュニア世代の特有の感覚もあります。
彼らが過ごした子供時代は、個性が抹殺された「マスの時代」でした。
「競争ばかりで、先生は高圧的。いじめも日常茶飯事だった」
そんな息苦しい時代を再生産したくない、という拒絶反応。
経済的な理由以上に、「子供時代という地獄」への嫌悪感が、彼らを親になることから遠ざけている側面があります。
3. ココだけは押さえたい一文
「子供がいる人といない人では、根本的に理解し合えないのではないか」
『ぼくたち、親になる』
4. 感想とレビュー
この本は、読む人の心を激しく波立たせます。
「なんて自分勝手な父親たちだ」と憤る人もいれば、「ようやく自分の気持ちを代弁してくれた」と救われる人もいるでしょう。
私が最も衝撃を受けたのは、男性たちが抱く「自意識の高さ」です。
常に自分がどう見られているか、自分の人生がどう最適化されているかを計算し尽くしている。
その計算が、育児という「不条理な献身」によって狂わされることへの、底知れぬ恐怖が伝わってきました。
しかし、本書のレビューで多く語られている通り、これは単なる「父親のわがまま」ではありません。
日本という社会が、あまりに「生産性」や「自己責任」を強調しすぎた結果の、歪んだ自意識の現れなのです。
統計データや出生率の数字だけでは見えない、一人ひとりの男性の絶望と希望。
それを共有することは、分断された社会を結び直すための、小さな一歩になるはずです。
5. まとめ
稲田 豊史氏の『ぼくたち、親になる』は、現代の少子化問題を語る上で避けては通れない一冊です。
要約を読んだだけでは分からない、証言者たちの「震えるような声」が全編に溢れています。
「普通」の人生なんてどこにもない。
誰もが迷い、自分なりの理由を無理やりひねり出して、「親」という不確かな役割を引き受けている。
この本を読み終えたとき、あなたはきっと、街を歩く見知らぬ父親たちの姿が、少しだけ違って見えるようになるでしょう。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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