「部下の話を聴いているつもりなのに、一向に改善されない」
「1on1で何を話せばいいのか分からない」
「相手の意見に反対したいとき、どう聴けばいいの?」
そんな悩みを抱えていませんか?
コーチングや傾聴のスキルを学んでも、現実の仕事や生活では「聴くだけでは解決しない」場面に直面することが多いものです。
櫻井将氏の『まず、ちゃんと聴く。』は、そんな現場のリアルな悩みに寄り添い、「聴く」と「伝える」をどう両立させるかを説いた画期的な一冊です。
この記事では、本書の要約を深掘りし、明日から使える対話のヒントをレビューします。
1. 著者の紹介
著者は、エール株式会社代表取締役の櫻井将(さくらい まさる)氏です。
横浜国立大学を卒業後、外資系製薬会社やワークハピネスを経て、オンライン1on1サービスを提供するエールを設立しました。
日本企業における年間3万件以上の1on1セッションから得られた膨大なデータに基づき、ビジネス現場で本当に役立つコミュニケーションを研究しています。
理系出身ならではの「要素分解」と「図解」の分かりやすさに定評があり、多くの経営者や人事担当者から絶大な信頼を寄せられています。
2. 本書の要約
本書は、抽象的な「傾聴」という概念を、誰でも実践できるレベルまで具体的に解き明かしています。
ここでは、各章のポイントを中心に詳しく解説します。
第1章:まず、ちゃんと聴く。
私たちは、相手の話を聴きながら「それは違う」「もっとこうすべきだ」と頭の中で評価を下しがちです。
本書ではこれを「ジャッジメント(判断)」と呼びます。
「まず、ちゃんと聴く」とは、自分の解釈を一旦脇に置き、相手が見ている景色をそのまま受け取ること。
この「まず」という順序を守るだけで、相手との信頼関係は劇的に変わります。
聞くとは、「自分の解釈を入れることなく、意識的に耳を傾ける行為」
「相手の言動の背景には、肯定的意図があると信じている状態で聞く」が「ちゃんと聞く」

第2章:ちゃんと聴くを分解する
「ちゃんと」とは、スキルの前に「あり方」を指します。
その核心は、相手のどんな言動の背景にも「肯定的意図(その人なりの良かれと思う理由)」があると信じることです。
たとえミスをした部下であっても、「わざと失敗したわけではない。何か理由があったはずだ」という信念を持って聴く。
この姿勢こそが、相手の本音を引き出すための土台となります。
共感できない相手はいない。
信念とは、世界に対する思い込み
人と人の違いを表す言葉としての「多様性」に対して、自分のなかにいる表面的に対立・葛藤・矛盾する複数の自分のことを「多面性」と呼ぶ。
自分のなかにある多面性を認め、それぞれを大切にする。つまり、それぞれの肯定的意図を自分自身がちゃんと聞く。すると、それぞれの自分の違いを活かし合い、補い合う選択ができるようになる。
メラビアンの法則
メッセージから伝わる割合
視覚情報(見た目、姿勢、表情、しぐさ):55%
聴覚情報(声の大きさ、速さ、明るさ、声質):38%
言語情報(言葉の内容、意味):7%
4つの質問だけで、話は十分に聞ける
①展開:「他には?」
②具体化:「っていうと?」「もう少し教えて?」「具体的には?」「たとえば?」
③抽象化:「要するに?」「つまり?」
④俯瞰:「言ってみてどう?」
「なぜ」ではなく「なに」を使う
第3章:伝えるを分解する
「聴くだけでは仕事が進まない」という悩みに対し、本書は「伝える」ことの重要性もしっかり肯定します。
ただし、伝え方には工夫が必要です。
特に有効なのが「フィードバックマトリクス(FBマトリクス)」という考え方です。
「できていないこと」を指摘する(ゾーン2)だけでなく、「たまたま上手くいった瞬間」を見逃さずに伝える(ゾーン3)ことで、相手の行動変容を促します。

ゾーン3にある10回に1回を見つけ、感謝・貢献を伝える
第4章:「聴く」と「伝える」の黄金比
コミュニケーションには絶対的な正解はありません。
しかし、相手や状況に応じて「聴く」と「伝える」の比率を調整する視点が不可欠です。
対立があるとき、話が複雑なとき、相手のこだわりが強いとき。
こうした場面ほど、「伝える」の前に「まず聴く」の割合を増やすことが、結果的に近道になると説いています。
最初の5秒は聞く
第5章:「聴く」「伝える」「両立する」3つの技術を高める
ここでは、具体的なトレーニング方法が示されます。
聴く技術は「あり方×やり方×コンディション」の掛け算で決まります。
自分の心身を整えること、相手を観察する力を磨くこと。
一歩ずつステージを上がっていくための、実践的なロードマップが用意されています。
第6章:3つの技術を高めた先にあるもの
「聴く」ことの連鎖が、組織や社会をどう変えていくかが描かれます。
「聴かれる」経験を通して人は自分を理解し、自律的に動けるようになります。
「聴く」ことは、これからの時代における最大の「Give(与えること)」であり、それが巡り巡って自分自身の幸せにも繋がっていくのです。
3. ココだけは押さえたい一文
「聴くことは、相手の要求を『叶える』ことでも、自分を殺して『従う』ことでもない。相手が見ている景色を、ジャッジせずに受け取るという最高の『Give』である。」
4. 感想とレビュー
『まず、ちゃんと聴く。』を読んで、目から鱗が落ちたのは「聴く=相手の言う通りにする」ではない、という指摘です。
これまでの私は、「部下の話を聴いたら、その要望を叶えなきゃいけない」というプレッシャーを感じていました。
だから、聴くのを無意識に避けていた部分があったのです。
しかし、櫻井将氏は「叶えないけど、ちゃんと聴く」「従わないけど、ちゃんと聴く」というスタンスを提唱しています。
「あなたの意見は受け取ったよ。でも、今回はこう進めるね」
このプロセスがあるだけで、相手の納得感は全く違うものになります。
また、FBマトリクスの解説も非常に実践的でした。
「できていないこと」を指摘してばかりだと、相手の脳内には「できない自分」が定着してしまいます。
「たまにできた瞬間」を逃さず伝えることで、ポジティブなイメージを育てる。
この手法を家庭で子どもに対して試してみたところ、驚くほどスムーズに動いてくれるようになりました。
「聴く」ことを論理的に、かつここまで温かく解説した要約本は他にありません。
マネージャー層はもちろん、人間関係に悩むすべての方に手に取ってほしい名著です。
5. まとめ
『まず、ちゃんと聴く。』は、対話の力で世界を豊かにするための指南書です。
要約でお伝えした「withoutジャッジメント」と「肯定的意図」を意識するだけで、明日からの会話は必ず変わります。
櫻井将氏が提案する「聴く技術」を身につけることは、相手を尊重するだけでなく、自分自身を楽にすることにも繋がります。
まずは今日、身近な誰かの話を「ジャッジせずに」最後まで聴いてみませんか?
その小さな一歩から、あなたの周りの景色が変わり始めるはずです。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
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