私たちの身の回りでは、「前髪切った?」という何気ない一言さえもハラスメントになりかねない状況です。
何かが常に炎上しているように感じる息苦しい世の中で、私たちはどのように生き延びれば良いのでしょうか。
本書『世界はハラスメントでできている』は、辛酸 なめ子氏が令和の世を生き抜くための大人の処世術を綴ったエッセイ集です。
ハラスメントから生成AI、老いへの不安まで、現代社会の世相を深く映し出しています。
この記事では、辛酸 なめ子氏のユニークな視点から、世界はハラスメントでできているという現実への対処法を読み解きます。
1. 著者の紹介
著者の辛酸 なめ子氏は、漫画家でありコラムニスト、そしてエッセイストとして多岐にわたって活躍されています。
彼女の最大の魅力は、陰キャ(インキャ)的な視点から、世の中の出来事や流行をシニカルかつユーモラスに分析する独自の文才です。
特にスピリチュアルな世界や、華やかなセレブの世界を斜めから観察する姿勢が多くの読者の共感を呼んでいます。
今回の『世界はハラスメントでできている』でも、そのエッジの立った鋭い感性が遺憾なく発揮されています。
一見、引きこもりがちな印象もありますが、実は行動力に溢れている点も魅力の一つです。
様々なセミナーやイベントに積極的に参加し、その体験を辛酸 なめ子氏独自の言葉でレポートされています。
2. 本書の要約
本書『世界はハラスメントでできている』は、全22話の読み切りエッセイ集として構成されています。
タイトルは象徴的なもので、一冊丸ごとハラスメント論というわけではありません。
しかし、現代社会の窮屈さというテーマは一貫しています。
新型ハラスメントの分析と世相の投影
本書の冒頭では、「前髪切った?」といった一見無害な言葉もハラスメントになりうる、コンプライアンスが過剰な現代社会の息苦しさが描かれます。
辛酸 なめ子氏の鋭い観察眼は、職場のハラスメントはもちろん、カスハラやハラスメントハラスメント(ハラハラ)といった複雑な状況にまで及んでいます。
また、日本人の炎上癖や、生成AIの登場による将来への不安など、急変する世界のトピックもカバーしています。
身近な社会現象として、チョコザップの入門体験記なども綴られており、時代の空気感を映し出しています。
辛酸なめ子流「陰キャ」の体験と処世術
エッセイの大きなパターンとして、自己評価が高くないと自認する辛酸 なめ子氏が、現状を打破しようと非日常的なイベントに参加する体験記が多いのが特徴です。
例えば、なぜか参加することになった団体ツアーでの身の処し方や、インド紀行などです。
これらの体験を通じて、「最近たのしいことあった?」という返答に困る質問への回答法や、謎マナーに惑わされないための参拝作法といったお役立ち知識が得られます。
彼女は、専門用語や時事ネタを良い塩梅で文章に散りばめています。
これは、記事作成前の入念な調査の賜物であり、単なる日常エッセイにはとどまらない知的な側面を見せています。
「陰キャ」を自称しながらも、様々な人と関わり、新しい世界に飛び込む行動力には驚かされます。
老いと自己肯定感へのユーモラスな対処法
人生の後半で誰もが直面する老いへの不安も、重要なテーマの一つです。
老眼、認知症、通らない声、そして下がる自己肯定感といった問題に対して、辛酸 なめ子氏なりの対処法が紹介されています。
シニカルな視点でありながらも、決して突き放すことはありません。
自虐的なツッコミの中にも、読者が共感し、「明日からがんばろっと!」と思えるような希望が感じられます。
これは、他者を排除せず、共存主義に溢れたやさしい処世エッセイであるためです。
3. ココだけは押さえたい一文
「あらゆることがハラスメントになる世の中。それでもなんとかやっていくための上手な世わたり三歩手前。」
『世界はハラスメントでできている』
4. 感想とレビュー
辛酸 なめ子氏の文章は、本当に言葉選びとユーモラスなツッコミが秀逸です。
シニカルな観察眼で世相を切り裂きながらも、どこかクスッと笑える要素が必ず含まれています。
特に、彼女が「陰キャ」の皮をかぶって、自己啓発セミナーや怪しいイベントに参加する構図が面白いです。
読者の誰もが感じている社会への窮屈さや生きづらさを代弁してくれています。
この本は、一気に読み切るのではなく、時間があるときに一話ずつ読み進めるのがおすすめです。
毎回異なるテーマでの新しい視点や、専門用語の登場に知的好奇心が刺激されます。
他人の価値観に深入りしない柔らかい語り口は、自己との対話という堅苦しさを一切感じさせません。
「世界はハラスメントでできている」という前提を受け入れつつ、肩の力を抜くための処世術が詰まった、令和のサバイバルガイドとして優れた一冊です。
5. まとめ
辛酸 なめ子氏の『世界はハラスメントでできている』は、生きづらい現代を軽やかに乗り越えるための知恵を与えてくれます。
ハラスメントや老いといったネガティブな現実も、彼女のフィルターを通すと笑いに変えることができます。
大人の処世術を学びたい方や、辛酸 なめ子氏のユニークな感性に触れたい方に心からおすすめします。
本書を読んで、窮屈な社会から心を開放し、生きるヒントを見つけてみてください。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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