仕事って、楽しいことばかりじゃないですよね。
上司の理不尽な指示、親会社の「リスク回避」という一言で潰される企画…。
「こんな会社、辞めてやる!」と心の中で叫んだことがある人も少なくないはずです。
でも、そんな会社員生活にだって、熱い「青春」や「冒険」が詰まっているとしたら?
今日ご紹介するのは、そんな働くすべての人の心に火をつける、痛快お仕事小説、城戸川りょうさんの『高宮麻綾の引継書』です!
『高宮麻綾の引継書』というタイトルから、堅いビジネス書を想像するかもしれませんが、とんでもない!これは、感情をむき出しにして仕事にぶつかっていく主人公・高宮麻綾(たかみや まあや)の姿に、誰もが胸を熱くする物語です。
松本清張賞の選考会で話題となり、作家の辻村深月さんや森絵都さんからも絶賛された、その完成度の高いエンターテイメント性を、この記事で徹底的に深掘りしていきます。
今回のブログ記事では、このエナジードリンクのような小説の魅力を、以下の構成で深掘りしていきます。
ぜひ最後までお付き合いいただき、あなたも仕事への情熱を再燃させてみませんか?
1. 著者の紹介
本書『高宮麻綾の引継書』の著者である城戸川 りょう(きどかわ りょう)さんは、現役の商社マンでありながら、小説家としても鮮烈なデビューを飾った異色の経歴の持ち主です。
1992年に山形県で生まれた城戸川さんは、山形県立山形東高校を卒業後、東京大学経済学部へと進学。大学卒業後は、自身も商社に勤務されています。
城戸川さんの作家デビューは、非常にドラマチックなものでした。実は、本作『高宮麻綾の引継書』は、第31回松本清張賞に落選した作品でした。しかし、選考委員である作家の辻村深月さんや森絵都さんをはじめ、社内からも「完成度が高い」「出版すべき」という声が相次ぎ、異例の単行本化が決定しました。
この背景には、城戸川さん自身が商社勤務の中で感じてきた「会社員だっておもしろいんだぞ」という強いメッセージがあります。仕事に悩んだ時期に、学生時代にできなかった小説執筆を始めたという城戸川さん。残業中に見つけた古い引継書に、過去の担当者の「事業への思い」が詰まっているのを感じ、そこから物語の着想を得たといいます。
城戸川さんの実体験に根ざしたリアリティと、エンターテイメントとしての面白さが融合した『高宮麻綾の引継書』は、仕事に情熱を注ぐすべての人の心に響く、最高のデビュー作といえるでしょう。
2. 本書の要約
『高宮麻綾の引継書』は、現役商社マンである城戸川りょうさんが描く、熱くてパワフルな「令和のサラリーマン小説」です。知識やスキルに関するビジネス書ではなく、仕事への情熱や理不尽への怒りを真正面から描いた、まるでエナジードリンクのような物語です。
物語の主人公は、食品の専門商社で働く入社3年目の女性社員、高宮麻綾(たかみや まあや)。彼女は、持ち前の行動力と仕事への情熱で精魂込めて作り上げた新規事業の企画を、親会社が主催するビジネスコンテストで優勝させます。
しかし、事業化が目前に迫ったところで、親会社から「リスク回避」という抽象的な理由で企画を白紙に戻されてしまいます。
「なんであんたたちの意味わかんない論理で、あたしのアイデアが潰されなきゃなんないのよ!」
怒りを爆発させた麻綾は、この理不尽な決定の裏にある「リスク」の正体を突き止めるべく、社内外を駆けずり回ることに。そして、調査を進める中で、物語の縦軸となる20年前に起きた爆発事故の謎へと行き当たります。
この事故の真相を解き明かすことが、彼女の事業を救う唯一の道だと信じた麻綾は、持ち前の「ムカつく奴はぶったおす」精神で突き進んでいきます。彼女の周りには、出世欲の強い同期、頼りになる後輩、情報通の派遣社員、そして親会社の人間たちが入り乱れ、それぞれの思惑が絡み合い、物語は疾走感あふれる展開を見せていきます。
この物語のもう一つの魅力は、売る側の麻綾と、ものづくりの現場で働く開発者たちとの間の「隔たり」が丁寧に描かれている点です。お互いの価値観やこだわりがぶつかり合いながらも、最終的には事業への「想い」という共通のゴールに向かっていく姿は、多くの働く人々の共感を呼びます。
そして、物語の最後は、麻綾自身が「成長したな」と綴る引継書で幕を閉じます。一人で何でもできると思っていた彼女が、多くの人々の協力や助けがなければ何も成し遂げられないことに気づき、謙虚さとパワフルさを兼ね備えた人物へと成長していく姿が描かれています。
『高宮麻綾の引継書』は、単なるお仕事小説ではなく、仕事を通して成長し、仲間と協力し、自分自身の「好き」に素直に向き合うことの素晴らしさを教えてくれる、現代の働く人々に向けた「青春」と「冒険」の物語です。
3. ココだけは押さえたい一文
本書『高宮麻綾の引継書』の最も重要なメッセージを凝縮し、物語全体のテーマを端的に表す「ココだけは押さえたい一文」は、間違いなくこれです。
「私は私の仕事をモノにしてみせる――だってそういうたまらない瞬間のために生きているんだもの。」
『高宮麻綾の引継書』
この一文は、主人公・高宮麻綾の仕事に対する情熱と、彼女を突き動かす原動力を完璧に表現しています。上司や会社の理不尽な論理に立ち向かい、困難な謎に挑む彼女の行動は、すべてこの「仕事がたまらなく面白い」という純粋な気持ちに裏打ちされています。
この一文は、会社への不満や挫折を抱えながらも、それでも「仕事が好き」という気持ちを大切にしている、すべての働く人々の心を揺さぶる、力強いメッセージです。
4. 感想とレビュー
私にとって、城戸川りょうさんの『高宮麻綾の引継書』は、まさに「仕事のやる気が湧いてくる」ような、心にぶっ刺さる一冊でした。
まず、主人公・高宮麻綾のキャラクターが最高です。口が悪く、態度も粗野なところもありますが、仕事への情熱と信念は本物。「ムカつく奴はぶったおす」という彼女の姿勢は、現実の会社ではなかなか難しいかもしれません。
でも、だからこそ、彼女が理不尽な壁に真正面からぶつかっていく姿は、読んでいるだけで胸がすくような爽快感と、読者の心の中にある「言いたかったこと」を代弁してくれるようなカタルシスを与えてくれます。
物語の構成も非常に巧妙です。単なるお仕事小説ではなく、20年前の爆発事故という「ミステリー」が縦軸にあることで、物語にグイグイ引き込まれます。仕事の理不尽と謎解きが交互に描かれることで、飽きることなく読み進めることができました。
特に、ものづくりの現場で働く人々の「こだわり」と、商社マンである麻綾の「売りたい」という思いが交差していく描写は、非常にリアリティがあり、私自身の仕事にも通じる部分が多く、深く共感しました。
また、麻綾を支える個性豊かなサブキャラクターたちも魅力的でした。出世を追い求める同期の桑守、頼りになる後輩の天恵、情報通のベテラン派遣社員の小西さん…彼らがそれぞれ麻綾に与える影響や、彼ら自身の葛藤も丁寧に描かれており、物語に奥行きを与えています。
特に、最終的に麻綾が「自分ひとりでは何もできない」と気づき、周囲の人々との「協力」の大切さを学ぶ姿には、彼女の人間的な成長を感じ、とても感動しました。
この本は、以下のような方々に心からお勧めしたいです。
- 仕事に情熱を燃やしているすべての人
- 会社の理不尽さや人間関係に悩んでいる方
- 仕事を通して成長したいと思っている若手社員
- 読んだ後に仕事へのモチベーションを上げたい方
- 痛快なエンターテイメント小説として楽しみたい方
『高宮麻綾の引継書』は、仕事って「ムカつくけど面白い!」という感情を思い出させてくれる、まさに「エナジードリンクみたいなお仕事小説」です。読むことで、仕事への情熱が再燃し、明日からの仕事が少しだけ楽しくなる、そんな力を持った一冊だと思います。ぜひ、この熱い物語に触れてみてください。
5. まとめ
今回は、城戸川りょうさんの著書『高宮麻綾の引継書』について、著者の紹介、本書の要約、ココだけは押さえたい一文、そして感想・レビューをお伝えしました。
本書は、理不尽な状況にも屈せず仕事への情熱を貫く主人公・高宮麻綾の奮闘を描いた、痛快お仕事ミステリー小説です。松本清張賞の選考会で高く評価されたその完成度と、働くすべての人の心に響く熱いメッセージが魅力です。
この本の重要なポイントを改めてまとめると、以下のようになります。
- 熱い主人公の物語:理不尽に立ち向かう高宮麻綾の姿が、読者に爽快感と共感を与える。
- ミステリー要素:過去の事件の謎解きが、物語の縦軸となり、読者を飽きさせない。
- 「仕事は青春」というテーマ:仕事を通して成長し、仲間と協力することの素晴らしさを描いている。
- リアルな描写:現役商社マンである著者ならではの、仕事や人間関係のリアリティが満載。
もしあなたが、仕事への情熱を再確認したい、あるいは、ただただ面白い小説を読みたいと考えているなら、ぜひこの本を手に取ってみてください。きっと、読後には仕事への向き合い方が少し変わるはずですよ。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
日々の仕事やライフスタイルのヒントになればうれしいです。
X(Twitter)、Threads、instagram、Blueskyもやっているので、もしよかったら覗いてください。