「なぜあのスタートアップは資金調達に成功したのか?」
「ベンチャーキャピタル(VC)は、投資先をどのように見極めているのか?」
華やかな一獲千金の裏側で、泥臭い交渉や資金集めに奔走するVCの実態を描いた一冊が、岩澤脩さんの著書『だからベンチャーキャピタルはやめられない』です。
スタートアップ業界の光と影、そして起業家と投資家の間に繰り広げられるドラマを現役目線で赤裸々に綴った本書は、ビジネスパーソンや起業を目指す人々の間で大きな話題となっています。
この記事では、『だからベンチャーキャピタルはやめられない』について、著者である岩澤脩さんの経歴から、詳細な要約、ココだけは押さえたい一文、そして徹底的なレビューまでわかりやすく解説します。「スタートアップのリアルな内側を知りたい」「VCという仕事に興味がある」という方は、ぜひ最後までチェックしてみてください!
1. 著者の紹介
本書の著者である岩澤脩(いわさわ おさむ)さんは、ファーストライト・キャピタルの代表パートナーを務める現役のベンチャーキャピタリストです。
急成長を遂げるスタートアップ企業の執行役員として事業を牽引し、自らIPO(新規株式公開)を経験したのち、ベンチャーキャピタル(VC)の会社を創業。プレイヤーとして数多くの起業家に寄り添い、投資と経営支援の最前線に立ち続けています。
単なる「お金を出すだけの投資家(インベスター)」ではなく、新しい産業や社会の仕組みをつくる「実践者」としての強い矜持を持ち、その実体験に基づいたリアルな発言や執筆活動で多くの支持を集めています。
本書は、そんな著者が自身のキャリアや数々の投資現場、さらには痛烈な失敗談や組織の裏側までを包み隠さず描き出した、初の著作となります。
2. 本書の要約
本書は、ベンチャーキャピタルという仕事の基礎知識から、過酷な資金集め(ファンドレイズ)、投資の意思決定プロセス、企業価値を高めてEXITするまでの流れ、そして人口減少時代の日本におけるVCの存在意義まで、全7章にわたって体系的に解説されています。
ここからは、本書の核心部分を章立てに沿ってじっくりと解説していきます。
【第1章・第2章】ベンチャーキャピタルとは何か、そしてファンドレイズの苦悩
第1章では、VCという仕組みの基本が解説されます。外から見ると「有望な会社に投資して大きく儲ける仕事」という華やかなイメージを持たれがちですが、その実態は10年単位の長期的なリスクを背負いながら、不確実性の塊に向き合う過酷な職業です。GP(無限責任組合員)とLP(有限責任組合員)の関係性など、ファンドが成り立つ構造が紐解かれていきます。
続く第2章では、VCの仕事の中で最も泥臭く苦しいとされる「ファンドレイズ(出資者集め)」のリアルが語られます。
「アンカーLPとして頼っていた2社が、契約直前に同時に降りる」といった、スタートアップの資金調達と酷似した絶望的な修羅場が包み隠さず描かれます。何の実績もない1号ファンド設立時の門前払いから、予期せぬトラブルまで、投資家自身も常に資金難の恐怖と隣り合わせであることが痛感させられます。
7年間で1000社以上の起業家とコンタクトし、約700社に対して投資検討しましたが、実際に投資したのは、40社。投資検討したうちの5~6%程度です。
【第3章・第4章】投資の意思決定:発掘からバリュエーション、契約の罠まで
第3章と第4章は、VCがどのようにスタートアップを発掘し、投資の意思決定を下すのかというプロセスに迫ります。
著者は年間200社以上のスタートアップと面会しますが、実際に投資するのはそのうちのわずか数社(検討したうちの5〜6%程度)です。投資判断を下す際、経営者の資質を見極める上で以下の6つの要素が重要視されます。
- チームビルディング力
- 原体験の鮮明さ
- 数字への強度
- 成長に対するスピード感
- 明るさ・チャーミングさ
- 張っている感
さらに、プロダクトの検証において「Nice Have(あったら便利)」ではなく、ユーザーが喉から手が出るほど求める「Must Have(ないと不便)」かどうかが生死を分けるポイントとして挙げられます。
「Must Have」とは、「ユーザーにとって『ないと不便』なプロダクト・サービス」。ユーザーが喉から手が出るほど求めているプロダクトです。
『だからベンチャーキャピタルはやめられない』
一方、「Nice Have」とは「ユーザーにとって『あったら便利』なプロダクト・サービス」。

第4章の後半戦では、バリュエーション(企業価値評価)の決め方や、優先株、J-KISS、ベンチャーデットといった具体的な資金調達手段、そして「事業計画以上に資本政策のほうが事業の生死を分ける」という重要教訓が解説されます。

【第5章・第6章】EXITの分岐点と、VC自身を経営するということ
第5章では、投資から数年を経て迎えるIPOやM&AといったEXIT(出口)のフェーズが取り上げられます。すべてのスタートアップが順調に成長するわけではなく、事業の停滞や「100%どのスタートアップでも起きる組織崩壊」をいかに乗り越えるかが解説されます。
第6章では、視点を変えて「VCという会社をどう経営するのか」が語られます。投資をする側のVC自身もまた、ひとつの組織であり企業です。メンバーの相次ぐ退職や世代交代、競合との関係など、組織運営の苦悩と教訓が赤裸々に明かされています。
VCにとって大切なのは、どういうカルチャーをつくるのか
『だからベンチャーキャピタルはやめられない』
VCはレピュテーションビジネスであり、その心が大事な商売
『だからベンチャーキャピタルはやめられない』
【第7章】人口減少時代の日本におけるVCの存在意義
本書の終盤を飾る第7章では、日本のマクロ環境である「人口減少」がテーマに取り上げられます。
一見するとネガティブに捉えられがちな人口減少ですが、著者はこれを「日本が新しい産業を生み出すための千載一遇のチャンス(高年齢化と人口減少に関する政策の教訓を引き出す世界の実験場)」と捉えています。歴史を振り返れば、人類は人口が減少した時代にこそ決定的な生産性革命を起こしてきました。東証グロース市場の改革なども踏まえ、日本経済にVCがどのようなインパクトを与えられるのかという壮大なビジョンが語られます。
また、コラムでは、AIスタートアップ「オルツ」の巨額売上過大計上による上場廃止という、著者自身がファーストライト・キャピタルとして直面した痛烈な事件の教訓もケーススタディとして記録されており、業界全体への強い警鐘と責任感が示されています。
3. ココだけは押さえたい一文
本書の本質を鋭く突いており、スタートアップや投資に関わるすべての人に心に留めてほしい一文がこちらです。
スタートアップの世界では、「目の前に最も集中した人がもっとも遠くに行ける」ということがよく言われます。
『だからベンチャーキャピタルはやめられない』
数多くの起業家や事業を見てきた著者だからこそたどり着いた、圧倒的な真理です。
遠大なビジョンを語ることは簡単ですが、現在目の前にある課題や顧客のペイン、泥臭い実務に誰よりも深く集中し、狂ったような熱量でやり切った人間だけが、結果的に想像を絶するような遠くの大きな景色(大成功やイノベーション)にたどり着くことができます。華やかなアイデアの裏にある、日々の地道な執念の重要性を教えてくれる名言です。
4. 感想とレビュー
本書『だからベンチャーキャピタルはやめられない』を読み終えて、まず胸に残ったのは、スタートアップの華やかな成功談の裏側にある「凄まじいまでの泥臭さと覚悟」でした。
投資の「光」だけでなく「影」までさらけ出す潔さ
ビジネス書やメディアで取り上げられるスタートアップの多くは、「数億円の資金調達成功!」や「華麗なIPO!」といったきらびやかな成功の美談が中心です。しかし、本書の要約でも触れた通り、そこに至るまでのVCのファンドレイズの苦悩、投資先での組織崩壊のリアル、さらには巨額の不祥事における当事者としての痛手(オルツ事件の教訓)までが、これほどまでにオープンに語られている書籍はほかにありません。
著者の岩澤脩さんが包み隠さず綴る言葉の端々から、投資家としての冷徹な眼差しと、日本の産業を本気で変えようとする熱い情熱がひしひしと伝わってきて、ページをめくる手が止まりませんでした。
起業家と投資家のコミュニケーションの溝を埋める一冊
本書のレビューとして特筆すべきは、これが単なる「VCの仕事解説書」にとどまらず、「起業家や資金調達を控えるビジネスパーソンにとっての最高の教科書」になっている点です。
「VCは投資の検討段階で何を基準に見ているのか」「バリュエーションや資本政策の裏で、投資家はどんなリスクを背負っているのか」——。これらを知るだけでも、起業家が投資家に向き合うときのピッチや対話の質は劇的に変わるはずです。
また、単なる「お金の貸し借り」を超えて、起業家と人生の伴走者のように運命を共にするベンチャーキャピタリストという職業の「人間臭さ」に深く触れることができます。「だからベンチャーキャピタルはやめられない」というタイトルの意味が、読み終えたときには深く腑に落ちるはずです。
5. まとめ
岩澤脩さんの著書『だからベンチャーキャピタルはやめられない』は、スタートアップ投資の表と裏をこれ以上ないほどリアルに学べる、唯一無二のビジネスドキュメンタリーです。
本書の要点プレイバック
- VCの基礎と苦悩: 華やかな投資の裏には、過酷なファンドレイズや10年単位の長期リスクが存在する。
- 投資判断の目利き: 経営者の6つの資質(チーム力、原体験、数字への強度など)と、「Must Have」のプロダクトが重要視される。
- 資本政策の重要性: 事業計画以上に、資本政策や契約の設計がスタートアップの生存を左右する。
- VC自身の経営: 投資家自身もまた組織を率いる経営者であり、組織崩壊や世代交代の壁に直面する。
- 人口減少への挑戦: 日本の人口減少を絶望ではなく、新しい産業を生み出す千載一遇のチャンスとして捉える。
いま資金調達に奔走している起業家の方、VC業界のキャリアに興味がある方、そして日本の未来のイノベーションに関心があるすべての人に自信を持っておすすめできる名著です。不確実な未来に賭けるプロたちのドラマと知恵に、ぜひ触れてみてください!
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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