ご覧頂き誠にありがとうございます。
今回は『だから僕たちは、組織を変えていける』についてレビューと要約の記事となります。
『だから僕たちは、組織を変えていける』要約とレビュー:たった一人から始める組織変革の物語
1. 著者の紹介
斉藤徹氏は、起業家であり経営学者。株式会社hint代表として、組織開発や人材育成に携わっています。著書や講演を通じて、これからの時代に求められる組織のあり方や、個々人が組織変革に貢献する方法を発信しており、その活動は多方面から注目を集めています。従来の管理型組織に疑問を持ち、変化に対応できる自律的な組織の実現を提唱している点が特徴です。
2. 本書の概要
『だから僕たちは、組織を変えていける』は、変化の激しい現代において、従来の「統制型」組織から「自走型」組織への変革が不可欠であることを説いています。本書は、管理職やリーダーだけでなく、現場の一社員であっても、チームをリードして組織を変えていくための知見と技術を提供します。特に、「関係性」「意味の共有」「内発的動機づけ」という3つの要素に着目し、具体的な方法論と事例を通じて、組織変革の道筋を示しています。キーワードは「心理的安全性」と「対話」です。
3. 本書の要約
本書は、6つの章で構成されており、時代の変化と組織の現状分析から始まり、具体的な変革メソッドへと展開していきます。
第1章:時代は変わった。組織はどうか?
現代社会は、デジタルシフト、ソーシャルシフト、ライフシフトという3つのパラダイムシフトによって大きく変化しています。しかし、多くの組織は過去の成功体験にとらわれ、変化に対応できていません。このギャップが、働く人々の違和感を生み出しています。
第2章:これからの組織は、「統制」から「自走」へ
21世紀のマネジメントは、「数字」から「人」へ、つまり「統制」から「自走」へとシフトする必要があります。本書では、「学習する組織」「共感する組織」「自走する組織」という3つの理想的な組織モデルを提示し、それぞれの特徴と実現のための要素を解説しています。特に、リーダー不在でも自走するオーケストラ「オルフェウス管弦楽団」の事例は、示唆に富んでいます。
第3章:強がりの仮面を外そう
組織変革の鍵となるのは、「関係の質」です。そのためには、メンバーが安心して本音を語り合える「心理的安全性」の高い場をつくることが不可欠です。Googleの「プロジェクト・アリストテレス」の研究結果を引用しながら、心理的安全性の重要性と、それを阻害する要因、そして具体的なつくり方を解説しています。
リーダーは、強がりの仮面をはがそう
『だから僕たちは、組織を変えていける』
第4章:チームを動かす、北極星を見つけよう
チームを動かすためには、「意味の共有」が重要です。仕事が社会や自分にとってどのような意味を持つのかを考え、共有することで、メンバーの思考の質を高め、一体感を醸成することができます。サイモン・シネックの「Why」理論を参考に、意味の共有の方法とその落とし穴について解説しています。
仕事を楽しむことからはじめる
『だから僕たちは、組織を変えていける』
第5章:アメとムチを捨て、好奇心を解き放とう
行動の質を高めるためには、「内発的動機づけ」が重要です。報酬や罰といった外発的動機づけではなく、自律性、有能性、関係性という3つの要素を満たすことで、メンバーの好奇心と自主性を引き出し、やる気に満ちたチームをつくる方法を解説しています。
第6章:たった一人から、影響の輪は広がる
組織変革は、トップダウンで行うものとは限りません。現場の一人ひとりが起点となり、影響の輪を広げていくことで、組織全体を変えていくことができます。本書は、変化を恐れずに冒険を始める勇気を与えてくれます。
要約
分解して詳細に要約すると以下のようになります。
- 変化への適応の必要性: 現代社会の変化は指数関数的であり、従来の直線的な変化に対応する組織では生き残れない。組織は変化から学び続ける「学習する組織」へと進化する必要がある。
- 「統制」から「自走」へ: 従来のトップダウン型の「統制」型組織から、メンバーが自律的に行動する「自走」型組織へのパラダイムシフトが求められる。
- 関係性の質の重要性: 組織変革の出発点は「結果」ではなく「関係性」である。良好な関係性を築くことで、前向きな思考と自発的な行動が生まれ、結果としてパフォーマンスが向上する「成功循環モデル」が重要。
- 心理的安全性の構築: メンバーが安心して発言し、挑戦できる「心理的安全性」の高い場づくりが不可欠。そのためには、リーダーが強がりの仮面を外し、弱みを見せる勇気を持つことが重要。
- 意味の共有: チームの「北極星」となる共通の目的や意味を共有することで、メンバーの一体感とモチベーションを高める。
- 内発的動機づけ: アメとムチによる外発的動機づけではなく、自律性、有能性、関係性を満たす内発的動機づけが、行動の質を高める。
- 一人ひとりの影響力: 組織変革はトップダウンだけでなく、現場の一人ひとりから始めることができる。小さな変化が波及し、大きな変革につながる。
4. ココだけは押さえたい一文
「結果ではなく、関係性からはじめよう。」
『だから僕たちは、組織を変えていける』
この一文は、本書のメッセージを象徴しています。組織変革は、目標や数字を追いかけることから始めるのではなく、まずメンバー間の関係性を築き、信頼と共感を育むことから始めるべきだということを示しています。
5. リーダー陥りやすい落とし穴
①心理的安全性の落とし穴
- 空気読みすぎ体質:「気配りこそ命」という誤解
落とし穴:空気を読みすぎてしまい、自分自身が本音を話せていない
解決策:いつでの自然体に。ウチからソトに意識をシフトする - 決められない組織:「全員一致すべき」という誤解
落とし穴:均一さやリスクを重んじ全員一致を目指すので、何も決まらない
解決策:対話を大切にする。パーパスを共有し、走りながら考える - 話し合い万能主義:「話し合えば解決する」という誤解
落とし穴:話し合えばすべてが解決するはず。でも実際には解決しない
解決策:発散と収束を意識して、チームと個人の相互作用を最大化する
②意味共有の落とし穴
- 意味の押し売り:「意味を伝えればいい」という誤解
落とし穴:仕事の意味を繰り返し伝えれば、きっとわかってもらえるはず
解決策:率先垂範し理念と行動をつなぐ。一人ひとりの腹落ちこそ大切 - ボトムアップ願望:「この総和が全体になる」という誤解
落とし穴:個人の総和をボトムアップさせたい。それで組織はまとまるはず
解決策:組織が持つ「自社らしさ」を話し合い、言語化し、共有する - 自分探し症候群:「自分探しで解決する」という誤解
落とし穴:自分を探せば、答えも理想郷もきっとある。でもたどり着けない
解決策:今の自分を否定せず、そこを起点として、現実に意味づけする
③動機付けの落とし穴
- ポジティブの罠:「褒めることが大切」という誤解
落とし穴:否定せずに褒める。それが伸びるコツ。でもやる気が続かない
解決策:感謝・敬意・勇気づけ。成長を促すフィードバックの技術を学ぶ - トンネルビジョン現象:「私は孤立している」という誤解
落とし穴:内発的動機づけは難しい。焦るのは私だけ。組織で孤立していく
解決策:一気にすべては変わらない。壁をつくらず、一人ずつ対話していく - 指示待ちの部下:「あの人は自ら動かない」という誤解
落とし穴:指示待ちの人がいるとイライラする。自分でやったほうが早い
解決策:対話が大切。その前に自分が仕事を抱え込んでいないか、振り返る
6. リーダーの変革アクション
- まず、あなたが一歩踏み出そう
自身の内面を変えることからはじめる。
信念を醸成し、小さな一歩を踏み出す - 自分のことを正しく認識しよう
自己を変革する。そのために会いのある批判化の声を聞き
「自己認識」を高める - 影響力が届くところからはじめよう
自分の「影響の輪」を見極める。
そこに自信の新知的エネルギーを集中する - 小さな成功を育てていこう
信念を持ち、菅家・思考・行動を変革を進める。
価値を生むことに集中する - 反対者の信頼を得る努力をしよう
反対者にも、情熱を伝え、信頼を得る努力をする。
次第に関係性は変わってゆく - 常にチームの希望でいよう
困難は学習のチャンス。
希望を抱き、みんなで助けあい、乗り越えて成長する - 共感をつなぎ、影響の輪を広げよう
ティッピングポイントはきっと訪れる。
一期一会の気持ちで、対話を広げる
7. 感想とレビュー
『だから僕たちは、組織を変えていける』は、現代の組織が抱える課題に対する明確な答えと、具体的な解決策を提示してくれる良書です。著者の熱意と、豊富な事例、そして理論に基づいた解説は、読者に深い共感と気づきを与えてくれます。単なる理想論ではなく、具体的なステップを踏んで組織を変革していく方法を示している点が、本書の大きな魅力です。
良かった点:
- 時代の変化に合わせた組織論: 変化の激しい現代社会において、従来の組織論では通用しないことを明確に指摘し、これからの時代に求められる組織のあり方を提示している点が素晴らしいです。特に、デジタルシフト、ソーシャルシフト、ライフシフトという3つのパラダイムシフトが、組織にどのような影響を与えているのかを具体的に説明している点は、非常に分かりやすいです。
- 「関係性」の重視: 組織変革において「関係性」を最重要視している点は、非常に共感できます。人間関係が良好で、心理的安全性の高いチームでは、創造性や生産性が高まることは、多くの人が経験的に理解していることですが、本書ではそれを理論的に説明しています。特に、「成功循環モデル」は、関係性の質が思考の質、行動の質、結果の質にどのように影響を与えるのかを明確に示しており、実践的な指針となります。
- 具体的な方法論の提示: 心理的安全性のつくり方(共感デザイン、価値デザイン)、意味の共有の方法、内発的動機づけの方法など、具体的な方法論が丁寧に解説されているため、読者はすぐに実践に移すことができます。単なる概念の説明にとどまらず、具体的なワークショップの手順や、リーダーが取るべき行動などが示されている点は、非常に実践的です。
- 豊富な事例と引用: Googleの「プロジェクト・アリストテレス」、オルフェウス管弦楽団の事例、ピーター・センゲ、エイミー・エドモンドソン、サイモン・シネックなど、著名な研究や理論、人物からの引用が豊富で、内容に深みと説得力を与えています。これらの事例や引用は、抽象的な概念を具体的なイメージに落とし込むのに役立ちます。
- 現場目線のメッセージ: 管理職だけでなく、現場の一社員であっても組織を変えていけるというメッセージは、多くの働く人々にとって希望となります。組織変革はトップダウンで行うものという固定観念を覆し、一人ひとりの行動が組織全体に影響を与えることを示しています。
特に共感した点:
- 心理的安全性の重要性: 「心理的安全性」は、最近注目されているキーワードですが、本書ではその重要性と具体的なつくり方について詳しく解説されており、非常に参考になります。特に、「強がりの仮面」を外すという表現は、多くのリーダーにとって耳の痛い話でありながら、重要な気づきを与えてくれます。完璧主義やコントロール欲求、過度の帰属欲求、犯人探しの本能といった、心理的安全性を阻害する要因についても具体的に説明されており、自己認識を深めるのに役立ちます。
- 「意味の共有」の力: 仕事の意味を共有することで、メンバーのモチベーションを高めるという考え方は、非常に重要です。特に、VUCA時代においては、変化が激しく、将来の見通しが不透明なため、仕事の意味を見失いがちですが、共通の目的意識を持つことで、困難を乗り越える力となります。本書では、社会にとっての「仕事の意味」、自分にとっての「仕事の意味」を考えることの重要性を説いており、自己の内面と向き合うきっかけを与えてくれます。
- 「成功循環モデル」: 関係性の質を高めることから始めるという「成功循環モデル」は、組織変革のプロセスを分かりやすく説明しており、非常に実践的です。関係性の質、思考の質、行動の質、結果の質が相互に影響し合うという考え方は、組織全体を俯瞰的に捉えるのに役立ちます。
8. まとめ
『だから僕たちは、組織を変えていける』は、これからの時代に求められる組織のあり方を示し、働くすべての人に勇気と希望を与えてくれる一冊です。従来のマネジメントの枠にとらわれず、人間関係や意味の共有、内発的動機づけといった要素を重視することで、組織はより創造的で、生産的で、そして何よりも「人間らしい」場所になることを教えてくれます。
本書は、単なる組織論にとどまらず、個人の生き方や働き方にも示唆を与えてくれます。変化の激しい時代において、組織に依存するのではなく、自ら変化を起こし、周囲に影響を与えていくことの大切さを教えてくれます。
特に、以下のような方におすすめです。
- 組織の現状に違和感を感じている方
- チームや組織を変えたいと思っている方
- リーダーシップについて学びたい方
- 働くことの意味について考えたい方
- より良い職場環境を求めている方
この本を手に取り、「関係性」を大切にし、「意味」を共有し、「内発的な動機」を引き出すことで、あなた自身が組織変革の起点となり、より良い未来を創造していくことができるでしょう。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
日々の仕事やライフスタイルのヒントになればうれしいです。
X(Twitter)、Threads、instagram、Blueskyもやっているので、もしよかったら覗いてください。