目の前の仕事には全力で取り組んでいる。 でも、このままで私のキャリアは大丈夫なのだろうか。 そんな言葉にならない焦りやモヤモヤを感じている同世代の大人たちへ向けて、今日はこの記事を書いています。
今回テーマにするのは、古屋星斗さんの著書『会社はあなたを育ててくれない』です。 この本で語られている「寄り道と近道の働き方デザイン」という考え方が、私たちのキャリアの悩みをフッと軽くしてくれます。
一緒に、これからの時代の「新しい安定」の作り方を紐解いていきましょう。
『会社はあなたを育ててくれない』とは?
まず、この少しドキッとするタイトルの本についてご説明させてください。 著者の古屋星斗さんは、若手社会人のキャリアや労働市場の専門家です。
「会社は育ててくれない」という言葉は、決して冷たい突き放しではありません。 終身雇用が崩れ、会社が個人のキャリアを最後まで保証できない時代。 そんな「選択の時代」において、自分のキャリアのハンドルは自分で握ろう、という前向きなメッセージなのです。
さらに現代は、「ゆるい職場の時代」とも呼ばれています。 かつてのように、上司が理不尽なほどのプレッシャーをかけて若手を鍛え上げるような環境は減りました。 それは働きやすくなった反面、「自分で自分を育てなければ、誰も強要してくれない」という厳しさの裏返しでもあります。
そんな環境下で、私たちはどうやって自分自身の価値を高め、キャリアを作っていけばいいのでしょうか。 その答えが、今回ご紹介する「寄り道」と「近道」のバランスなのです。

キャリアにおける「近道」とは何か?
まずは「近道」というアプローチについて見ていきましょう。 ここでの「近道」とは、単に楽をするという意味ではありません。
本書の図表によると、「近道」の目的は「最低必要努力量の獲得を次の選択のタイミングまでに効果的に行うこと」と定義されています。 つまり、自分が目指す目標に対して、必要なスキルや経験を逆算し、最短距離で効率よく身につけていく行動のことです。
たとえば、次のポジションに就くために必要なマネジメントの専門書を読み込む。 あるいは、キャリアアップのために専門的な学習やトレーニングを受けることも、「近道」のチェックポイントに挙げられています。 仕事での目標を言葉にできることや、目指したいロールモデルがいることも、効果的な「近道」を進むための重要な要素です。
この「近道」は、ビジネスパーソンにとって非常に馴染み深い、王道の努力の形ですよね。 目標を設定し、計画を立て、それを実行していく。 しかし、この「近道」だけでキャリアを作ろうとすると、思わぬ落とし穴にハマってしまいます。
図表では、近道ばかりでバランスが悪いと「偶発性が担保できず希少性が高まらないためにキャリアが安定しない」と警告されています。 効率だけを求めて一直線に進むと、他の多くの人と同じような、予測可能なキャリアになってしまうのです。 結果として、あなただけの「独自の強み」が生まれにくくなってしまいます。
キャリアにおける「寄り道」とは何か?
そこで重要になってくるのが、もう一つのアプローチである「寄り道」です。 「寄り道」の目的は、「本人の合理性を超えた機会を組み込むこと」だと説明されています。
自分の頭で考えた「効率的な計画」の外側にあるもの。 一見すると、今の仕事や将来の目標とは無関係に思えるような行動に、あえて時間を使ってみることです。 これが、キャリアに思いがけない化学反応を起こします。
「寄り道」のチェックポイントを見てみましょう。 たとえば、「誰かの話を聞いて、新たに始めた習慣がある」という項目があります。 また、「行くつもりではなかったが、誘われて勉強会などに参加した」というのも典型的な寄り道です。 試してみて、「やっぱりやめた」ことがあるのも、寄り道を実践している証拠として挙げられています。
しかし、この「寄り道」だけでもキャリアは成り立ちません。 寄り道ばかりでバランスが悪いと、「次の選択までの期間に選択権を得るための努力投資が間に合わない」という作用が起こります。 フラフラと色々なことに手を出しているうちに時間が過ぎてしまい、いざという時に必要な実力が身についていない、という事態に陥るのです。
「寄り道」と「近道」が織りなす新しい安定
つまり、大切なのはこの二つのアプローチを、高いレベルで両立させることです。 「寄り道」によって自身のキャリアの希少性を上げつつ、「近道」によって納得のいく職業人生上の選択ができるようにする。 この双方のバランスこそが、キャリアが「安定」する鍵だと本書は教えてくれます。
これは、日々の運動の習慣にもよく似ているかもしれません。 たとえば、23キロ以上もの長い距離を走ろうとした時。 1キロを6分ちょうどで刻むような、正確で効率的なペースメイクの訓練は、まさに「近道」のアプローチです。
しかし、毎日同じトラックを同じペースで走り続けていれば、いつか心が疲弊してしまいます。 時にはペースを忘れ、全く知らない街の景色を眺めながら走ってみたり、ふと見つけた小道に入ってみたりする。 そんな「寄り道」のランニングが、新しい筋肉への刺激となり、長く走り続けるための精神的な栄養になります。 キャリアも全く同じなのです。
バランスを整えるための具体的な「打ち手」
では、このバランスを日常の中でどうやって整えていけばいいのでしょうか。 本書では、具体的な「打ち手」が提案されています。
まずは「打ち手①」として、行動の起こし方です。 「寄り道」を増やすには、スモールステップが有効です。 今の環境でできる小さなアクションの頻度を上げたり、誰かに誘われたことを素直にやってみたりすることが推奨されています。 一方、「近道」を強化するには、キャンペーンのように取り組むことが提案されています。 過去の経験を再発見したり、同時並行で行ったりして、集中的にスキルを獲得しにいくアプローチです。
次に「打ち手②」として、意識の向け方です。 「寄り道」においては、コミットメントシフトという考え方が紹介されています。 気持ちや時間、お金のポートフォリオで考え、理想に向けて現在の状態を少しずつ「ずらす」感覚を持つことです。 そして「近道」においては、意味づける(センシング)ことが重要になります。 パートナーや師匠を見つけたり、誰かへのアドバイスを通じて自身の成長を加速させたりする行動です。
あなたのここ半年をチェックしてみよう
ここまで読んでくださった皆さんは、ご自身のキャリアバランスが今どうなっているか、気になってきたのではないでしょうか。 ぜひ、図表にある「ここ最近(半年程度)で当てはまるものをチェック!」のリストを使って、ご自身を振り返ってみてください。

「寄り道」のチェック項目には、こんなものがあります。 SNSなどで友人の活躍を見て、焦ることがある。 会社での異動が頻繁にあると感じる。 「世界は狭い」より「世界は広い」と感じることが多い。 最近、時間の余裕が出てきた。
続いて、「近道」のチェック項目です。 お互いのキャリアの話で盛り上がる友人・知人がいる。 仕事以外で自分の力を活かせる活動をしている。 会社で自分が希望する仕事をしている。 誰かから学んだことや習得したスキルを、職場で実践できる。
ご自身のチェックの偏りを見て、今は「近道」に寄りすぎているな、あるいは「寄り道」ばかりになっているな、と気づくことが第一歩です。 自分の良い変化を確認するためのポイントとして、「言い訳資本ができたか」「共感と違和感」「不安や焦りを適度に感じたか」「焦りを感じる対象」などが挙げられています。 少しの違和感や焦りは、キャリアが前に進んでいる健全な証拠なのです。
さいごに:大人にこそ「寄り道」の余白を
私たちのような世代は、責任感が強いゆえに、つい「近道」ばかりを探して自分を追い込んでしまいがちです。 効率よく成果を出し、最短距離で正解にたどり着くことが、ビジネスパーソンとしての優秀さだと信じて生きてきました。
しかし、人生100年時代と言われるこれからの長い職業人生。 予測不可能な社会を生き抜くための本当の強さは、無駄に思えるような「寄り道」の中にこそ隠されています。
明日、もし同僚から思いがけないランチに誘われたら。 あるいは、全く自分の専門外のオンラインセミナーを見つけたら。 「時間の無駄だ」と切り捨てる前に、少しだけその「寄り道」を楽しんでみませんか?
その小さな偶然の出会いが、数年後のあなたを支える、かけがえのない「希少性」に変わっているかもしれません。 選択の時代、そしてゆるい職場の時代。 だからこそ、私たちは自由にご自身のキャリアをデザインできるのです。
「近道」で着実に力を蓄えながら、「寄り道」で思いがけない景色を楽しむ。 そんな、しなやかで面白い「新しい安定」を、一緒に作っていきましょう!
皆さんのこれからのキャリアの旅路が、より豊かでワクワクするものになることを、心から応援しています。
詳しく知りたい方は、 古屋星斗さんの『会社はあなたを育ててくれない』を手に取ってください。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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