ふと夜、静かな部屋で一息ついた時。
「なんだか最近、自分の生活が乱れている気がするな」
「もっとちゃんとした人間になりたいのに、どうしてもダラダラしてしまう」
そんなふうに、自分の不甲斐なさに落ち込んでしまったり、理想と現実のギャップにため息をついたりしたことはありませんか?
もっと早起きして有意義に過ごしたいのに二度寝をしてしまったり、つい余計な一言を言って後悔したり。
私たちは誰しも、「こうありたい」という理想の自分を持っています。
でも、現実の毎日は誘惑や忙しさに流されてしまい、なかなか思い通りにいかないものですよね。
「どうすれば、もっと自分を律して、心地よい毎日を送ることができるんだろう」
そんな悩みを抱えた時、何百年も前から多くの人々に読み継がれてきた、一つの素晴らしい知恵があります。
今日は、アメリカ建国の父の一人であり、偉大な実業家・科学者でもあったベンジャミン・フランクリンの生き方から、私たちが自分らしく心穏やかに成長するためのヒントをご紹介します。
彼の著書『フランクリン自伝』に登場する「13の徳目」を一緒に見ていきながら、もっと肩の力を抜いて人生を整える方法について考えていきましょう。
こちらの文章は、尾崎俊介先生の『アメリカは自己啓発本でできている』を参考に作成しました。
『フランクリン自伝』とはどんな本か?
今回ベースにするのは、ベンジャミン・フランクリンが遺した世界的名著『フランクリン自伝』という本です。
著者のフランクリンは、アメリカの100ドル札の肖像画でもおなじみの、歴史上の超重要人物です。
彼は元々は印刷工の息子という非常に貧しい家庭に生まれ、十分な学校教育を受けることもできませんでした。
しかし、自身の強い意志とたゆまぬ努力によって、印刷業で成功を収め、のちに科学者として避雷針を発明し、さらには政治家・外交官としてアメリカ独立に多大な貢献を果たしました。
そんな「アメリカンドリームの体現者」とも言えるフランクリンが、自分の息子に向けて、どのように人生を切り拓いてきたのか、その半生を包み隠さず赤裸々に書き記したのがこの『フランクリン自伝』です。
この本が今なお世界中で愛され続けているのは、フランクリンがただの「すごい偉人」として描かれているわけではないからです。
彼は自分自身の失敗や、若かりし頃の未熟さ、怠け癖や傲慢さについても、ユーモアを交えながら非常に正直に打ち明けています。
「自分は完璧な人間ではない。だからこそ、どうすれば少しずつより良い人間になれるのかを真剣に考え、実践してきた」
そんなフランクリンの人間臭さと、人生をより良くするための具体的な工夫が、この一冊にはぎっしりと詰まっています。
今回は、その自伝のなかでも特に有名な、彼が人生の羅針盤とした「13の徳目」にスポットを当てて、私たちが日々の生活にどう活かしていけるのかを紐解いていきたいと思います。
フランクリンが実践した「13の徳目」とは?
若い頃のフランクリンは、「道徳的に完璧な人間になりたい」という強烈な野望を抱いていました。
すべての人から尊敬され、自分自身に対しても誇れるような、一点の曇りもない人間になりたかったのです。
しかし、いざ実践しようとしてみると、一つの大きな壁にぶつかりました。
あれもこれもと同時に直そうとすると、一つのことを改善している隙に、別のところでポロポロとボロが出てしまうのです。
人間は、そんなに一度には変われません。
そこで彼は、人間としての理想のあり方を13個の項目に細かく分類し、1週間に1つの徳目に集中して取り組むという画期的なシステムを考案しました。
13週かけてすべての徳目を一巡させ、それを1年に4回繰り返す。
そうやって、まるで庭の雑草を一本ずつ抜くように、自分の癖や未熟さと地道に向き合っていったのです。
もちろん、フランクリン自身も「生涯を通じて、この13の徳目を完璧に守り通すことはできなかった」と正直に告白しています。
大切なのは、完璧にできたかどうかではありません。
「自分をより良くしようと意識し続け、軌道修正を繰り返すこと」そのものに価値があるのです。
それでは、フランクリンが定めた「13の徳目」を一つずつ詳しく見ていきましょう。
1.節制
— 頭や体が鈍くなるほど食べないこと。はめをはずすほどお酒を飲まないこと。
最初の徳目は「節制」です。
私たちは仕事や人間関係のストレスがたまると、ついつい暴飲暴食をしてしまったり、お酒を飲みすぎて翌朝グッタリしてしまったりすることがありますよね。
美味しいものを食べてリフレッシュするのは素敵なことですが、それが「頭や体が鈍くなるほど」になってしまうと、日々のパフォーマンスや健康を大きく損ねてしまいます。
自分の心と身体の心地よいバランスを保つこと。
何事も「ほどほど」を知り、自分を大切にコントロールする健やかさが、すべての土台になります。
2.沈黙
— 他人あるいは自分に利益にならないことは話さないこと。よけいな無駄話はしないこと。
二つ目は「沈黙」です。
私たちは沈黙の気まずさに耐えられなくなると、つい余計なことを喋ってしまったり、誰かの噂話や愚痴に同調してしまったりしがちです。
でも、口から一度出てしまった言葉は、二度と取り消すことができません。
「いま自分が話そうとしていることは、本当に相手や自分にとって意味のあることだろうか」
そう一呼吸置いて考えてみるだけで、無用な誤解やトラブルを驚くほど避けることができます。
聞く側に徹することの美しさを、大切にしていきたいですね。
3.規律
— 自分の持ち物はすべて置き場所を決めておくこと。仕事は、それぞれ時間を決めて行うこと。
三つ目は「規律」です。
あれ、スマホどこだっけ、鍵が見つからない、と毎朝バタバタしていませんか?
また、仕事の時間配分を決めずにダラダラと作業をしてしまうと、気づけば一日が終わってしまいます。
自分の持ち物の定位置を決めておくこと。
そして、仕事にはそれぞれ時間を割り当ててメリハリをつけること。
この小さな規律が、日々の生活の中から「探し物をする無駄なストレス」をキレイに消し去り、心にゆとりを生み出してくれるのです。
4.決断
— なすべきことは要ろうと決心すること。決心したことは、必ずやり遂げること。
四つ目は「決断」です。
「いつかやろう」「そのうち落ち着いたら始めよう」と思いながら、ずっと先延ばしにしていることってありませんか?
迷っている時間が長ければ長いほど、私たちの脳のエネルギーは消耗してしまいます。
「これをやる」と心で決めること。
そして、一度決めたのであれば、途中で言い訳をせずに最後までやり遂げること。
その意志の強さが、自分の人生を自分の手で前に進めるための確かな推進力になっていきます。
5.節約
— 他人や自分に役立つことのみにお金を使うこと。すなわち、無駄遣いはしないこと。
五つ目は「節約」です。
疲れている時や気分が落ち込んでいる時、ネットショッピングで衝動買いをしてしまい、あとで届いた荷物を見て「なんでこれ買っちゃったんだろう」と後悔した経験はありませんか?
お金は、自分や大切な人たちの未来を豊かにし、本当に役立つことに使うべき貴重な資源です。
「これは本当に自分にとって価値があるだろうか」と一度立ち止まって考えること。
その賢い選択が、モノにもお金にも振り回されない、スッキリとした豊かな暮らしを作ってくれます。
6.勤勉
— 時間を無駄にしないこと。いつも有益なことに時間を使うこと。無益な行動をすべてやめること。
六つ目は「勤勉」です。
仕事が終わったあと、目的もなくスマホの画面を何時間もスクロールし続け、気づけば深夜になっていた……なんてこと、ありますよね。
リラックスする時間はもちろん大切ですが、ダラダラと時間を浪費してしまうと、あとから強烈な虚無感が残ってしまいます。
時間を無駄にせず、今この瞬間に自分が本当に価値を感じること、成長できることに時間を使うこと。
無益なダラダラ時間を手放すだけで、一日の密度は驚くほど劇的に変わっていきます。
7.誠実
— 騙して人に害を与えないこと。清く正しく思考すること。口にする言葉も、また同じ。
七つ目は「誠実」です。
人間関係において、最も信頼を失う瞬間は、ほんの小さな嘘をついたり、裏表のある態度をとったりした時です。
自分自身の思考をクリアで正直に保つこと。
そして、口にする言葉も心の中の思いと嘘偽りなく同じにすること。
誠実であることは、一朝一夕で身につくものではありません。
でも、その真っ直ぐな姿勢を貫く人には、必ず同じように誠実で温かい人たちが集まってくるものです。
8.正義
— 不正なことを行い、あるいは、自分の義務であることをやらないで、他人に損害を与えないこと。
八つ目は「正義」です。
正義というと、なんだかとても大きな大義名分のように聞こえるかもしれません。
でも、フランクリンが言う正義はとてもシンプルです。
それは、ずるいことをして人に迷惑をかけないこと。
そして、自分に与えられた役割や義務をしっかりと果たすこと。
自分の持ち場でやるべきことを淡々と、誠実に果たしていくことそのものが、まわり巡って社会の正義を支えているのですね。
9.中庸
— 何事も極端でないこと。たとえ相手に不正を受け、激怒するに値すると思ってもがまんしたほうがよいときはがまんすること。
九つ目は「中庸」です。
私たちはカッとなった時、感情の赴くままに言い返してしまったり、逆に完全に殻に閉じこもって極端な態度をとってしまったりしがちです。
でも、怒りに任せた行動は、あとで必ず大きな後悔を生みます。
何事もバランスが大切です。
理不尽なことがあって怒りが湧き上がっても、一呼吸置いて「いまは我慢したほうが賢明だ」とクールダウンできる冷静さを持つこと。
その大人の余裕が、人間関係の波風を穏やかに整えてくれます。
10.清潔
— 身体、衣服、住居を不潔にしないこと。
十個目は「清潔」です。
心と身体は、驚くほど密接につながっています。
部屋が散らかり放題でホコリだらけだったり、お風呂に入らずに汚れたままでいたりすると、不思議と気分までどんよりと落ち込んでいってしまいますよね。
身体をキレイに洗い、お気に入りの服を身にまとい、自分がいる空間を整えること。
たったそれだけのことで、荒れていた心がスッと落ち着き、前向きなエネルギーが自然と湧き上がってくるものです。
11.冷静
— つまらぬこと、ありがちな事故、避けられない事故などに心を取り乱さないこと。
十一個目は「冷静」です。
人生では、予期せぬトラブルや、小さなアクシデントが日常茶飯事に起きます。
電車が遅延したり、コーヒーを服にこぼしてしまったり、仕事でちょっとしたミスが見つかったり。
そんな時、キーッと感情を高ぶらせてパニックになっても、状況は1ミリも良くなりません。
「まあ、こういうこともあるさ」「起きてしまったものは仕方ない、どう立て直そうか」と受け流すこと。
動揺しない心を持つことは、どんなトラブルをも軽やかに乗り越えるための最強の武器になります。
12.純潔
— 性の営みは、健康のためか、子供をつくるためのみにすること。性におぼれ、なまけものになったり、自分や他人の平和な生活を乱したり、信用を失ったりしないこと。
十二個目は「純潔」です。
フランクリンが生きていた時代の道徳観が強く反映されている項目ですが、現代の私たちがここに学ぶべき本質は「自分の心身のコントロール」にあります。
快楽に溺れて大切なものを後回しにしたり、自分を律する心を失って周囲の信頼を裏切ったりしないこと。
自分の欲求を正しくコントロールし、平穏で誠実な日常を守り抜くことの大切さを教えてくれています。
13.謙譲
— イエスとソクラテスを見習うこと。
そして最後の十三個目の徳目は「謙譲」です。
人間は、少し知識がついたり仕事で成果を出したりすると、どうしても知らず知らずのうちに傲慢になり、「自分が一番正しい」と思ってしまいがちです。
でも、歴史上の本当に偉大な賢人たちほど、謙虚でした。
キリストやソクラテスのように、常に自分の無知や至らなさを自覚し、他人の意見に真摯に耳を傾けること。
「自分はまだまだ学ぶべきことがたくさんあるんだ」という謙虚な姿勢を忘れないこと。
その美しい心構えこそが、人間としての器をどこまでも大きく広げてくれるのです。
完璧を目指さなくていい。今日から一つだけ意識してみる優しさ
いかがでしたでしょうか。
今回は、ベンジャミン・フランクリンの『フランクリン自伝』から、「13の徳目」をご紹介しました。
こうして13個すべてを並べてみると、「うわぁ、こんなにたくさん完璧にこなすなんて絶対に無理……」と、逆に圧倒されて息苦しくなってしまうかもしれません。
でも、安心してください。
冒頭でもお伝えしたように、あのベンジャミン・フランクリンでさえ、これらを完璧にクリアできたわけではありませんでした。
手帳に13の項目を表にして書き込み、今日は「節制」ができた、今日はここがダメだったと、まるでゲームを楽しむかのように自分の行動を振り返り、毎日少しずつ軌道修正をしていったのです。
私たちは、今日から急に完璧な人間になる必要なんてありません。
この13個のなかから、「あ、今の自分に一番必要かもしれないな」「これなら明日からちょっと意識できそうだな」と思えるものを、ただ一つだけ選んでみてください。
「今日は無駄話を少し減らしてみよう」
「今日は帰ったら部屋の整理整頓をしてみよう」
「今日はイライラしても一呼吸置いて冷静になろう」
そんなふうに、自分への小さな約束を一つだけ守る。
その優しい積み重ねの先で、気づいた時には、昨日よりも少しだけ好きになれる自分に出会えているはずです。
完璧じゃなくていい。
泥臭くても、何度つまずいても、より良く生きようと自分を振り返るその姿勢こそが、最高に美しく尊いものです。
どうか焦らず、あなたらしいペースで、心穏やかな毎日を紡いでいってください。
今日という日が、あなたにとって優しさと発見に満ちた一日になりますように。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
背伸びしない等身大の経験とアイディアのコラムも書いています。
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